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01

5/01から5/08まで一話ずつ投稿していきます。

あまり動きのない小説ですが、よろしくお願いします。

腕に伝わる衝撃。

それは左手に装備された盾を通して伝わってきたものだが、すぐに盾をずらし敵の打撃を受け流す。その結果、目の前の巨体を誇る魔物…トロルはバランスを崩し、前のめりに大きく体を傾けさせる事ができた。

俺は、それを見逃さずトロルが踏み出していた右足、具体的に言えば右膝の辺りを片手剣で切り裂いた。

トロルは痛みによるものか、それとも俺への怒りのせいか、咆哮をあげ手に持った丸太のような混紡を俺へと向けて乱暴に振るう。

俺は慌てて後ろに跳んで避けた。


「っ…浅いか」


本当は右膝から下を無くさせるつもりで剣を振るったのだが、どうやら俺の力では無理だったようだ。

現時点では身体強化か切れ味向上の魔法を使わなければトロルの足を切断することは無理だろう…と言っても魔法はまだまだ使えるレベルではないので、使っても切断できなかった可能性のほうが大きい。

それにトロルには再生能力がある。右足が繋がり動き出すのも時間の問題だ。


だが、トロルの動きを一時的に止めたという事実だけで今は十分だった。


「退けユート!!」


俺の後ろから、その言葉が聞こえ俺はそれと同時に右へと跳んだ。

代わりに飛び込んできたのは、赤髪の少年。

その手には自分の身長と同じぐらいの長さ、そして同じぐらいの大きさの大剣。少年には不釣り合いなソレを大きく振りかぶり、そのまま膝を付いているトロルへと振り下ろす。

重量感たっぷりのソレはトロルを容易に切り裂いた。

トロルは2つに分かれ、縦に割れた体はそれぞれ左右に倒れた。


「ナイスだったぜ、ユート!」


「まさか一撃で真っ二つとは、さすがだな。サイラス」


俺と赤毛の少年…サイラスの拳が軽くぶつかり合う。

その後ろから杖を手に持った銀髪の少年が二人に近づいてきた。


「再生能力を持つ魔物なんですから、後始末をするまで油断しては駄目ですよ」


「あー、そうだな。悪いシリウス」


目を向ければ、トロルの切断面から芋虫のようなもの、まぁ簡単に言ってしまえば触手が何かを探すように伸びている。

この2つにわかれた体から伸びる触手が結び合えば、再びくっついて動き出すかもしれない。それか、その前に力尽きて動かなくなるか。

おそらく、このどっちかだろう。


「では、私が燃やしますので下がっていてください」


「了解」


「じゃあ、頼んだ」


シリウスを残して、俺とサイラスはトロルの近くから離れる。

トロルの後始末はシリウスに任せて、トロルを倒すのに使った罠の回収をしなければならない。罠は一回作動すれば使い物にならなくなる使い捨てのものだが、それでも現在Eランクの俺たちにとっては、まだまだ高いものだ。

買った時よりは少なくなってしまうが、冒険者ギルドに返品すれば返して貰える。


今回の依頼は事前の準備を入念にしておいたおかげでトロル自体を倒すのは楽に終わらせることができた。

と言ってもトロル一体の討伐だったはずが、他の魔物にも遭遇してしまい予定とは違うものになってしまった。

本当はシリウスの魔法でトロルを弱らせ、そこをサイラスと俺のどちらかでトドメを刺すというものだったのだが、トロルを俺が足止めしている間にシリウスとサイラスの二人で他の魔物を倒す、または追い払ってからトロルを倒すという形になっていた。

