「Who are you ?」 「Me is...」
貴方は誰ですか……?
この手紙を受け取ったということは、きっと海辺に住んでる人なんだと思います。
あ、もしかしたら、旅行とかかもしれないですね……
そんなことは、どちらでも構いません。
ただ、この手紙を拾ってくれたことに感謝します。
あ、読んでもらわないと意味ないかも……
私、バカですね……
自分で自分がおかしくなります。
でも、もしこの手紙を拾って、ちゃんと中身を読んでくれているのなら……
私は、それも一つの奇跡だと思います。
それは凄い偶然の上に成り立つ、小さな奇跡。
だから、この手紙を拾った貴方に伝えたい。
私は、不治の病に冒されています。
貴方には関係のないことです。それでも、もしまだ、少しでもこの手紙の内容に……私に興味を持ってくれたのなら、もう少し付き合って下さい。
私は、不治の病に冒されています。
名前は、えぇっと……
ちょっと難しくて覚えてません。
けど、とにかく絶望的らしいです。
現代の医療技術では、逆立ちしても治せないそうです。
それを最初に聞いた時、私は泣きました。
そりゃあもう、涙が枯れるかと思うくらいに……
でも、一晩泣いたらだいぶ気分も収まって……
今、私に出来ることをしよう。
そう思いました。
まだ、タイムリミットはしばらくあります。
長くて3年。
短くても、1年は生きられる。
お医者様が、そう言ってくれました。
だから、私はその言葉を信じます。
ほんの一握りの希望にかけるつもりはありません。
私の命は、後数年の内には必ず尽きる。そう考えて、そう考えるからこそ、少しでもやり残したことのない様に……
何かに、取り組みたいと……
その一つが、この手紙です。
どこの誰かはわからないけど。どこかに、私のことを知ってくれている人がいる。
そう思うと、何だか嬉しく思えるから。
瓶にこの手紙を詰めて、海に流しました。
今時、何をしてるんだ? そう思うかもしれません。
でも、後悔はありません。
だって、この文章を読んでくれているってことは、こうして拾って、中身を読んでくれてるってことなんだから。
だから、私はこの手紙を書いたことを後悔なんてしません。
でも……誰も読んでくれてなかったら、ちょっと悲しいかな……
だから、誰かが読んでくれてると想定しておくことにします。
だから、私は貴方に言います。
ありがとう。
私のことを知ってくれて。
手紙を読んでくれて。
ありがとう。
ずっと覚えててもらうことは出来ないかもしれないけど……
それでも、少しの間だけでも知ってくれて、ありがとう。
私は、この手紙に対する返事を期待してはいません。
だから住所も載せません。
きっと、それは貴方の重荷になってしまうから。
だから、忘れてくれても良いんです。
ただこの一時だけでも、私のことを知ってくれたから……
だから、
ありがとう。
そして、さようなら……
最後に聞きます。
貴方は誰ですか?
私は……