深海にて(短短編)
深海の底。
私が海底で見上げると、揺れる眩しい太陽、そのとなりに、猫が泳いでいるのが見えました。
透き通った無色透明なこの海では、深海といえど暗くはありませんので、光も、浮かんだ果実の匂いも私には分かります。
猫は目を細めて、にゃんとないて、流れてきた青い風船を追いかけはじめました。風船は、猛毒をもつクラゲでした。
透き通った無色透明の海の底にながい間いた私は、久しぶりに見た、そのクラゲの鮮やかな青に、目から全身が吸い込まれそうになりました。
猫の手が水をかくと、そこで水面に小さな波が生まれ、クラゲがゆらゆらゆれました。
猫は楽しそうでしたが、やがてクラゲに追いついて、鋭い爪でクラゲの風船を割ってしまいました。そのクラゲはカツオノエボシといって、本来、風船の中には空気が入っているものなのですが、その風船の中には青い絵の具が入っていました。ひらがなでいえば「さ」や「す」のような、なんだかひんやりして、ぞっとするような青です。青は私の瞬きの度に溺れていきました。
私は、その青を見ながら、
かなしくなりました。
せつなくなりました。
私も猫も、たった今「もの」になったクラゲも、孤独でした。
目を開ければ、私はやはり、海の底にいました。
傷をもつ者の、涙の海の底です。
読んで下さり、ありがとうございます。カツオノエボシは実在するクラゲです。触手は猛毒なので風船割らないでくださいね(;´・ω・)ノ誰が割るかっ
宮猫
※時々文字化けします。差し支えなければおしえてください。喜んで直します。