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母ちゃんより怖い女~結婚に至った過程を思い出してより

作者: 尾鷲裕

家内と子供達、拙文を動画化してくれたalutrboさんに感謝の意を込めて。

(ニコニコ動画、youtuneで結婚に至った過程を思い出してで検索していただくと動画を見ていただくことが出来ます。)

新入時配属先で紹介が済んだ後のこと。


嫁「指導担当の増渕です。」

俺「尾鷲と申します。よろしくお願いします。」


値踏みするように見られた後で


嫁「合宿研修で教えられたことは全部忘れて下さい。クソの役にも立ちませんから。」

俺「はい?(この女今クソって言った?)」

嫁「三ヶ月で業務内容全部覚えてもらいます。」

俺「三ヶ月ですか!?」

嫁「出来ませんか?出来ますか?」

俺「がっ、頑張ります!」

嫁「頑張るとかそういうのは当たり前なので一々言わなくてもいいから。」

俺「・・・・・・」

嫁「事務関係は一ヶ月で掌握してください。」

俺「・・・はい・・・」


ようやく笑って


嫁「私のミスはあなたのミスにならないけどあなたのミスは私のミスになるので忘れないで下さいね。」

怖かった。

母ちゃんより怖い女に初めて会った。

小便ちびるかと思いました。


びっちり後くっついて回って

部内で「影」ってあんまり嬉しくないあだ名までつけられたが宣告期間内に仕事は一通り覚えた。

その間プライベートな会話一切なし。

業務内容以外は沈黙タイム。

指導終了後ねぎらいの言葉も何もなかったけどやっと解放された。


万歳!


