#01 出会い
今日も、ごく普通の高校生が、ごく普通な朝を迎える。はずだった。
「あと5分……」
そう呟いて、いつものように布団に潜ろうとした。だが、ある事に気付いたのだ。
(布団がない)
それどころか、目覚めた場所は見慣れた自室ではなく、全く見た事のない森の中。美しい木が風に吹かれてサラサラと音を立てている。ゲームに出てくる異世界の景色にそっくりだ。
見回すと、すぐ隣には大きな泉が広がっていた。水は青く、美しく、思わず見とれてしまった。
突然、背後に気配を感じた。振り向くと、金髪の美しいエルフが立っていた。
「エ……エルフ? 本物?」
金髪のエルフは驚く。
「よくお分かりですね……人間だと思ったのは私の勘違いでしょうか?」
「とんでもない! 僕はいかにも人間だよ」
エルフという事は、やはりここは異世界のようだ。一刻も早く元の世界に戻る方法を見つけなければならない。1人で冷静に考える事は得意だが、とりあえず情報が必要だ。
「ごめん。君の名前を教えてくれない? 僕は冴木歩だ。」
「歩……ですか。私はサフィールです。よろしくお願いします! 歩はこの世界の事が知りたいんですよね?」
首を傾げるサフィールに、ここはどこなのか、と問う。サフィールはこちらに少し近付き、腰を下ろして言った。
「ここはアルフヘイムで、この世界は人間界とは交わることのない世界です。私も幼い頃に家を出てしまったので、あまり多くを教わってはいないんですが」
サフィールの寂しげな表情を見て、言葉を掛けたくなったが、変に言及しない方がいいと思い直した。
アルフヘイムという事は、やはりここはエルフの住む国なのだ。ここに来て、ゲームで蓄えた異世界の知識が役に立った事は少し誇らしい。
「歩は、どうやってここに来たか覚えていないのですか?」
僕は首を横に振り、言った。
「目が覚めたらここにいた。気配がしたと思ったら、君がやって来たんだ。」
サフィールがハッとしたように言った。
「ここはアルフヘイムの外れにある《知の森》です。忘れていました! 最近になって、魔物が出ると噂です!」
「魔物!?」
その時、大きな揺れと共に、泉の底が少しずつ光を発し始めた。水面の荒れからして、絶対に泉の中で何かが動いているとしか言い様がない。これはマズい。
(こんなありがちな展開、聞いてないって!)
「ありがち」な展開と「斬新」な視点を大切に執筆していきたいと思います!