02
ちょっと頑張ってデスクトップを買ったんですけど、これを書き始めるまでノパソだったので、普通のキーボードが使いづらくてやばかったです。
「なにこれウマ。ユートも今度これ食ってみたらどうだ?」
「ホント? じゃあ今度食べてみるわ」
「食って損はしないと思うぜ」
サイラスも俺も目の前の料理に舌鼓を打っていた。
今日は依頼終わってすぐという事もあり、いつもより豪華なものを食べている。まあ、お値段は実際少ししか変わっていないが、それでも今の俺達にとっては豪華だろう。
それに依頼のために都市から出た時なんて最悪野宿して1食が保存食で済ますこともある。それと比べれば都市に帰ってきての食事というだけで割りと美味しくて豪華だ。
今回のトロル討伐でもトロルを探すのに3日かかったので、当然野宿した。
「何を買わなきゃないけないんだっけか?」
「詳しくはメモに昨日まとめて書いたんだけど、今回の依頼で使った保存食や魔物避けになるカラメ木の枝。
後は使い捨てのナイフとかだな」
カラメ木の枝とは焚き火に使う薪で、油分を多く含み燃えやすく火種として優秀なのだが、それだけではなくカラメ木の枝を燃やすと辛い匂いの煙が出てくるので魔物を遠ざける事ができる。
鼻が無かったり、この前のトロルのような鈍い魔物だと、あまり効果はないのだが。
焚き火の薪として燃やすなら魔物には効果は大きいが、人間の場合少ししかめっ面をする程度で済む。しかし、カラメ木から作る香は協力で人避けにもなるほど強烈な匂いを発するらしい。
魔物が多く、かつ強力な場所…例えばダンジョンとかで使うらしい。
今の時点では枝で十分なので俺達は買った事はないが。
「そっか。お金3日間もちそうか?」
「まあ、いつもぐらいに意識して生活すれば3日ぐらいは大丈夫だと思う。
それに最悪雑用の依頼すれば一日程度の食費は稼げるし全然問題ないと思うぞ」
ちなみに小使い稼ぎをする方法は俺やサイラスの場合、力仕事メインの雑用が多い。
シリウスのような魔術師の場合、他の魔術師が書いた研究結果を本にするために模写する仕事もあったりする。
魔術師は仕事上、読み書きや図を少し見て正確に写す事が出来るので、こう言った仕事は魔術師しかやらない。それに模写している上で研究結果まで目を通せるのでシリウスのようなまだ未熟な魔術師にとって必要な物なのだ。
しかもお金さえもらえてしまうのだからウハウハものである。
「休もうって日に働くのもなんだし、いつも通り節約するの意識して生活しようぜ」
「了解」
そんな事を話しながら、俺もサイラスも目の前の料理を既に食べ終えそうな所まで来ていた。
俺が最後の一口を食べ終え、コップの中のジュースを全て飲み終えた頃、サイラスも料理を食べ終えた。俺はメモの中身をちゃんと分かるように確認していた。
昨日必要だと思ってメモっていても、何かに夢中になってると忘れてしまう時があるので確認はこまめにしておく様にしている。
それから、俺達は必要なものを揃えるために店へと向かった。
ギルドショップで全て揃えられるのだが、全て揃えられる代わりに少しだけお高い。
なので、少し大変でも安いのを買うためにいくつかの店を回ることにしている。
「シリウスにつまめるもの買って行ってやらなきゃな」
「ああ、そうだね」
シリウスは魔術の研究している時は、本当に部屋から出てこない。
何かに誘っても断られる事のほうが多いし、何かを食べるよりもまず研究みたいな考え方なので、シリウスが趣味に没頭している時は俺もサイラスもシリウスのことを気にしない。
それでも趣味に没頭している時は、何かをしながらでも片手で食べられる様なものとかは普通に喜んでくれるので、そういうものをお土産として買って帰る事にしている。
お土産としては何でもいい。ゆでた豆でも喜ぶし、パンでもいい。
前に4日連続で同じパンを買って帰ったことがあるが、特になんの反応もせず俺達に礼を言ってから部屋に戻っていった。その4日の内の3日目のパンなんか、パンを包んでいた紙ごと食べようとしていたから魔術以外のことを考えることができなくなっているんだと思う。
「なー、そのナイフよりこっちのが良いんじゃないか?」
「いやいや、あくまで使い捨てのが必要なだけだから。
そんな禍々しくてゴッツいナイフなんていらないから。しかもクソ高いし…ご飯食べてる時の節約云々の話はどーしたよ」
「いや、でも…コレ見てみろよ。かっこいいだろ!」
「なにコレ、この龍の装飾要るか?