んで正式に別のチームに組み込まれて1/4人前位の戦力として働きはじめた。

当時完全フリーだったのと何となくって雰囲気で

そのチームの嫁と同期の女と付合うことになった。

嫁とは正反対で優しいし、目が合えば笑ってくれるしもうパラダイス状態ですよ。

でもな、1年ちょっとたって段々その彼女の本性というか

他人への姿勢みたいなのが見える事件があった。

チーム解散どころじゃなくて一部転属されかねないくらいの痛恨のトラブル。

原因はその彼女がやらかしたことなんだけど。



でもいつの間にか俺がしでかした帳票入力ミスが全部原因みたいなことになってた。

覚えは一切なし。

査問委員会みたいなもんまで開かれそうになっちゃて涙目の俺に彼女が言ったのが


「私のためだったらかぶってくれるよね?」


もしかしてそれ泥かぶって辞めろってことかよと抵抗したんだけど

なんだかチームの他の何人かもそんな空気になっちゃってて。

逃げたいけどトラブル処理もあるし下っ端なんで逃げるわけにも行かないし。

でもそれ済んだら辞めろみたいな半ウツ状態のまま出社してた。

TR定時に押されてでも残り7時間は毎日サー残な?みたいな扱いです。

昼休もデスクでとり間パン食いながら検算してろって感じ。

そしたら他のチームにいた嫁が来て言った。


「尾鷲君(一応別チームなんで君に昇格してた)ガント出して見せて。」


で言われるままにガントチャートとか日報とか手帳出して見せました。



嫁「尾鷲、今のチーム外れることになってもいい?」


そんなこと言われてもどうせ社に残ってられないっすよ、増渕先輩。

言いかけたけど下に付いてる間泣き言言う前に頭と手を動かせって調教されてたので

yesともnoとも言わずに嫁が見やすいようにデータ出し続けた。


嫁「今のチームに未練あるかって聞いてんの。答えなさい。」


相変わらず怖え。

感情が全然こもってない声で言われるから泣きたいくらい。

実はもう泣いてたんだがw。


嫁「泣くな。泣いたってどうにもなんないでしょう。聞いたことに答えなさい。」


仕方ないから答えたよ。


俺「未練はないです。」

嫁「ないね?」

俺「ないっす。」


指導中も何回か見せられたすっげー乾いた笑い顔で言われたのが


嫁「悔しくはないんだ?」


むっかつくー、なんだこの女。

でも出たのが怒りの言葉とかじゃなくて


俺「おえっはうっふぅ~」


精神的に折れちゃってました。



嫁「尾鷲最近ちゃんと眠れてないんじゃないの?セブンでビール買って来て飲んでそこらでひっくり返ってなさい。」


初めて優しいことされた。

いや、久しぶりに他人に優しいこと言われた。

いくらなんでもそういうわけにはいかないので


俺「いいです。」


そう答えるのだけが精一杯。

やっぱ情け容赦ない感じで


嫁「尾鷲の意見はどうでもいいんだよ。言われたとおりにしなさい。私にはルーツのブラック6本買ってきて。はい、お金。」


万券握らされてお使いに行かされました。


嫁「行く前に鼻くらいかんで顔洗っていきなさい。」


ちょっと怒られてからだけど。

んで自分用に発泡酒、嫁には言いつけどおりルーツ買って帰社しました。


そしたら嫁がもうものっすごい勢いでチーム全員のデスク周り漁りまくってた。

引き出し開き放題。

プリンタからはシュッシュ、シュッシュ何やら出力され放題。


アホみたいにコンビニ袋ぶらさげて呆然と立ち尽くすしかない俺に


嫁「今私がしてることは全部尾鷲は見ていない。知らないことだから。いい?ほら、コーヒー頂戴。そしてあなたは寝てなさい。」


静かに言い放ってコーヒーごくごく喉鳴らして飲み始めた。




俺「先輩・・・何やってんですか・・・?」


そりゃ当然聞くし。


嫁「あーなーたーはーなーにーもーみーてーいーなーい。OK?」


嫁らしからぬ言い方でにっこり言われ、目であっち行ってろと部屋の隅っこに行くように指示された。


嫁「ほら。ビールも買ってきたんでしょう?買ってこなかったとは言わないよね?」

俺「・・・買ってきました。」

嫁「飲みなさい。」


体育会系ってわけじゃないんだけど逆らったら酷い目に合わされるイメージってわかるかな。

そんな感じ。

飲むしかない。

そのころまともにメシ食えてなかったし眠れてもいなかったので3本目くらいで酔いが回ってきた。


俺「先輩。俺こんなんなら帰って寝ますけどいいですか。」


考えたらすごい失礼な言い方だけど酔ってるしな。

ダッシュで走ってきて頭スコーンと叩かれました。


嫁「何で君に残ってもらってると思ってる?私が散らかした後片付けさせるために決まってんでしょう。落ち着くまで寝てなさい。そして起こしたらてきぱき動きなさい。」


掃除要員っすか。

妙に納得して寝た。



嫁「尾鷲、起きて。」


ちょっとウトウトするつもりだったのがいつの間にかガン寝しちゃってて嫁に揺り起こされた。


俺「すみません!片付けですよね。今します!」


飛び起きたら何もなかったみたいに片付いてた。

テンパり過ぎて夢でも見たかと思ったんだけど、嫁がそこらにあった紙袋にいくつか大型封筒つめて立ってた。


嫁「あんまり気持ちよさそうに寝てるんで自分でやったから。疲れてるのね。」

俺「本当・・・すみません・・・」


口の周りガビガビだったんで多分よだれ垂らしながら寝てたんだと思う。

穴があったら入りたい。

というかこのまま静かにどっか違う世界にフェードアウトしたい。

そんなこと思って真っ赤になってうつむいてた。


嫁「家どこだっけ?」

俺「☆☆です。セカンド最寄は★★。」

嫁「セカンド最寄?なにそれ?アハハハハハ。」

俺「言わないですか?セカンド最寄。」

嫁「言わないよ、そんなの。ハハハハハハ。」

なんかメチャウケしたらしくて大笑いされて、つい俺も笑ってしまった。

嫁「もう終電過ぎちゃってるわね・・・・タクチケはな・・・・まだまずいか・・・そうだ。泊まっていきなさい。」

俺「は?」



皆さんお待ちかねのエロ展開ですよといいたいところなんだが・・・

別に嫁の家に泊まっていけとかそんな色っぽい話じゃなくて、このまま会社に泊まってけってだけの話でした。


俺「まずくないですか?就業規定とか。」

嫁「ああ、いいんじゃないの?あなたすごいミスしたことになってるんでしょう?いつもと違って終電間に合わなかったしお金もったいないから泊まったことにすれば?ちょっと怒られるくらいで済むんじゃないの?」

俺「あの・・・先輩はどうするんですか?」


一応礼儀上聞く。

だって時計見たらもう深夜2時過ぎだし。


嫁「私はタクって帰るわ。」


むごい。

せめて送ってくださいとも言えず、よくわからんまま御礼だけ言って通用口まで送ろうとして拒否られる。


嫁「今日尾鷲は私と一緒にいなかった。いい?守衛室いったらばれるでしょう。よく考えなさい。」


もういい加減怒られ慣れましたけど。

バカですみません。


嫁「もうしばらくは大変だと思うけど最後まで頑張って。お疲れ様。」


疲れることなんて何もしてません。

酒飲んで寝こけてました。

そうだよね。

辞めるまで手抜くなってことですよね。

相変わらず手厳しいや。

増渕のバカッ!死ね!

