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08

とりあえず、この話で完結だったり。

ミリアが見ていた。

俺達を見て、色々と感情の混ざったような表情をしていた。


「…大分、酷くやられたのね。父さんから一応聞いていたけど、予想以上だわ」


「あ、ははぁ…」


俺の左腕はガッチガチに固定されていた。

実はあのオーガの攻撃を受けた時、左腕に装着していた盾と共に骨までポッキリやられていたりしたわけで、治療魔術をシリウスに施してもらった後に、ちゃんとまっすぐくっ付くように固定された。

それ以外にも少し大きなキズにはペタペタと張ってあったり、包帯が巻かれていたりした。怪我としては一番やばかった可能性があるのは背骨らしい。

木におもいきりぶつかって気絶したわけだが、その時に背骨が逝ってたら生きてたとしても酷い事になっていたかもしれない。

そうシリウスに言われた。


俺が完全に気絶した後、次目を覚ましたのは俺達がカーリックの駆除に行く前に寄った依頼主の居る村だった。

そこでシリウスに説明され、ガイルさんに助けられたことを知る。

ガイルさんの参加していた討伐依頼、それで一匹のオーガを他の冒険者が逃してしまった。なので、まだ残っている魔物は他の冒険者に任せ、ガイルさんが逃げたオーガを追って俺達のいる近くまで来ていたらしい。

だが、オーガは中々見つからず少し高いところから眺めていた時に、木々の間から一つの炎の柱が上がってるのを見つけ、急いで駆けつけてきたらしい。

その後、俺達は一日休んでから行動拠点としている都市まで戻ってきていた。ガイルさんにお礼を言ったのだが、オーガを逃したのはこっちのせいだからと言って逆に謝られてしまった。


「あぁあぁあぁあぁあぁあ、相棒がー!」


「…で、サイラスはどうしたの?」


俺達と同じ席に座っているサイラスだが、ここ数日の間はこんな感じで嘆きっぱなしだ。


「いや、ほら…サイラスの剣がご愁傷しちゃったから」


「ああ…そういう事ね」


「実は、今少しキツイんだよね。俺の装備…つまり盾も壊れちゃったし、サイラスの剣も壊れちゃったし。

本当は今すぐにでも依頼したいんだけど、ほら俺もサイラスもこんな感じだから」


俺は固定された左腕を軽く振ってみせる。

サイラスも俺と同じぐらいにボロボロで、折れはしていないが体の骨の所々ヒビが入っているらしく、回復魔術を施されたが数日は乱暴に扱わないように、との事だ。


今回の俺達の怪我は他の依頼のほうでの不手際のせいなので、いくらかギルドの方からお金が貰えたりもしたのだが、やはり武器防具を買うためのお金と比べてしまうと全然足りない。

おそらく俺の盾は諦め、サイラスの剣を買う事になるだろう。


「まあ、死ななかっただけでも良いじゃないですか。

傷を負っていたとはいえ、オーガ相手に生き残れたのは奇跡みたいなものですよ」


シリウスがそこに四人分の分のシチューとパンを持って現れた。

それを俺とサイラスの前に置くと、自分は懐から何かの資料と紙の束とペンを取り出し、せっせと資料の内容を写し始める。

シリウスは俺達が稼げないので小遣い稼ぎ程度の依頼を受けていた。


シリウスは俺達に比べほとんど傷など負っていない。前に出て積極的に戦う剣士と後ろから援護または大きな一撃を放つ魔術師では怪我のしやすさも変わる。

まあ、職業的に当たり前の結果という事だ。


「こいつに合わせるのは癪だけど、実際その通りだと思うわよ。

…剣は、また買えばいいんだから」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、アイボォォォォ!」


「……」


俺もミリアも黙ることしか出来なかったが、とりあえずもうサイラスには触れないでおこう。

正直、面倒臭い。

目の前のシチューを食べようじゃないか。

このシチューに使われているのはカーリックの肉だ。オーガに追われていたカーリックだが、一匹がオーガに捕まった際にオーガの腕が2匹のカーリックに当たり、その衝撃でずっと気絶していたらしい(あくまでシリウスの予想だが)

それをシリウスが気づいて回収していた。


なかなか美味しい。


「おお、なにコレうまっ」


いつの間にかサイラスは静かになりシチューを食べて、そんな事を言っていた。

俺よりも後に手を出し始めたはずなのに、もうなくなり始めている。なかなか美味しいシチューに夢中になっているサイラスは先程の落ち込みようはどこへやら、上機嫌でガツガツと食べていた。

