四話
水路管理棟
王都ロウブレードは平地を外堀と壁で囲まれた城郭都市である。農耕の発達によって経済が発達し、さらに他国との交易活動の活発化によって富が蓄積されるようになり、これを巡る戦争状態が潜在的、恒常的な脅威となるにつれ、盗賊やモンスター、国家規模の外敵から守るため、周囲に堀をうがち土を盛り上げて土塁とした。
やがて防御力強化のためより堀を深くし、水を溜め、土塁には柵を設けた。さらに煉瓦や石を積んで壁を作り、壁はより高く、より堅固、長大になっていった。
城壁には城門が構えられ、堀がうがたれて跳ね橋などが設けられ、城門の外側にもう1重城壁が設けられるなど防備は厳重を極めた。城壁の上には一定間隔で望楼が設置され、壁に開けられた銃眼によって敵を射撃した。
城郭都市の内部には、小高い丘に国王の城が建てられ、周辺には家臣団の他、一般住民も居住している。郭内に耕地があり、井戸がいくつもあって長期の籠城に耐えられるようになっていた。
そのような城郭都市において、水路はとても重要である。
飲料水、農業用水、下水など生活に密着するもの以外にも、洪水を防ぐために作られる放水路など災害時においても水路は都市において必要不可欠なものなのである。
水路管理棟とは都市に張り巡らされた水路網を管理し新たな水道、下水道の建設を行う部署のことである。
水路管理棟は多忙を極めていた。偶然の故障や、堆積物の掃除、水に天然に含まれる炭酸カルシウムの集積物の除去の為に、包括的なメンテナンスシステムを必要としたからである。
責任者「おい、Dブロックの配管工事は終わったのか!」
係員A「Cブロックでも下水管が詰まってあふれています!人手が足りません!」
責任者「しょうがねぇ、手が足りないなら他所からもってこい!」
怒号が飛び交う喧騒の中、青年が一人受付にやってくる。冒険者ギルドから仕事の斡旋を受けたことを伝えると、受付は上司に相談に行き小声で話す。
係員A「どうでしょうね、彼はやれそうですか?」
係員B「やらせてみて無理だったら報酬は無しでいいのでは?」
責任者「よし、それでいこう」
受付が戻ってきて青年に指示書を渡す。
「それでは冒険者ギルドへ依頼を出します。内容は地下水路にいるモンスター討伐です」
行動範囲はこの都市だけです。
あえて大きさはぼかしています。