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今日から学校と仕事、始まります。①莞

お嬢様系大魔法使いが怪我するほどの、凶悪生物

作者: 孤独

コポポポポ


コトンッ


チャプッ………



「……ほっ」


こんにちは。わたくし、ラスト・ララチェールと申します。

久しぶりに地球で過ごしておりますわ。


パラッ



このエレガントなドレスを着こなし、ティータイムと読書をしている私。

実は、宇宙にある様々な星の不動産企業を経営しているのですわ。

ついこないだ、地球では再開したばかり。お客様もまだ1組だけでやや残念でございますが。

しかしまぁ、この素晴らしさはやはり、適度な空間に仕立てるエアコン完備の室内で、ティータイムと読書を続けていても構わないというところにありますわね。お客様が来ないだけ?どうかしらねぇ




「お届け物でーす」

「あら、山口さん。そこに荷物を置いてくださる?」

「いつも通りっすねー」



自宅兼会社。

この地球ならば、私のために働く愚か者共が多くおられる。食料も、本も、ティータイムには欠かせない紅茶パックなども、速やかに届けてもらえる。

地球の良さは、品質が良いところね。色々な異世界を訪れたこともありましたが、地球が過ごしやすいですわ。



パラッ



過ごしやすいのですが、魔法使いでもあるこのわたくし。実は、地球には魔法使いなど存在しておらず、私のような存在が世界でバレてしまえば、非常に大変な問題になってしまう。

私ほどの魔法使いであれば、どんな世界で過ごそうが危険に変わりないのですが。ここでは特に注意して過ごさねばなりません。知り合いに魔法器具をいくつも取り寄せてもらい、不自由がなく、魔法使いである事も隠して過ごさねば……



カサカサカサ



「?」



何かしら、今の。

音はまったく聞こえなかったが、そーいう音が発せられたのではと!!そうとしか思えぬ、生物の動きが!

きっと、山口が入って来た時に侵入したに違いない!しかし、見かけたのは入り口ではなかった。ソファーの隅から、壁に向かって走ったような。あの黒い生物。一体いつから居たのよと、頭に過ぎらせてくる。



カタタタタタ



お、お、落ち着くのよ。私!たかが虫!けど、気持ち悪い虫!この私が、怯えていては……。世界を滅ぼせる魔法使いの力を持つ私が笑われる!

紅茶を一杯、飲んで落ち着きなさい。



ゴクゴクゴク


「…………」


最高級の紅茶のはずなのに……。貴重な一杯であるはずなのに……



「テメェのせいで、紅茶の味が分からなくなったじゃない!!このゴキブリがああぁぁっ!!」


ぶっ殺してやる!あの気持ち悪い生物!突然、家の中を徘徊しやがるし、脅かすかのようなところに隠れたり、移動したりして、いきなり見るとキモイわ!おまけに生命力と繁殖力が高くて、食べ物ばかり狙いやがって、この害虫が!!


「オーーホホホホホ!死になさい!」


私を誰だと思っているの!?

星を管理し、星を操る。

ラストエンペラー”の魔法を扱う、ラスト・ララチェール様よ!!


「”メテオ・ストライク”!!」



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



わずか、数分の出来事。

宇宙からこの不動産会社に向かって、巨大な隕石が落っこちて来たのであった……。




◇       ◇



「あのですね、ララチェールさん」

「なんですのよ。アシズム」

「あなたには、言い辛いんですけど。私の喫茶店を貸すのは今日だけですよ」

「私だって、こんなところに来たくないですわよ!ゴキブリがいそうな、飲食店で寝泊りしなければいけないなんて……」

「ちょっと、私のお店のイメージが下がるんで。その生物の名前を出さないで」


数時間後。

ララチェールは体もドレスもボロボロになった状態で、知り合いのアシズムが経営する喫茶店を訪れていた。巨大隕石を自分の家に落としたのだ。自分もろとも、ゴキブリも含め、家をぶっ壊した。

大魔法使いである彼女の実力は、あまりの大規模で、セーブした状態でも家の1軒なんて簡単にぶっ壊す。というか、ゴキブリという生命体がそもそもおかしいのだ。あの気持ち悪さで、隠れようとする性質にしぶとさ、チマチマ攻撃している間に逃げられたり、繁殖されたりと、性質の悪さはハンパではない。



「家の修理に最低、1週間だそうです」

「だから貸せないって」

「相手は、このわたくしですわよ?いくらあなたでも、私と戦って無傷で済みます?それとも死にます?」

「すごい嫌な脅し!!なんか、……あなたを地球に呼んだ私のせいですかね?」

「地球も異世界も、キモイ虫が多いから嫌!やはり生物が生存できない宇宙空間が最高ですわ。紅茶の味がよく体に染みますわ」



壊す前に飲んだ同じ紅茶をもらっても、まったく味が分からない。



「……くっ」

「もしかすると、ゴキブリの怖さで味が分からなくなったと……」

「ば、ば、馬鹿言わないの!喫茶店を経営するあなたが、その虫の名を語るなんて、お客様の心証に関わる事ですわ!」



ガシャーーーンッ



しかし、カップはララチェールの心を的確に表すかのように、床に落ちた。


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