#02 水の精霊
次に出会うのはーー敵か、味方か。
「何が起こっているんだ……!?」
泉の水が生き物の様に動き、空に向かって水飛沫が立った。魔物が出て来るのではないかと身構えたその時、辺りに美しい声が響いた。
「あなたが落としたのは……金の斧ですか? それとも……」
(えええええ!? めっちゃありがち! そもそも何も落としてないから!)
「ちょ、ちょっと待って! 僕は何も落としてないんだけど」
その途端、辺りの揺れがピタリと止まった。泉の中央から光がこちらに向かって来る。それは目の前で停止し、あっという間に美女に変わった。
「ふふ、冗談です……私は精霊であって、神ではありません」
サフィールは目を見開いて言った。
「あなたは……水の精霊、ウンディーネですね?」
水で出来たベールをまとったウンディーネが頷き、目を瞑って答える。
「ええ……ずっと眠っていたものだから……光に目が慣れないわ。夢を見ていたの……この世界の夢を」
僕は思わず聞いた。
「この世界の夢……?」
「この世界の、闇の部分が強くなっていたわ。私が泉の底にいる間に、魔王が蘇ったのね?」
サフィールが顔を覆った。
「その通りです。《知の森》に魔物が出始めたのもそのせいで、どうしたらいいのか……」
(闇? 魔王? ちょっと待ってくれ! 展開が少々早すぎやしないか? 確かに魔王は定番の存在だけど……)
「サフィール、ウンディーネ、僕はまだこの世界についてよく分からないんだが……」
サフィールはウンディーネに、僕が歩という名の人間である事、いつの間にか人間界からこの世界に来てしまった事を説明した。
ウンディーネは驚いたが、思い出したようにこう言った。
「長い話になってしまうかも知れないけれど……これがアユムが帰る方法を見つける手立てになるかも知れないわ」
なるほど、これは大変な冒険になりそうだ、そう感じた。
百夜(作者)「ウンディーネみたいな美女とお友達になりたい」