曇り空……時々、笑顔。
とある公立高校に通う3年生。原田佑介は、受験を控え苛立っていた。
ノイローゼ……とまではいかないまでも、ストレスは確かに存在し、佑介の体調・感情共に崩している。
それでも、きちんと勉強を続けているのにはわけがある。
佑介の目指す大学が、国立のトップクラスの偏差値を誇る大学である事が一つ。
そして何よりも大きな理由が……
その大学に、佑介の想い人が在籍しているから……
付き合っているわけではないし、気持ちを相手に伝えたわけでもない。
それどころか、もしかしたら自分の事など覚えていないかもしれない。
それでも佑介は、勉強を止めなかった。それは、ある種の覚悟。自分に対する誓い。
始まりは、2年前。
佑介が高校に入って、何ヶ月かが経った頃。
佑介は、当時3年生だった春日聖に恋をした。
出会いは偶然だった。
学校の図書室で、たまたま同じ本を同時に取ろうとした。手が触れて、一瞬。だけど、確かに二人は見つめ合い……
聖がどう思ったか、佑介は知らない。
それでも、佑介はその瞬間に恋に落ちていた。
二度目の出会いも、偶然だった。
佑介としては、それは必然だったと思いたかったが。
生徒会。
割と優等生だった佑介は、担任に誘われるままに生徒会へと入った。
そこには、聖がいた。
それから二人は、普通の先輩・後輩の仲くらいには仲良くなった。
それでも楽しかったし、嬉しかった。だから、佑介はそれ以上は望まなかった。
たったの約半年。それでも、佑介は充実した日々を過ごした。
聖の卒業。
聖の進学。
その進学先は、高偏差値の国立大学。
それを知った時から、佑介は密かに自身の進学先も決めていた。
聖と、同じ大学に行きたい。
その気持ちを強く持ち、勉強にも力を入れた。
そして今、こうして受験を控えている。
もし……
もしも、同じ大学に通える様になったなら……
自分の気持ちを、伝えようと思っている。
この2年間。ずっと自分の中に潜めてきた気持ちを。
今はまだ、大空を淀んだ雲が覆っているけれど。
いつか、晴れた空を眺めならる様に……
いつか見た、彼女の笑顔を糧にして……
あの笑顔を忘れない限り、頑張っていけるから。
彼女の笑顔を思い出しながら、彼女の待つあの場所へと向かって……
今はただ、頑張っていよう……