うわ、魔術を付加するために龍の目に魔石使ってるのか…しかもダンジョン産の質の良い奴か。通りで高いわけだ」
サイラスに見せられたナイフに付いている値札にはゼロが少なくとも5つは付いている。
「刃が痛むのを防止する魔術が付加されてるんだってよ。
それと切れ味アップ、あといくつか細かいのがあるな」
「性能も良いし、もっと上行けたら買ってもいいんだろうけど今の俺達には必要ないだろ。
そんな余裕ないわけだし」
「ケチんなよー! 出世払い、出世払いするから!」
「出世払いは出世の見込める、ちゃんとした職業かつ、ちゃんとした人間しか使っちゃ駄目です。
まあ、胸張れるぐらいには上に行くつもりだけど。
だから、節約云々はどーしたって…」
サイラスの手からナイフをひったくり元あった場所に戻す。
サイラスは俺に文句をブチブチと言っていたが、それだけだった。
使い捨てのナイフを3つ買い、ナイフを買った店の向かいにある店で保存食もいくつか買う。本当は一番値段の低いものを買いたいのだが、さすがに飽きてしまうので少し高くても別の種類を買うようにしている。
最初の頃は低いのばっか買っていたけど、さすがにキツかった。
カラメ木の枝も買わなくては。
「そういえば、トロルの打撃数回受けてたけど盾とか大丈夫か?」
「あー、昨日寝る前に確認して見たけど大丈夫だと思う。
歪んでもないしアレならトロルの攻撃をそらさなくても10回近くは受けられると思う」
盾が壊れる前に俺が壊れると思うけど。
「サイラスの剣は大丈夫なのか?」
シリウスへのお土産はクッキーにでもしよう。
「こっちはまだ大丈夫だな。
だけど、さすがに次の依頼を終えたらメンテナンスしてもらった方がいいと思う。基本重さで叩き切ってるだけだから切れ味はあんま関係ないんだけど、さすがにそろそろ根本からポッキリ逝くかもしれないからな」
シリウスのために買ったクッキーの代金を支払う。
「早く上のランクになりたいな。
そしたら、もっと良い素材で武器作ってもらえて、もっともっと強い魔物と戦って、もっと楽に生活できるようになる。
最終的には、騎士団に入る事が目的だからな! 当然、ユートやシリウスも!」
「確かBランク辺りから入れる可能性あったはずだよ。
俺はともかく、シリウスは騎士団じゃなくて魔術師団とか宮廷魔術師だろ」
サイラスの言った騎士団はこの国で1の武闘派集団だ。
サイラスが言ったもの以外にもいくつか存在はしているが、騎士団といってみんなが思い浮かべるのは一つしかない。
騎士団の名前はミハイト騎士団というもので、ミハイトというのはこの国の名なのだ。だから、この国の人間は省略して騎士団と呼ぶだけで、どこを指して言っているのか分かる。
他の騎士団は貴族などと言った身分を気にするのに対し、ミハイト騎士団は実力重視。強ければ、どんな身分の者でも入れる可能性のある騎士団。
親が子供に聞かせるようなお伽話に出てくる様な英雄の多くが所属していた騎士団でもある。
そしてサイラスは幼い頃から、その騎士団に入る事が夢だった。
「でもBじゃ、訓練生からだよな?」
「確かそう。
でもBになったからと言って訓練生にさえ絶対になれるわけじゃないんだけど」
それに冒険者のランクは強さだけで決まっていない。
強さも重要視されるが、Cランク程度の実力でも罠を張ったり見破る事のできる能力や魔物の索敵能力、尾行スキルなど武力以外のもので認められればBランクになることは出来る。逆にそれらが駄目でも武力だけでBランクになる者もいる。
それに戦闘と言っても対人と対魔物で大きく違う。
冒険者という1つの職業でも複雑だ。一応冒険者のカードに何が出来るかまで書かれてはいる。
ソレをアテにして仲間を選ぶのが普通だ。
「そういえばさ、どうする?」
「ん? …何が?」
「いつまで、魔物討伐の依頼受けるのを続けていくかって話。
ダンジョンに潜れば金も貯まるし、強力なアイテム手に入る可能性もあるだろ? もうそろそろダンジョンに潜り始めても俺はいいと思ってんだけど、こういうのは一人で決めることじゃないだろ?」
「あー、そうだな。
サイラスはどうしたい?」
「俺は早くダンジョンに潜りたいな。もうダンジョンに潜る資格は三人共とってあるんだから」
ダンジョンとは普通とは違い、特別な場所だ。
魔物が限りなく生まれ、古代の人間が作ったと言われる強力なマジックアイテムが数多く眠る場所。ダンジョンに潜ったことで億万長者になったものも居れば、SSランクになれた人間もいる。
それと同時に死んだものも多い。どちらかと言えば死んだ者の方が多い気もする。
それでも冒険者はダンジョンに潜る。
ダンジョンは冒険者にとって夢の塊みたいなものだ。
「俺は最低でもDランクになってからがいいと思う」
「何でだよ?」
「ダンジョン内の魔物は外の普通よりも強力で凶暴だからダンジョン外の魔物とは別物になってるから、俺は出来る限り経験を積んでから挑みたいって考えてるよ」
「でも、ダンジョン内と外で違うなら早めにダンジョンに潜って中の魔物に慣れたほうが俺はいいと思うけどな」
「確かにそれはあるけど、ダンジョン内では何が起こるかわからないから戦闘の経験を積んでいってからの方がいいだろ。
いざという時に焦らずにちゃんと行動できるようになるぐらいの経験は積んでいって損はしないし」
経験は大事だよ、この一言で俺の言ってることは表せられるだろう。
なんか自分の言ってることが全て同じようにしか思えないけど、俺はこういうのは少し苦手だ。
俺とサイラスはお互いの意見を言い合いながら、もう帰るために歩いていた。
ダンジョンにいつ潜るかの意見で俺とサイラスは、どちらも譲るつもりはない。
俺はまだダンジョンに挑むには力不足だと思っている。
サイラスやシリウスならいいところまで行けるかもしれないが、俺の実力はまだ足りない。だからと言って俺抜きで行くのは人数的に辛い。
それにシリウスはどうかは知らないが、サイラスは今の時点ではダンジョンの罠などの対策のために誰かを加える事があっても、俺とシリウスどちらかを抜きにしてダンジョンに潜ろうとは思っていないようだった。
結果的に俺とサイラスはシリウスに意見を聞くことに決めた。
このままでは平行線のままで何も決まることはないと判断した結果だ。
そんな結論に至る頃には既に宿に着いていた。
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