#03 魔王
歩を待ち受けるのは、運命と宿敵。
ウンディーネはゆっくりと話し始めた。出だしはこうだった。
「かつてこの世界の頂点に立っていたのは……魔王だったの」
幼い頃、ウンディーネはこれを伝書で読んだのだと言う。伝書の内容は、とても衝撃的なものだった。
ーーー
昔、1人の王がいた。王はその人柄の良さから人々の支持を得て、この世界を統治する者となった。しかし、王の妻子の命と引き換えに、王は闇の部分に染まっていった。
この王はたちまち魔王と化し、この世界の光の部分をほとんど吹き飛ばしてしまった。
だがそれは、世界樹以外の話だ。世界樹はこの世界の魂のようなもので、それに被害が及ぶような事があれば、この世界そのものがなくなってしまうから。
魔王は自身の強力な闇の力と恐怖で、この世界を徹底的に支配した。森は荒れ果て、街にも魔物が出没した。
そこに、1人の勇者が現れた。彼は突如何者かによって召喚された人間で、戦う術もなかった。だが、魔王との戦いに見事勝ったのだ。
世界樹が、彼に力を貸した。世界樹は彼に未だかつて使われた事のない様な強大な力を与えた。勇者は世界樹と魔王を氷漬けにし、世界樹の力を借りつつその後何世紀も、闇を封じ込める事に成功した。
勇者は、世界樹に選ばれる程の勇気で、この世界の平和を取り戻してくれた。その話は今も尚、語り継がれている。
ーーー
「ちょっと待ってくれよ」
思わず声が出た。
「この世界の為に1人の人間が勇者として戦ったっていうのか? しかもその魔王が蘇ったって?」
「そうです」
「そんなの、僕に魔王と戦えって言ってる様なもんじゃないの!」
「そうですね」
(いや何が「そうですね」だ! 僕は何もやらんぞ……!?)
歩は大きなため息をついた。
果たしてこれから歩はどうなるのかって?
それは作者にも分からない!