Dランクの魔物であるトロルは、俺一人で長時間足止めするのもキツイ。

もう少し、サイラスたちの方で時間がかかっていたら、俺はトロルの混紡でペシャンコにされていた可能性もある。


そんな事を考えつつ、罠の回収を終えた頃シリウスも後始末が終わったようで、こちらに合流してきた。


「うし、じゃあ帰るか!」


サイラスのその言葉とともに、俺達の今日の依頼は完全に終了した。




俺達は冒険者ギルドへと戻ってきていた。


「おっちゃん、依頼終わったよ」


受付にいるおじさんにサイラスが話しかける。

俺はシリウスが後始末の時に戦利品として切り取った指数本を受付に置いた。


「おう、ガキ共お疲れさん。

トロルは動きがのろいが厄介な再生能力のある魔物だ。三人で一匹をやるとは言え少し心配していたんだが、怪我もないようで何よりだ」


おじさんは、それを手に取りトロルのものだとしっかりと確認した様で今回の依頼の報酬をトロルの指の代わりに置いた。

サイラスがそれを受け取った。


「俺たち三人で、入念に調べて準備していったからな。楽勝だったよ!」


「予定外の事があって少し手間取りましたけどね」


「予定外の事ってなんだ?」


俺は疲れていたので、サイラスやシリウスみたい何かを話そうとしていなかった。

トロルの打撃を5回受け流したのだが、それだけで足に結構来てるものがあった。ギリギリで受け流せはしていたが、やはり完全に、とはいっていなかったのだ。

これは俺が十分に鍛えていないからだ。

普段から大きな剣を振るうサイラスなら俺よりもまだマシだったのだろうが。


近くの椅子に座った。

疲れた足をなんとなくトントン叩いていると、俺の座るテーブルの向かいに誰かが座り、俺に水の入ったコップを渡してくれる。


「一人だけお疲れモード? ユート」


「ありがとう、ミリア。

今回の依頼で盾で攻撃受け流してたんだけど、さすがに少しキツくて」


目の前に座ったのは、一つ歳が下の少女。名前はミリアである。

ミリアの父親が冒険者ギルドに勤めており、まだ年を片手の指で数えられる時から冒険者ギルドに通っているらしい。ここを拠点としている冒険者達のマスコット的な立ち位置に居る少女。

今までは父親の手伝いをしていたが、この頃では本格的に冒険者ギルドで働き始めるために勉強しているらしい。仕事モードで丁寧な口調を練習してるとかしてないとか。

まあ、その父親は今受付でサイラス達の相手をしているおじさんなのだが。


冷たい水が喉にしみる。


「大丈夫なの?」


「少し疲れが溜まっただけで、別に攻撃を食らったわけじゃないから大丈夫だよ」


「なら、良いけど」


この少女とはおそらく二年ぐらいの仲だろう。

俺が14の頃にこの都市に来て、もう少しで16になる頃なので2年程度で間違いはないはずだ。


「よお、ミリア!」


「依頼お疲れさま、サイラス。…それにシリウスも」


「どうも。ミリアさん」


おじさんと話し終えたらしいサイラスとシリウスが俺たちの座っているテーブルに、座った。

サイラスは満足気な顔でこちらを見た。


「喜べユート。

俺とシリウスで片付けた魔物の群れのこと報告したら、追加報酬貰えたぞ!」


「おお、やったな!」


「僕が倒した魔物は戦利品が取れないようなものもありましたので、本来のものよりは少ないですけどね。

…そういう面では、やはり魔術は不便です」


「魔術師がソレを言ったら駄目なんじゃない?」


ふぅ、やれやれ…といった様子のシリウスに対し、何言ってんだコイツみたいに見るミリア。

この二人、地味に仲が悪い。

なんで仲が悪いのか知らないけど、なんというか…目が合えばお互いに舌打ちしそうな雰囲気を醸し出す。

俺とサイラスは、これには出来るだけ触れないようにしている。

正直、巻き込まれたくない。


「ま、まぁとりあえず依頼も終わってやっすい宿だから5日間ぐらい泊まれる金は手に入った事だし、次の依頼まで3日間ぐらいは自由行動って事で休もうぜ。

ユートも結構足にきてるだろ。トロルは馬鹿力だからな」


「…あぁ、分かった」


「3日間も休みがあるんだったら、僕はいつも通り研究に集中しますかね」

シリウスは、椅子から立ち上がった。


「また引きこもるんだ?」


「煩いですよ」


ミリアの言葉にシリウスは一瞥と共に、そんな一言だけ放ち、去っていった。

おそらく宿の自分の部屋に向かったのだろう。

シリウスはよく一人でずっと部屋にこもって、詳細はよく分からないが魔術の研究をしている。

魔術師というのは基本的に学者のようなものだ。シリウスのように冒険者などの屋外で魔物に向けて魔術をぶっ放すというのも居ないわけではないが、それよりも自分のやりたい研究を屋内でずっとやり続けるという方が多いらしい。