おかわりさえしそうな勢いだ。


「でさ、俺は少しの間休業になるわけだけど、その間の生活費どうしよっか。

まあ、生活費だけじゃ済まないんだけど」


「しばらくは他の魔術師の研究結果の模写とか僕でも出来る雑用の依頼で稼いで一日一日の生活費を稼ぐつもりではいますよ。

今回の事で貰えたお金は生活費で使えなそうですから」


俺もシリウスもサイラスの剣については直接的には触れない。


「俺、怪我が完治したら雑用の依頼かシリウスと出来る簡単な依頼でも行こうと思ってんだけど。

まあ、討伐系の依頼は剣が無いから出来ないけどな…薬草集めとかなら出来るだろ」


俺達が意識しようともサイラス自ら踏み抜いていくので意味が無かったり。


剣は買わなければいけないものなのだが、問題はその剣をどういう目的で買うか、だ。

壊れてしまったし、いつCランクまで行けるかは分からないが繋ぎとして安いものを買うか。それか、Cになるのはまだまだ先の事でもあるので真面目に武器を選ぶか。

結局Cランク辺りの依頼からは、今現在の武器では無理と言ってしまっても良いほどに難易度が跳ね上がる。なので武器は結局買い換える事になるのだ。

俺としては後者の本気で選ぶ方がいい気がする。

なんとなく、というだけで理由はないのだが…まあ、そのことで話し合うのは、もう少し先のことだろう。


「…ま、次からは無茶なことはしない事ね。

命も危なかったし、奇跡的に助かったと思えば金銭的にきつくなってるし…怪我してお金に悩むって良い事ないじゃない」


「好きで無茶したわけじゃないんだけど…確かにそうなんだよなぁ」


ミリアの言葉に俺は苦笑いしたが、他の二人も同じように思ったようでサイラスはぐぅ…と唸ったかと思えばシリウスの分のパンを横取りして貪り始め、シリウスは一瞬こっちを見た気もしたがずっと目の前の仕事をこなしている。


「…僕は、まだ未熟なので後回しにしていたのですが、今回の事で考えを改めまして無詠唱で行える魔術を身につけようと思ってるんですよ」


「ん?」


資料に目をやったままペンを動かし続けているシリウスが喋り始めた。

無詠唱というのは聞いても分かる通り詠唱なしで魔術を発動させることだ。しかし、それは簡単なことではなく。

その魔術を重点的に訓練し続けることで出来るようになる。この国の宮廷魔術師などの長を務める人間は中級までなら全ての魔術を無影衝で行えるらしいが、そんな事を出来る魔術師のほうが珍しい。

世界でも10人いるかどうか分からないほどだ。


「その、無詠唱で行う魔術なんですが皆で話し合って決めようと思っているんですけど…構わないですよね?」


「へえ…」


サイラスがシリウスのパンを半分ほど食べながら、意外そうに呟いた。


「俺は良いと思うぜ。楽しそうだし」


「俺もいいよ。こんな腕じゃ何も出来ないから暇だしね」


俺もサイラスもシリウスも結構付き合いは長いが、魔術に関してシリウスが何かを言うこともなかったし、俺達も特に何も言わなかった。

俺は少し使える程度で本業の人間と何かを言い合える程でもないし、サイラスは魔術は一切使えない。

だから魔術に関しては今まで何も言うことはなかった。


「一応、変に意見の偏りがあってもアレですしミリアさんも手伝ってくれますか?」


「…別にいいけど」


「僕のレベルでは、おそらく1つか2つの魔術を重点的に訓練してどうにか無詠唱で発動できる様になる程度なので、とりあえずメインの1つとサブの1つの計2つの魔術を決めた後、ずっとそれを訓練し続ける事になると思います」


「魔術研究ってのはどうするつもりなの?」


「まあ、無詠唱で魔術を発動できるようになるまでの間は放置でしょうね」


シリウスは仕方がない、と言いたそうな表情で軽く笑った。


「…そ、っか」


そんなシリウスの言葉にミリアはただ驚いていた。

ミリアは少し動作が不自然になった程度だからまだいい。俺とサイラスはシリウスがミリアに頼んだ辺りから目を見開いて口を少しだけ開けたまま固まっていた。


「ま、まあ! せっかくの魔術師馬鹿にしては珍しい申し出だし、この二人…特にサイラスとかカッコ良いからみたいな変な理由で決めちゃいそうだし……この私が手伝ってあげるわよ」


ミリアは後半、大げさな手振り素振りをしながら、そんな事を言った。


「魔術馬鹿ではなく、魔術師馬鹿ですか…」


「いや、サイラスはともかく俺はそんな馬鹿な決め方しないから」


「はァ!? なんで!? かっこ良い奴が良いじゃん! かっこ良い方が強そうじゃん!!

馬鹿ってなんだよ、ユート!」


そう身を乗り出すサイラスに対し、俺達は特に相手をするでもなく、さっそくシリウスの無詠唱の訓練について…詳しく言うならどの魔術を訓練するかを相談し始めた。

キャラが固定というわけではないのですが、また冒険者について何か書きたくなったら投稿すると思います。

ですが本当に投稿するかも何時になるかも分かりませんので、また投稿し始めるまでは完結という形にしておきます。


誤字・脱字があればご報告よろしくお願いします。

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