笑顔の向こう側
今年も春がやってきた。
私……春日聖は、今年から大学2年生。
私には、2年前から好きな人がいる。その人は後輩で、二つ年下の男の子。
むすっとした顔が印象的で、でもそんな表情に似合わず真面目で……
すぐに私は、彼に惹かれていった。
知り合ってから半年くらいして、私は卒業。その頃にはもう、私の気持ちはハッキリとしていた。そして、きっと彼も私の事を想ってくれている。そんな気がしてた。
だから、卒業式には何か起こるんじゃないかって、期待してたんだけど……
その日、彼とは他愛もない話をしただけで別れた。
寂しかったけど、それも仕方ないかな。そう思った。
でも、最後に彼は言ってくれた。
『先輩。俺、絶対に先輩と同じ大学に行きますから。待ってて下さい』
だから、私は待ってる。彼が、この大学に来るのを。
まだそれは先の話だけど、絶対に来てくれるって、なぜか信じられたから。
「春日さん、俺と付き合ってくれないかな?」
似た様な言葉を何度も聞いた。
言い寄って来るのは、皆私の容姿だけを気に入った男達。
私の何も知らない、ただ〝可愛い〟だったり、〝美人〟だったりする彼女が欲しいだけの連中。まるで、それが自分を着飾るアクセサリーであるかの様に。
そんな男、私は求めていない。
多少容姿に恵まれただけで求められたって、嬉しくもなんともない。
本当の〝私〟を見てくれる人……
彼みたいな人じゃないと、ダメなんだ……
わがままかもしれない。
それでも、彼は「待ってて下さい」と言った。
だから、私は待ってる。
来年。きっと、彼はこの大学に来る。
私を迎えに、同じ舞台まで……
「ごめんなさい。私、待ってる人がいるから」
だから、いつもこう答える。
きっと、来年からは違った答えを言えるはず。
だけど今は……
笑顔で応える。
私には、好きな人がいるから。
「あなたとは、付き合えません」
〝私〟の想いは、彼にだけ向けられているから。
だから、ね?
待ってても、いいんだよね?