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Barber’s Trap〜理容室の罠3

午後6時、マンゴーことアサド・マジュムダールが来店した。

予約時刻は午後5時30分だったから30分遅れての来店だった。

いつものことだった。ならば6時に予約すればいいのにと店主はいつも思うのだが、6時に予約したら6時30分の来店になるのだろう。


店主も心得たものでアサドの前の客には5時45分まで時間をかけた。


30分遅れてきたアサドに謝罪の言葉はなかった。

いつものことだ。

30分遅れは当たり前というのが彼の文化のようだった。


いらっしゃいませ、店主は慇懃に挨拶をした。


「マスター、げんき?」


アサドは椅子に腰を下ろしながら聞いた。

アサドの体臭がキツいため店主はいつもマスクをしていた。

それでも臭いが鼻をついた。


「おかげさまで」


「でも、マスター、いつもマスクしてる」


「エチケットです」


あんたが臭いからだとはもちろん言えなかった。


「俺、気にしない。日本人、キレイ過ぎる。マスク外してもいいよ」


「ありがとうございます。でも大丈夫です。マスクしてた方が落ち着くんです。先に流しますね」


店主はマスクから話を逸らすように言って、シャンプー台のシャワーからお湯を出した。

椅子を180度回転させ、背もたれを倒した。

アサドを横たえると顔にタオルをかけた。

アサドの硬い髪をお湯で流し、シャンプーを付け、泡立てた。


「かゆいところありますか?」


「チンチン」


「それは別な店でお願いします」


「マスターも言うねえ」


くだらない冗談だったが日本語の不自由な外国人ゆえに大目にみた。


「お湯加減はいかがでしょうか」


「きもちいいよー」


アサドはタオルの下で声を発し、ドレープの下で右手を挙げた。

ドレープがめくれ、OKと親指を立てた右手が露わになった。


店主は泡を流し切るとシャワーを止めた。


「少々お待ちください」


店主は音を立てずに店を出て行った。


(つづく)

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