Blue Wave 101.3Hz
「皆さんこんばんは!
平野武蔵です!
お聴きの放送はBlue Wave 101.3。
今日もレンガ路スタジオからお送りして参ります!
いやぁ、相変わらず暑いですねえ。
このスタジオもね、通り沿いがガラス張りでしょ。暑いの暑くないのって、暑いんだけどね。
まあ、でも皆さん、もうすぐ夏も終わり。
あと少しの辛抱です!
さて、先週もお伝えした通り今夜の特集は、アメリカン・ロック! こうなったらとことん熱く盛り上がっていきましょうよ!」
九一は電車の窓から過ぎて行く景色をぼんやりと眺めていた。
イヤホンで地元のラジオ放送を聴いていた。列車は県境を越えたがまだ電波が届く範囲のようだった。
よく聴いていた番組だった。
DJは訛りのある中年だったが選曲が九一の好みに適っていた。
ときどき短い文章を添えて曲のリクエストを送った。リスナーが少ないのか、度々取り上げられ、常連呼ばわりされて、いつもありがとうー!と感謝された。
ソヨンは九一の肩に持たれて眠っていた。
電車に乗り込んで緊張が解けたのだろう。
発車して5分もしないうにち寝息をたてはじめた。
祭りの人混みにまぎれて組織の追手を撒いた後、二人はタクシーに乗った。
そのまま出来るだけ遠くに行きたかったが、タクシーは金がかかりすぎた。これから二人でどこに行き、何をするのか、まだ決めていなかった。
逃避行が長引くことを見越して節約しなければならなかった。
九一は運転手に行き先を告げた。
隣町の駅だった。
そこに警察が張っていなければ、タクシーを降りて電車に乗り換えるつもりだった。
警察がいたらさらに次の駅にいけばいい。
幸い警察はいなかった。
二人は最初に来た列車に乗って南に向かった。
九一とソヨンは今、警察と「殺家ー」、二つの組織に追われていた。
警察に捕まれば刑務所行き、「殺家ー」に捕まれば殺される。
当然、どちらも二人の望むところではなかった。
とにかく逃げなければならなかった。
「『今日で街を出ます。最後のリクエストです』ペンネーム九一さんからのリクエスト。ソウル・アサイラムで『ランナウェイ・トレイン』。九一さん今まで聴いてくれてありがとう。身体に気をつけて、どうぞお元気で」
Runaway train, never going back
Wrong way on a one-way track
Seems like I should be getting somewhere
Somehow I'm neither here nor there
逃走列車 もう帰らない
誤った道への片道列車
どこかに辿り着きそうで
なぜかどこにも辿りつかない
(つづく)




