思い起こせば蘇る記憶
ふと気が付けば、ただ何も考えずに、同じ事を毎日繰り返す自分がいた。
何が楽しいのか、何がしたいのかも分からず、ただ同じ毎日を繰り返す。
それは、〝社会〟という枠組みにはまった自分。
それは、〝社会〟という歯車の一部と化した自分。
街の喧騒を背に、会社から言い付かった仕事をこなす。
そんな自分――それは、まるで機械の様にさえ思える。
苦しいとか、哀しいとか言った感情なんてそこにはなくて、ただ義務感と理不尽な〝当たり前〟があるだけ。
そんな事はわかっているけど――否――わかっているからこそ、それに気付いてしまったからこそ、今こうして思い返してしまう。
楽しかった過去の日々。
嬉しかった思い出の数々。
忘れられない、忘れるはずがないと思っていた記憶達。
ああ、それなのに……
今の今まで忘れていた。
確かに忘れてしまっていた。
思い出す。あの日の言葉。それは誰の言葉だったか――だが確実に、自分の胸の内に突き刺さったハズの言葉。
「忙しい毎日。それは、お前から思い出を奪っていくよ」
ああ。その言葉は正しかった。その時はその言葉を受け入れるの嫌で、必死に否定してきた。だけど……
今こうして、忘れていた事に気付いてしまった。
今こうして、あの時の言葉を思い出してしまった。
哀しい――そんな感情、忘れていたハズなのに――
楽しい――そんな感情、捨ててしまったハズなのに――
思い出してしまった。そのスベテを。
だからもう、機械ではいられない。
自分が人間なんだと、気付いてしまったから……
思い出さない方が良かったのだろうか?
思い出した方が良かったのだろうか?
わからない。それでも、ただ思い出したという現実がそこに在るだけ。
だから、哀しい。
だから、嬉しい。
さあ、今日も頑張ろう。
生きる為に必要な事をしているのだから。
思い出は思い出。今は今。
やるべき事はしなければならない。
だから、今はさよなら――あの楽しかった、青春の日々――