内心毒づきながら非常ランプで薄緑に光る廊下を颯爽と去る嫁を見送った。

まだビールあったよなと思ったらゴミごと持ち去られてて更にガックリきたのを覚えてる。



当然シャツもよれよれだしネクタイも替えてないし、やっぱ怒られるよね。

と思ったらあっさりスルーされるような存在感。

忘れてました。

俺もうこの社にとっちゃいらない子だったわ。

そんな感じでチームで浮いたまま、正直言えば半無視状態のまま残務処理を続けた。

針のむしろって言うけど、そんなことも感じられないくらい温度も感情も感じられない毎日がその日から一ヶ月ちょっと過ぎたある日、部長から呼び出し。


来るべき日がきちゃったかな。

暗鬱な気持ちを抱えて別室に向かうと直属の部長だけじゃなくて、新人研修の時に見た人事の部長やら法務の部長やら偉い人が待ってました。

頑張って入ったとこなのに。

こんな前歴ついてたら多分転職も出来ねーや。

仕方がないから故郷に帰って兄貴のやってる畳屋で使ってもらおう。

ああー、俺の人生終わった。

うつろな気持ちで一礼して立ってたら座るように促された。


直部長「今回は大変だったな。まぁお疲れさん。」


毎日のように謝ってたんでもう謝るのもいいやって気持ちになってたけど社会人ですから。


俺「この度は申し訳ありませんでした。」


謝ったさ。

だってそういう状況になっちゃってんだもん、仕方ないよ。


コンプラ部長「んー・・・まぁね。君の立場じゃどうしようもなかったね。気の毒だけど。」


入社2年目のペーペーっすから。

抗う力も何もないっす。


法務部長「何か希望はありますか?」

俺「・・・・ありません・・・・あの・・・辞表は・・・」

法務部長「依願退職じゃないから辞表なんて必要ないんだよ!」


また怒られた。


人事部長「正式な辞令は末締めで出しますから、それまで自宅待機していなさい。」


決定的なお言葉を頂戴しちゃいました。

皆さん他にも色々言ってたけど全然耳に入らないし、理解も出来ないまま部署に戻って荷物まとめて帰宅した。


自宅待機って何そりゃいいのよ。

やっぱあれですか。

いらない子は自宅にひっそり引きこもってチャンスがあったら逝っちゃいなみたいな感じですか。

そんなことばっか考えながら毎日グッピー見ながら過ごしてた半月後、人事から電話。

辞令が正式に出たので受け取りに来いとのこと。


有終の美じゃないけど最後くらいはパリッとキメようとサロンで髪切って、ついでにひげもちゃんと剃ってもらおうと思ったら

「うちじゃ出来ないんですよ。」

となぜか断られ、うわっ、人生の敗残者には世間様も冷てぇなと、コンビニで安いシェーバー買って自分で適当に剃って余計にささくれた気持ちのまま出社した。


びっくり。


解雇されてないじゃん、俺。

主任補佐って、訳わからんクラスアップしてんですけど。

配属も変わってるし。

何これ?

なんてミラクルですか?

ホント訳わかんないすけど。

アホ面下げて新しい部署に向かった。

そしたらいたんだよ、嫁が。

しかもあっちも直属上司の主任にランクアップして。


嫁「尾鷲、十分休んだでしょう。今日からがっつり働いてもらうわよ。」

俺「先輩、どういうことなんですか!?」

嫁「指導付いてた頃言ったでしょう。あなたのミスは私のミスになるって。ミスしてない人間なら拾い上げなきゃ、無責任てもんじゃない?」

やられた。

また泣かされた。


当時俺が翻弄されてたことを少しだけ書かせてもらう。

業務内容なんだけど工場とかじゃなくて、んー、当たり障りのない風に書くとでっかい問屋というか、物を右から左に流す手伝いをする感じってことで。

俺のいたチームが取り組んでた商いってのがちょっとデリケートな地域にデリケートなものを売るのをサポートすることで、色々生臭い金も絡んでくるんだわ。

そんなんよくあることなんだけど。

現地からやっぱそんなもんいらん、でもギャランティは契約書に書いてあるとおりしっかり貰いますよと。

つまり契約不履行で金むしったるわと。

そんな問題を処理してました。

いや、何て言うんですか。

ぶっちゃけ『手数料』の額が折り合わねーって話です。

現地では商品は必要なもんだけど、当然ギャランティ入ってくるならいっか、つーかタダで銭貰えてラッキーくらいの感じ。

クライアントはどうしても商品を売り込みたい。

『手数料』スライドさせてでも売ってきてもらおうじゃないですか、♪♪さんと。

んでですね、渉外さんとは別にうちのチームで交渉して何とかシャンシャンまとめられることになりました。

が、

いつの間にやらその手数料がですね、上で承知してた額とものごっつ乖離したもんになっちゃってたんだわ。



額もそんなにでかくないし、うちが払うわけじゃない。

でもクライアントは身銭余計にきらなきゃいけなくなる。

商品本体自体かなーりお値打ち価格にしてるのに。

当然信用問題になるわけです。

仲介能力0っつーことですから。

結果から先に書いちゃうとアレなんだけど、俺の元カノ含めて数人が数字いじってました。

もうほんとおこずかいゲットだぜみたいなノリで。

今までもわからないよーにわからないよーにちょっとづつ、しかも内部監査に引っかからないくらい巧みに恒常的に抜いてたらしいんだわ。


そこに何も知らないおバカちゃん登場。

つまり俺です。

口答えせずに嫁にビタ付きで黙々と仕事覚えるバカマジメ。

そんな風に映ってたんだと思う。

元カノによく言われたもん。


「尾鷲クン偉いよねー。増渕に何言われても口答えしないでスッて動いてたもんね。」


だって怖いし。

有無を言わさぬ無言の圧力っていうの?

