ハロウィン!「ソフィアと小人」
魔界不死体の町(アンデット,タウン)。
不死体の町に住むフランケンシュタインの女の子ソフィアは、お菓子を食べようと、木の台の上に乗って、リビングルームの戸棚から、ゴソゴソとお菓子を探していた。
百十五センチの背丈。
オレンジ色の外ハネが特徴の髪。
パッチリとしたオレンジ色の瞳をした目。
頭には、ネジがささっていて、左頬には、縫い傷があるフランケンシュタインで
年は六歳ぐらいの女の子である。
「あれー?ないなー」
戸棚には、キャンディどころか、チョコのひとかけらもなかったのだ。
ソフィアはお菓子が家にはもうないとわかると、戸棚の扉を閉め、台の上からおり、自分の部屋に向かった。
そして、自分の部屋から、ライトグリーンのお財布を赤のひも付きポシェットの中にいれ、
首にポシェットをぶら下げて、リビングルームに戻った。
そして、暖炉にあたり、蓄音器でクラシックを聴きながら、椅子に座って小説を読んでいる
クラティスに言った。
百七十七センチの背丈。
グレーの刈り上げヘア。
眠たそうな目つきが特徴の頭にネジがささったフランケンシュタインの少し無口な青年である。
「ねーねー。クラたん。ソフィア今から、魔女&魔法使いの町まで行ってお菓子屋さんに行ってきても
いーい?ソフィア、あそこのお菓子屋さんのお菓子好きなの」
クラティスは、ソフィアにクラティスと呼ばれている。
ソフィアは、ふたたび話を続けた。
「クラたんの分のお菓子も買ってきてあげるね。クラたん何が食べたい?」
クラティスは、小説のページをパラッとめくりながら、言った。
「…ビターチョコレート」
「そっかー。じゃあ、ソフィア行ってくるねー!」
ソフィアは、リビングルームを出て、出掛けた。
クラティスはボソリとつぶやいた。
「外で、クラたんと言うあだ名使わなければいいけどな…」
フランケンシュタイン。正確には、フランケンシュタインのクリーチャー(被造物)
フランケンシュタインの怪物である。
なお、フランケンシュタインは人造人間の名前ではなく、それを作った科学者(ヴィクター=フランケンシュタイン)の姓である。
映画では、容貌が醜く知能が低いモンスターとして扱われる事が多い。
狼男、ドラキュラと並ぶ三大モンスターだ。
日本の漫画では、頭にネジがささった姿で、体は機械で出来ている設定で描かれる事がある。
なお、人造人間と書いてある事が多く、人の言葉を話す。
魔女&魔法使いの町ヴィッチ商店街。
パン屋、魔法の杖屋、箒屋、魔法生物&使い魔屋、喫茶店、果物屋、オリーブ屋、チーズ屋、等のお店が並んでいる。
灰色石畳の道を、商人やたくさんの魔女、魔法使い、吸血鬼等が、歩いていた。
「フン♪フン♪フ~ン♪」
ソフィアは、鼻歌を歌いながら、果物屋を通り過ぎようとした。
「ん?」
ソフィアは、立ち止まった。
果物屋の外にある、リンゴの木の箱に、小人の女の子が、寄りかかるように立っていたのだ。
好奇心旺盛なソフィアは、小人に近づき、声を掛けた。
「ねーねー。小人さん。どこから、来たのー?」
小人は、少し驚いたような顔つきで、ソフィアの目を見た。
リンゴ二個分の背丈。
栗色のクシャクシャとした髪型。
赤の服。
赤のとんがり帽子には、薄紫のコスモスの花が一輪ついていた。
小人は、カタコトな言葉で、モジモジさせながら、言った。
「ア…アタシハ、妖精ノ森カラキタノ…」
「ふーん…。ソフィアはねえ、不死体の町から、魔法列車に乗って、魔女&魔法使いの町に来たんだよ。お菓子を買いに。小人さんは、どーして、この町に来たのー?」
「エット…。ゼンゼンタイシタ理由デハナインダケド…アタシ、妖精ノ森カラノ外ノ世界ニ行ッタ事ナカタカラ…ドンナ世界ナノカシリタクテ、一番近イ、コノ町ニ歩イテキタノ。途中デクタビレチャッタカラ、ココデ休ンデイタノ。ソレニ、オ金持ッテキテイナイ…。アタシタダ、町並ヲ見テミタカッタダケダカラ…」
妖精の森。
エルフ、ゴブリン、ドワーフ、シーオーク、ピクシー、グレムリン、クー・シー、ガンコナー、レプラコーン、スプリガン等の様々な妖精が住んでいる。
四精霊の、水ウンディーネ、火、サラマンダー、風、シルフ(シルフィールド)地、ノーム等も住んでいる。
グー。小人のお腹の音が鳴った。
「ア…」
小人は、恥ずかしそうに、お腹を押さえて言った。
「ドウシヨウ…オ腹スイチャッタ…。アタシオ金持ッテイナイノニ…」
「じゃあ、ソフィアが、小人さんに、果物屋さんに行って、買ってきてあげようか?」
「エ…イ、イイヨ!イイヨ!ナンカ悪イシ…ソレニ、少シダケオ腹スイテイルダケダシコレクライガマンデキルヨ…」
グーギュルルルル!
