#08 宿屋
亀の甲より、年の功。
「さて! 武器も調達したことですし……宿屋を探しましょう! お金の続く限り泊めて頂ける宿屋を」
剣を選んだ後、主人はそれに見合うだけの価値のある防具を選んで渡してくれた。剣の代金は、俺がお前に私的にくれてやっただけだ、と言って無料にしてくれた。
僕としては、簡単に無料にできるような剣ではないと思うのだが……やはり、貰えるものは、貰っておこう。
そんなことより、気付いてしまった。
(待てよ……もしかして僕、今までエルフだからって思って気付かなかったけど、女の子と2人きり!?)
そう思うと一気に顔が赤くなっていく気がした。しかも今、僕達は宿屋を探している。これからの旅は、サフィールと、ずっと……!
そこまで考えて、自分が今まで黙りこくっていたことに気付いた。急いで取り繕う。
「あ……あの宿屋なんかどうだ?」
サフィールは宿屋の看板をじっと見つめ、説明なんかを読み、そして振り返って言った。
「いいですね! ここにしましょう!」
良かった。何も不思議には思われなかったようだ。
(これから上手くやっていけるんだろうか……)
落ち着け、僕。特に何も考えなければいいだけだ。1つ、問題があるとすれば……僕が、本当はコミュ障だってことだ。
宿屋に入ると、受付に人の姿が見えない。
「すみません……あの……すみません!」
「ここじゃ! こ……ここ……!」
受付机の下から声が聞こえる! 驚いて覗き込むと、小さな老人が両手を広げてジャンプしていた。
「えっ、ちょ、ちょっと待ってくださいね」
老人を引き上げて椅子に座らせると、老人が髭を撫でながら言った。
「ほっほっほ! またやってしまったわい。助けて頂いてしまったな、ほっほっほ」
老人は自らの2倍程の幅のある引き出しを開けると、書類を取り出しながら僕らを上目遣いで見る。
「お客さんかね?」
ここにしばらくの間泊めて欲しいと言い、ここに来るまでの少しの経緯を説明した。老人はびっくりしたが、頷きながら言った。
「すると、歩殿が次の勇者か。そうかそうか……君が……」
受付の前に突っ立っている僕とサフィールを見て、笑って続ける。
「お主ら、王都に来たばかりじゃな? そっちの若いエルフはここについてわかっていそうじゃが、女をサポートせんで何が男。お主にちと、入れ知恵をしようかの」
老人はそう言ってひょいと椅子を飛び降りると、僕を手招きして奥に消えていった。僕は、サフィールにここに留まるよう頼み、老人について行った。
老人で思い出しました。
お年寄りって杖を2本持って歩いている方いらっしゃいますよね。
僕は今まで杖は1本というイメージがあったので、前世双剣士だったのかな!?とか思ってしまいました、お恥ずかしい。