そういう雰囲気を当時の嫁に感じてたんだから。

でもアホですから。

優しい顔してそんなこと言われてその気になって彼氏気取りですよ。

彼女にまでバカ扱いされてるとは思ってなかった。


嫁の指導期間も終わって、(本当は1年はかけると後に知る俺)ようやく嫁はいるけど他の人もいる『仕事』の出来るセクションに組み込まれますよって時に

元カノ「増渕ちゃん、尾鷲ちょうだい?」

一夏かけて仕込んだのをかっさらうようにおねだりに来たんだと。

指導期間中なんてただの給与泥みたいなもんすから。

さぁ、今から馬車馬のように働いて利益出してもらおうかいって矢先に。

普通渡すか?


はい、速攻譲渡されました。

俺についてる間嫁の業務効率も明らかに落ちてるのわかってたから厄介払いされたんだと思ったし、

わーいカレーよりボルシチの方が好きっすってなもんよ。

腕組して無表情に俺のこと見てる嫁の前でいそいそ荷物まとめてセクション移動しました。

彼女も出来ました。

仕事も面白い。

でもな、元カノが俺に求めてたのは仕事する能力じゃなかったんだな。

スケープゴートを一年かけてじっくり太らして食べちゃいましょってだけだった。

可愛い女だと思ったんだけどなー。

今考えたらもう腹の中までまっくろくろすけですよ。


そして機が熟した頃にこずかいアップ作戦発動されました。

あれじゃん。

バカがコンマパーセント帳票見間違えて報告書出したってことにすればよくね?

多分そんくらいの軽いノリで。

ロシア語なんてわかんない俺も俺ですが、わざと嘘教える元カノも元カノだよね。

ああ、わかってる。

四重五重に確認とらなかった俺が一番悪い。

でも二重三重に確認とった先輩まで俺のこと騙してるなんて思わないもん。

愛し愛されてると思ってた女に泥かぶってって泣かれてお願いされるし。

涙目で仕事するしかないっすよ。

そこに頃合見計らって現れたのが嫁だった。


嫁・・・・

恨むぜ・・・・


そういうことに使われるって予想してて俺のこと手駒に使ってました。

はい、いわゆる囮操作です。

取り合えず俺突っ込んどけばボロ出すんだろってことで即席で訳もわからんまま人身御供にされてたようだ



それは直属の部長も課長もコンプライアンス部も法務部も監査部も知ってましたとさ。

誤差の範囲で処理できない額の抜きを発生させるのを虎視眈々と待ってましたって話。

部長会議の後半はこの話だったんだけどパニックに陥って頭に入らなかったっぽい。


あの夜嫁が来たのは別にデータがどうこうとか帳簿がどうこうとかそういうのを調べに来たのじゃなく、

そのままだと俺がぶっ壊れて人生そのものを退職しちまわないように、味方がいるぜって示しておくための個人的暴走行為だったらしい。

持ち帰った封筒の中身もほとんど白紙のコピー用紙だったんだって。


お願いしますよ、嫁。

そういう時は体でねぎらうとかさ、いくらでも方法あんじゃん。

付き合い始めてから聞いたら


嫁「はははは、私あの時あなたのことまだ好きでもなんでもなかったし。無理。」


さらっと流されましたが。


で、結局監査の方で同時進行ですごい規模の調査進めてたようで、元カノ含めて事情知らなかった人間以外ほとんどが懲戒解雇、依願退職、訓告プラス移動。

法務部長がキレてた辞表が必要ない云々は俺じゃなくて彼等だったってオチ。

天罰覿面かっかっかっと笑いたいところだったけど、しばらく経つまで事情伏せられてて知る由も無かった。

嵐は俺が自宅待機させられてる間に収まっちゃってて拍子抜けしました。


主任補佐ってのはアレですかね。

ご褒美?

