ツマルトコロ
「ごめん。俺、好きな娘いるんだ」
その言葉を聞いた途端、あたしの脳内には高波が押し寄せ、更には豪雨、はたまた激しい雷鳴が轟いた。
そりゃあもう、効果音を表現し切れないくらいにモノスゴイのが……
「そ、そうなんだ……ごめんね、あたしの方こそ」
差し当たりのない言葉……というか、もはや何度も言い慣れたその言葉を口にする。
そう。あたしこと、三石里香は、今日で通算20敗目の恋の終局を迎えたのでした……
終わり。
……って、そんなわけあるかっ!
「そんなに複雑そうな顔してどうしたの?」
と、心配そうに覗き込んできたのは、クラスメートで親友の皆瀬雪奈。
「20連敗……」
「え?」
気まずそうな表情を浮かべる雪奈。
わかってる。わかってるわよ。あんたの驚きは……
「あたしって、そんなに魅力ないのかなぁ……?」
「って言うよりは、男運がないだけなんじゃ……」
雪奈のその言葉にも、少なからず……うぅん。だいぶ納得できる!
思えば、それは初恋……
あれはまだ小学3年生の頃……
「○○君(もう名前も覚えてない)。あたし、○○君の事好きなの!」
思い切って告白したのは良いものの、返ってきた答えは……
「ごめん。ボク、女の子に興味ないんだ」
「え」
モー○ーですか!?
そんな心の叫びはともかくとして、見事に粉砕。
それからは似た様な結末の連続。
コブ付きは勿論の事、実は女の子だったり、オ○マさんだったり……(ちなみに、初恋の相手はオ○マさんではなかった)
そういう相手しか好きにならないのだ。
「もはやこれは、男運とかそういう問題じゃない!」
あたしの趣味が悪いにかもしれない。
そんな考えは頭の隅の更に端っこに追いやっておくとして、やっぱり色々と考えなければならない事がある。
「っていうかさ」
「なに?」
「彼氏持ちのアンタにはあたしの気持ちなんてわからないわよね……」
そう。この娘には彼氏がいる。確か隣のクラスの……
「豊笠君だっけ?」
「うん。のぼる君」
あー、なんかその名前を呼ぶ姿さえもノロケに思える。
っていうか、むしろ自慢?
「あたしにケンカ売ってる?」
「そんなわけないじゃない」
「そうよねー」
…………
「あはははは」
「ふふふふ」
渇いた笑いが漏れる。
あたし、この娘の親友やってていいのかな?
っていうか、○っちゃっていいですか?
思わず握る拳に力が入る。
というのは、まあ冗談として……
「はぁ」
彼氏欲しいよぉ……
「えっと、ガンバッテネ!」
「何か腹立つけど……まあガンバリますよ」
あたしはうなだれながらも、雪奈の応援に頷く。
つまるところ、とにかく前に進むしかない!
さっ。
次の恋見つけよう!