全部シリウスに聞いた事だが。


「俺はどうしよっかな-」


「疲れては居るんだけど一日寝れば十分だしゴロゴロしてるのは嫌なんだけど、休日にやる事ないんだよな」


体を鍛えなきゃいけないというのが本当はあるんだけど、明日一日ぐらいは休みたい。

いや、今日ちゃんと寝とけば明日からでも大丈夫か?

そんな事を考えて迷っていた俺に、サイラスは笑いながら言った。


「じゃ、適当に遊ぼうぜ。ユート。

適当なとこ行って、美味いもん食って、丁度いいから帰りに今回の依頼で使ったもの補充しようぜ。ちなみにミリアは、明日とか暇か?」


俺はサイラスのこの言葉で、明日の方針を決める。


「残念ながら、父さんの手伝いする日なの」


「そっか。じゃあ、明日はユートと二人で」


「俺達と変わらない年で親の手伝いとか偉いよな」


「いや、それを言ったら私と変わらない年で冒険者として生活できるお金を稼いでる方が凄いでしょ。

普通、あなた達の年だったら行けてもFランク。まだまだ雑用のはずなんだけど?

Eになれてる時点で凄いわよ」


ギルドのランクは基本的にSからGまで。

例外で本当の化け物はSSランクと呼ばれる人物はいるが、今までの歴史でもSSランクまで至った人物は少なく。俺が覚えている範囲でも3人程度。今現在はSSランクの冒険者は存在しない。

その冒険者のランクで受けられる依頼も変わり、討伐系の依頼を受けられるのはEから。

そして自分の上のランクの依頼を受けるのは禁止されている。

今回の俺の依頼ではDランクの魔物をEランクの俺たちで討伐したわけだけど、これはチームを組んでの討伐、そして相手が単体であるから許されたのだ。

もし俺たち3人の内の一人だった場合依頼を受けるのは許可されなかっただろう。

ただ、Dランクの魔物が3体以上の魔物の討伐だった場合は受けられないだろう。


「ま、俺達の場合Eランクになるのなんて簡単だったけどな!」


「俺達が冒険者になったの10歳の頃だからEランクになるのにも4年かかってるんだけどね」


俺達が今拠点にしている都市は大きく、北部では3つ程度しかない人の多く集まる中心地と呼べる都市だ。

本来、俺達はもっと北の田舎の生まれだ。

10から14までは、田舎の小さなギルド支部で雑用の依頼をこなしながら先輩冒険者から訓練を受け、Eランクになると同時に依頼が多く集まり尚且つ幾つかのダンジョンが近くにある大きな都市に拠点を移すことにした。

そして今、討伐の依頼で生活できるまでになれたのだ。

割と苦労もしたし、時間もかけてる。


「へぇ、初めて聞いた。意外と時間かかってるんだ」


「わざわざ言うことでもないから」


「ユートやめろよ! 苦労したなんてカッコ悪いだろ!」


「こういう話に、かっこ悪いも何もないだろ」


「それでもダメだー!」


ウガーというような感じで騒ぎ出しそうな勢いでサイラスが叫ぶ。

冒険者ギルドは普段から騒がしいので、サイラスの大声も周りでは気にされた様子もなく、近くのミリアは面白そうにサイラスを見ており、俺はつい笑ってしまった。

その後も三人で適当に話し続けた。

するとミリアが父親に呼ばれ、それをきっかけに俺たちも安い宿に戻り、飯を食べて俺は早めに眠りについた。

3回ぐらいずつチェックはしているのですが、誤字や脱字を気づくこと無く投稿してしまうことが多いです。

なので誤字・脱字があればご報告していただけると有難いです。



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