手当てもなんもつかないけど。

勲章みたいなもんか。

て訳でトラブル内容と俺の本当の使われところはこんな感じでした。



配属先は今までの業務とは関係ない比較的地味なところだった。

でも地味なクセしてクラクラするくらい専門知識が必要なもんで、また一から嫁の下で修行やり直し。

相変わらず黙々と後をついて回り、指示されたらダッシュで遂行、マッハで報告してました。

で、やっぱ部内であだ名つけられちゃって、それが情けないことに「チュウケン」。

もちろん中堅じゃない。

忠犬の方な。

別に屈辱だとも思わなかったし、辛くもなかった。

入社当時の冷徹さは相変わらずだったけど、一本筋が通ってるのはわかってたし、例の件で俺は嫁に助けてもらったと思っていたから。

気が付けばそんな日々が2年経過した。

お互いプライベートなこともほとんど話さないまま。

まぁ普通に上司と部下ですし、「アンタッチャブルでお願いします」みたいなオーラをまとった女なんで。

そこに波風と言うか、台風並の出来事があった。

嫁の海外支社への移動辞令。

栄転です。

憧れの女性総合職エリート街道驀進決定です。



ところがだ。

嫁辞令が発表された途端に部長のところにすっとんでいって


嫁「内示の際にお断りしたはずですが。」

部長「君、何言ってんの!**だよ?」

嫁「それが何か?」

部長「エリートコースじゃないか!」

嫁「お断りします。」

部長「そんなこと俺に言われたって!困るよ!」


そしたら嫁ツカツカ自分のデスクに戻っていきました。

**支社だもんな。

その後いくつか回ったら確実に部課長クラス確定じゃん。

そりゃ飲むわ。

つか断る理由がわからん。

そんなこと考えてたら嫁がまた部長のところにカッカッといって手にしたものを一礼してから差し出した。


嫁「一身上の都合により**年**月末をもちまして退職させていただきます。」

部内全員「ええーーーっ!!!!!」


俺はびっくりしすぎて声も出せなかった。

辞めちゃうの?


退職願はひとまず部長預かりにはなったものの、残務整理と引継ぎをてきぱきこなして結局嫁は翌月末に退職してしまった。

送別会も固辞して春の雨の中普通に家に帰るように。


部内は部内で、一時何故?みたいな雰囲気になってて、

男と遠恋になるのがいやなんじゃないかとか、男多分いないし、みたいな無責任な噂が流れた。

俺も詳しい事情知らないのか?と上も含めて何人かに聞かれたが、知らないもんは答えようがないので黙っていた。

部内の雰囲気はすぐに元に戻った。


ある日のこと。

嫁の後任になったのがちょっと使えないお方で渉外さん(弁護士ね)にお渡しする資料を揃え損ねちゃって、

自分は謝りに行くの嫌だからなんてほざきやがるもんだから、嫁について回って顔がつないであった俺が詫びを入れに行くことになった。


弁「増渕さんねぇ、なんでああいう子いなくなっちゃうかねぇ。」


非常に残念がられるくらい仕事出来たんだよなぁと思いながら出されたコーヒーをいただいてると、


弁「ああ、そうだ。増渕さんの忘れ物あったんだった。うちにあっても何だから君返しといて。」


返しといてって言われてももう接点ないし。

でもそう言うわけにもいかないのでお預かりしますと答えた俺に渡されたのは一個のポーチだった。


ポーチ・・・っていうか・・・顔?

なんか白い熊の顔の形してんですよ。(後にコリラックマというキャラだと知る。)

ないないないないない。

これが嫁の私物なんてことは絶対あり得ない。


きょとんとしてると渉外さんも笑ってた。


弁「女の子だもんねぇ。こういうもんも持つんだねぇ。」


嫁を女の子って呼ぶ人間に初めて遭遇しました。



いや、預かったのはいいけどどうしたもんだか。

宅配で送っちゃってもいいんだけどそれも何だかなぁ。

そもそもまともに助けてもらった礼も言ってないし、電話してみっか。

メモリにまだ残ってた嫁の携帯に連絡してみました。


俺「お久しぶりです。尾鷲です。」

嫁「何・・・?」


うわー、相変わらず無愛想な女。

思わず苦笑いしちゃうくらいいつもどおりの応対に、


俺「今@@先生の事務所前なんですが、先生から先輩の私物をお預かりしまして。」

嫁「・・・私物・・・?」

俺「なんか熊の顔の形のポーチなんですけど、先生が先輩のものだとおっしゃっるものですからご確認をと思いまして。」


そしたら電話の向こうでガタッガッて音がして(ベッドから落ちたそうだ)、


嫁「★*$◎#¥!」

俺「はい?」

嫁「それっ、美沙のポーチ!」


美沙・・・・?

誰?

嫁の名前だった。

いわゆる姓じゃなく名の方。

道にブリーフケースぼとっと落とすくらい驚いた。


嫁「今日この後忙しい?」

俺「いえ、報告に戻って何もなければそのまま上がりますけど?」

嫁「半蔵門じゃ(会社最寄駅)だと誰かに見られちゃうしな・・・尾鷲は渋谷だよね?」

俺「はい。セカンドですけど。」

嫁「あははは。そうだったセカンド最寄。」


妙なこと覚えてんな、嫁。


嫁「そうするとファースト最寄は神泉?」

俺「そうですけど、ファースト最寄って・・・」

嫁「セカンド最寄があるならファースト最寄もありなんじゃないの?」


俺、笑いをこらえ切れずに吹き出しちゃいました。

何だかちょっとムッとした声で、


嫁「19:30頃時間ある?取りに行っても大丈夫かな?」


俺「いいですよ。時間がずれると大変なのでスタバで待ってていただいていいでしょうか?」


嫁「OKです。ごめんね。」


久しぶりに嫁と会うことになりました。

続きます。


帰社してから新主任にお前もちゃんと確認してくれないからとかネチネチ難癖つけられて退社時刻が若干ずれ、5分前の法則を叩き込まれていたのにスタバに着いたのは約束の時間を10分近く過ぎてからだった。


嫁「尾鷲くん!」


わっ、やばし、怒られる。

必死に探したんだが声はすれども嫁見つからず。


嫁「こっちこっち。」


ん?

誰ですか?

何か見たことないお姉ちゃんが手招きしてますが?

ゆるーくウェーブかかったブラウンのロングヘアにターコイズブルーのニット。

それにダークグリーンのロングスカート。

よ・・・嫁・・・・?

よく見たら嫁の顔くっついてる、お姉ちゃんに!


俺「増渕先輩・・・ですよね・・・?」


嫁「何言ってんの。今日はわざわざごめんね。何飲む?」


俺「あ、自分で買ってきますから・・・」


嫁「いいってば。何?」


俺「キャラメルマキアートトールで・・・」


嫁「OK。クッキーは?」


俺「いえ・・・いいです・・・」



見たとない人が目の前通り過ぎてカウンターに並んで少しして戻ってきた。



嫁「それでポーチは?」


目の前にサーブしてくれた後座りながら聞いてきた。


俺「あ、はい。こちらになります。」


ショルダーから熊ポーチ取り出して渡すと、なんてんですか、破顔一笑?あんな感じで、


「よかったーっ。そっかー。斎藤先生のとこにいたかー。」


いたじゃなくてあったじゃ?

ポーチだし。


「探してたんだよね。xxxx個限定でシリアルも入ってんの、この子。」


この子って・・・

目の前に俺よりもアホの子が座ってめっちゃ喜んでる。


俺「ははは。そうですか。無事見つかって良かったですね。」


多分、俺は逆に顔強張ってたと思う。

俺の中で培われていた嫁のイメージはダークカラーのビジネススーツにひっつめた黒髪。

後楽園で僕と握手のヒーローも剥いたらこんな感じなんだろうか。


嫁「尾鷲君変わらないね。どう?仕事うまくやってますか?」


あんた変わりすぎだっつーの。

アブダクションされてどこぞの星からでも戻られたんですか?


俺「はぁ、何とか頑張ってます。」


嫁「相変わらず頼りないわね。」


頼りないとか言ってくれちゃってるし。


俺「でもアレとアレとアノ案件すべてクリアできそうなところまで持っていきましたよ。」


ちょっと自慢げに言ってみる。


嫁「当たり前です。仕事はクリアして初めて仕事。ちゃんと教えたでしょう。」


うわ、外見だけで中身全然変わってねぇ。


嫁「今日は斎藤先生のところに行ったのはどの案件?」


俺「**号の権利関係確認です。書類に不備がありまして、そのサポートに。」


嫁「不備。何でそういうことが起きるのかな?ん?」


やっぱ目の前のお姉ちゃんは嫁だ。

確信した。

でももう辞めた人間だし、怖くねーよ。


多分・・・怖くは・・・ない・・・はず・・・。


失礼を承知で思い切って言ってみる。


俺「ところで先輩随分お変わりになられましたね。イメチェンですか?」


嫁「イメチェン。はははは。そんな大げさなもんじゃないけどね。もう出社しなくていいからラフなスタイルでもいいかなって。」


俺「髪なんて染めちゃうんですね。びっくりしました。」


嫁「遊び遊び。カラーじゃなくてマニキュアだからすぐ戻せるし。」


照れてます。

そんな変な照れ方されると背中に嫌な汗かくじゃないか。


嫁「そうだ。尾鷲君ご飯まだでしょう?」


俺「あ、はい。社から直接来ましたから。」


嫁「ですよね。この後誰かと約束あります?」

俺「ないです。」


嫁「じゃあお礼にご馳走しちゃおうかしら。大丈夫?」


そんな、バカな。

私用で二人でスタバ入ってるだけでも奇跡なのに食事なんてムリ。


俺「いえ、大したことじゃありませんから。」


嫁「いえいえいえいえ。あなたにとってはたいしたことじゃないかも知れませんが、私にとっては大したことです。奢らせなさい。」


有無を言わさぬ強制力も相変わらずだ。

もう合計で3年近くも躾けられちゃってるので条件反射的に唯々諾々と流される俺。


「お供させていただきます。」


食事することになっちゃいました。

二人で。

夜に。


嫁「男の人だからお肉がいいわよね?ここ来る前にそばに美味しそうなとんかつ屋さんあったけどそこでいい?」


俺「はい。結構です。」


嫁に上ロースかつ定食とエビフライ単品2本、あとビールゴチになりました。


嫁「暇な時にでも遊びましょう。」


その日はそのままなぜか握手して帰った。

味はよくわからなかった。

その夜ちょっと悪夢見た。

帰宅します。



それからしばらくは俺も忙しかったし、嫁も色々あって(後で書く)連絡は取らなかった。

四ヵ月後。

携帯に嫁から着信。


嫁「久しぶり。元気にしてた?」


俺「はい。お久しぶりです。先輩もお元気でしたか?」


嫁「元気元気。今日はどうしてるかなって思って電話してみました。」


俺「相変わらず走り回ってますよ。」


嫁「あはは。そうだ。暇な時遊ぼうって約束覚えてる?」


俺「冗談かと思ってました。」


嫁「そうだよね。でも気が向いたら誘って下さい。それじゃ。」


ちょこっと話して通話終了。

ふふ、惚れたな・・・・・

なんて微塵も思わなかった。

そもそもそういう対象でも関係でもなかったし、ただの気まぐれか暇つぶしかなと。

でも何かちょっと引っかかるものもあったのは確かだった。

お世辞にも当時の俺にとって嫁は愛想が良いほうではなかったし、社交辞令を口にするタイプでもなかったから。



喉に小骨が引っかかった感じと言うか、指のささくれが剥けかけた感じというか、そんな気持ち悪さもあって翌々週の土曜日に食事に誘った。

前回は自分に合わせてもらったので今回は嫁に希望を聞いてギリシア料理。

メシ食った後ちょっとダーツして解散。

それから月に何回か食事したり、飲みに行ったりするようになった。

垣根が下がるっての?

次第に行く店もランクが変わり始めて、お好み焼き屋とか、二人で結構飲み食いして会計3000円いかない小汚い謎の飲み屋(嫁に連れてかれた)とか。


そうすると会話も柔らかい感じになっていった。

件のトラブルの真相聞いて憤慨したり、元カノ達のその後聞いてリアルガクブルしたり。

お互い趣味の話もした。


俺はグッピーやインコの遺伝系統組み合わせてアルビノ作出するのを続けてたのでそんな話

嫁は嫁で機械でする編み物(着ているニットは全部自作)の話。

カラオケ行って自虐的にクレイジーケンバンドのコロ歌ってソファ叩いて泣き爆笑もされたな。

あとあれだ。

お子様に混じってキディランド行ってリラックマ大人買い。


嫁「尾鷲君、両替してもらって。」

俺「ういっす。5000円でいいっすか?」

嫁「早くー早くー」


ガシャポン買い占めたりもしました。

みっともないことこの上なし。



ガシャポン堅くて開かないなんて泣き言言うんで踏み割って差し上げて、


嫁「なんてことすんのよ!」


と腹に3コンボ叩き込まれるくらいの中の良さになった頃、栄転拒否って辞めちゃった理由を聞いてみた。


嫁「私飛行機駄目なんだよね。」


俺「高所恐怖症かよw。」


嫁「だって怖いじゃん。一番怖いのランディング。こう体がファーって浮くじゃない。」


俺「浮くねぇ。」


嫁「あれ駄目。お尻スースーして落ち着かなくなる。」


俺「子供かよw」


嫁「だって**じゃ国内も移動全部エアバスじゃん?死ぬって。」


俺「堕ちなきゃ死なないから大丈夫だよw」


ぽかぽか暖かい秋の日差しの中上野動物園の不忍池んとこで嫁が作ってきたおにぎり食いながら笑った。

おこぼれ狙い?のハトにおやつのキャラメルコーン投げたりしながら。


嫁「飛行機なー、空気すごい乾燥してるじゃない。」


俺「そんなん水分大目に取ればいいじゃん。怖かったら酒にして寝ちゃうとか。」


嫁「違うっつーの。顔が乾燥すんだっつーの。」


俺「顔w水でも塗っとけば?w」


嫁「女ナメんな!」


にっこり笑って飲もうと思って手を伸ばしたコーラガッシュガッシュ振ってから渡された。


俺「ひでー。コーラぶっかけるよ?」


嫁にむかって傾けてプルトップ引こうとして


嫁「やーめーてーよー」


楽しい。

別に付き合ってるとかじゃないけどなんかデートっぽい。



ボソってほんと小さい声で言った。

嫁「んー、あとさ、私のとこ父親入院してたから。出張ならともかく転勤はちょっとね。」


中年過ぎるとやっぱあちこちガタくんのかなぁ。

うちの親父もそう言えば去年糖尿で入院したわ。


俺「どこか悪いの?」


軽い気持ちで聞いた。


嫁「うん。ALS。」


俺「早く治るといいよね。今度お見舞い行くよ。」


そしたら嫁上向いてはははははって笑ってんの。

友達の父親が病気してたらお見舞いぐらい行くし。

まだ信用されてねーのかなーなんて思った。


嫁「もう。大丈夫。」


俺「退院したんすか?よかったじゃん!」


嫁「退院・・・うん・・・退院かなぁ。」


俺「???」


嫁「7月にようやく死ねたんだ。楽になれたんだからよかった・・・よ・・ね・・・」


頭から水ぶっかけられた気分だった。

嫁空見てたんじゃなかった。

泣いてた。

何て言っていいかわからなくて、黙ってキャラメルコーンの袋クシャクシャにしてた。

そしたらな、嫁泣き笑いした顔で俺のこと見て言うんだよ。


嫁「尾鷲、どうしよう。私一人ぼっちになっちゃった。」



友達だって肩くらい抱いたっていいよな?

泣くな、頭と手動かせって散々言われてきたけど一緒に泣いてやっても別に構わないよな?

みんな見てたけど二人で泣いた。

多分、俺はあの夜嫁が助けに来てくれた時から嫁に惚れてた。

助けてないよ、お前騙されてただけじゃんて奴もいると思う。

実際利用されたわけだし。

でもいいんだ。

味方だって、味方がいるよって来てくれただけでいいんだ。

淡麗3本分とめちゃ軽いけど俺にとっちゃ大事な命1個分の恩がある。


嫁「そんな・・・尾鷲まで泣くことないじゃない・・・ぐすっ・・・ずびっ。」


俺「泣いてないっす!今何が必要なか考えて手動かしてるだけっす!」


嫁「泣いてるじゃない・・・」


俺「泣いてねーよっ!」


嫁「涙出てんじゃない・・・」


俺「これは汗!暑いから!」


嫁「嘘つき・・・・ずずずずずっ」


俺「ずびばぜん・・・・おえっふ」



一しきり泣いた後初めて手をつないで動物園の中歩いた。

ゲートくぐって地獄門の前通って上野駅まで歩いてる間もずっとつないでた。

電車の中でもその手は離さなかった。

先輩の住む街の駅まで送った。



嫁「今日はほんとごめんね。せっかくの休み台無しにしちゃったね。」


俺「何言ってんの。楽しかったっす。色んな動物見れたし、先輩の弁当食えたし。:


嫁「良かったらまた誘ってね。でもほんとごめんね。」


俺「先輩から誘って下さいよ。誘ってくれたら俺昔みたいにダッシュで飛んでいきますから。」


嫁「ダッシュってwもう下じゃないんだからw」


その瞬間俺の中で何かがプチって切れた。


俺「寂しいなら寂しいってちゃんと言え!バカ!」


嫁「バカって何よ!バカって言ったほうがバカなんです!。」


俺「うっせ。バーカバーカ!」


嫁人目もはばからず泣き出す。


俺「寂しかったらそばにいてやるって言ってんだ、バーカ。」


嫁本泣き。


俺「好きだっつってんだ、バーカ。俺が守ってやるっつってんだバーカ。」


嫁号泣。

俺?

秘密。

そんなこんなで情けない告白して、その日の夜プロポーズして、翌日半休取って区役所に婚姻届出した。

結論。

勢いで結婚してもどうやら幸せにはなれるらしい。

これが俺達の結婚のいきさつです。

つまらんこと長々とすんませんでした。

パンツ賢者タイムは恥ずかしいので省いた。

狭い心でも許せ。

元カノについては他1名と一緒に別件でスメルご飯を食いかけたとだけ書いておく。

では。


んじゃ初夜話は少しだけな。

告白した後、嫁に怒った顔した嫁に手引っ張られてそのまま改札抜けて、嫁が小走りになるんで俺も小走りでどこかに連れて行かれた。

着いたのは嫁のマンション。

エントランス抜けてエレベーター乗ったらいきなりキスされた。

で玄関開けてそのまま倒れこんでブラずらして胸揉んでたら、


嫁「ごめん。シャワー使ってきてもいい?」

俺「いい。使わなくていい。」

嫁「それは嫌。」


仕方がないので嫁シャワーに行かせて、そう言えば下にローソンあったなと思い出してゴム買いに走りオートロックに締め出される。

20分くらい待ってエントランス開けてもらい再訪問。


嫁「帰っちゃったのかと思った」


俺「買い物してきた。俺もシャワー借ります。」


シャワーから出たら多分親父さん用の新たしい下着が出してあったんだけど、白ブリーフだったんで無視して全裸でリビングに突入。


嫁「ここじゃ・・・いや・・・」


良く見たら遺影と花と線香立てとキラキラした箱(後にお骨としりガクブル)があったので、さすがにねと寝室に移動した。

合体。

2個入りのしか買ってこなかったんで追加で同じもの3パック買って朝まで7発した。


プロポーズと入籍が早かったのは、ほんと嫁の部屋がらんとしてて、

目についたのが買い置きの大人用オムツとかベッドとかボンベとかそんなんで、

ダメだ、急いでここからこの女解放してやらなきゃダメになると思ったから。

プロポーズには目丸くしてた。


翌朝会社に腹痛いので病院寄りますって嘘電入れて、昨日とは逆に今度は俺が嫁の手引っつかんで区役所行った。

保証人の欄はそこらにいた人の良さそうなおばちゃん連れに頼んだらあっさり書いてくれた。


式や披露宴は後になってからちゃんとやりました。

こんなところです。


おやすみ。






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― 新着の感想 ―
[気になる点] 最後のおばさん・・・ [一言] 楽しく読ませていただきました。 自分の人生経験を他人に伝えるなんて なかなか出来ることじゃ無いです 勉強になりました
2015/01/24 23:33 退会済み
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