もっとお腹の音が鳴った。
「ほらあ、お腹すいているじゃん。だめだよー我慢しちゃー。めっ!」
ソフィアは、左の人指し指で、小人の額を、ツン!とやった。
「………」
小人は、あきれたように、黙ってソフィアの顔を見た。
(アタシ、体チイサイケド、年ハ十二サイナノニナ…タブンコノフランケンシュタインハ、六歳グライカモシレナイケドアタシ、小サイコアツカイサレチャッタ…ナンカフクザツナキブンカモ…)
「じゃあ、小人さんここで待っててね。ソフィアなにか買ってくる」
ソフィアは、そう言って、果物屋の中に入った。
魔女や魔法使いのお客さんが、品物を選んだり、買ったりしている。
「いらっしゃい!お客さん、好きなの買っていきな!」
ガラガラ声の口ひげをたくわえた少しお腹が出ている店の主人がソフィアに言った。
「おじちゃんこんにちはー!」
ソフィアは、元気よく愛想が良い顔で言った。
「おじょうちゃん、一人できたのかい?小さいのにえらいねえ」
店の主人はニコニコしながら聞いてきた。
「うん。あのねえ、一人でこの町に来たの。お菓子買いに。そしたらねえ、店の外のリンゴの木の箱に小人さんがいたんだよ」
店の主人は、興味津々な目つきで言った。
「へー。小人がねえ。女の子かい?男の子かい?」
「あのねえ、女の子」
「ふーん…で、おじょうちゃんは何を買いたいのかい?」
「んーとねえ…。小人さんお金持っていなくて、お腹すいた。と言っていたから、何かおごってあげようと思っていたんだけど何がいいかなあ…。ぶどうと梨かりんごで迷っているんだけど…」
店の主人はしばらく考えた。
「んーじゃあ、姫りんごとかどう?小人には、普通のりんごだったら、ちょっと多すぎな気するからなあ。あとは、ぶとうとかはどうだい?マスカットやマスカダイン、デラウェア、巨峰等種類豊富だよ」
「じゃあ、姫りんご三個とマスカダイン一房買うねおじちゃん」
そう言って、ソフィアは、姫りんごとマスカダインを籠の中に入れてカウンターに置いた。
「いらっしゃいませ。」
綺麗でやさしそうな魔女のお姉さんがいる。
「お姉さん。姫りんごとマスカダイン下さいな」
「かしこまりました」
ちなみにマスカダインの皮は普通のぶどうよりも厚みがあり、芳醇な香りで甘い。
香皮色は紫、緑、銅色、に分けられ、生食以外に加工(ジュース、デザート、ワイン、ゼリー等)に用いられている。
人間界では、アメリカ合衆国南部の亜熱帯から熱帯の地域で栽培される。
なお、アメリカでは、通常、房ではなく粒単位で売られている。
ソフィアは、紫のマスカダインを選んだ。
お姉さんは、アンティークレジスターのでっぱている部分をパチパチ押しながらお金の計算をした。
「姫りんご三個合わせて90ニクル。マスカダイン、100ニクル。全部合わせて190ニクルです」
ニクルは、魔界ハロウィンタウンのお金の単位で、日本円にすると190円。
ソフィアは、財布を出してお金の金貨一枚と、銅貨九枚を、お姉さんに渡した。
お姉さんは、お金を受け取ると、ソフィアに羊皮紙で出来た少し黄色っぽいレシートを渡した。
ちなみに、金貨一枚500ニクル。銀貨一枚100ニクル。銅貨一枚10ニクルである。
他にも、偉大な魔法使いが印刷された、紙幣で、一万ニクル札と、千ニクル札がある。
そして、茶色い紙袋の中に姫りんごと、マスカダインを入れてシールで封をしてくれたのを、ソフィアは受け取った。
「ありがとうございました」
お姉さんが、ペコリと会釈した。
ソフィアは、店の外を出た。
「ありがとうございましたー!またのご来店お待ちしています!」
店の主人が、ガラガラ声を張り上げて言った。
そして。
「小人さん待った?ここじゃあれだから、広場の噴水場所に行かない?」
ソフィアは、小人に言った。
「ウン。君ノポシェットノ外ポケットニ入ッテモイイ?」
「いいよー」
ソフィアは、小人をやさしく持ち上げて、ポシェットの外ポケットに入れた。
そして、二人は広場噴水場所へと向かった。
魔女&魔法使いの町広場噴水場所。
ちなみに、広場の町並の様子は、チェコのプラハ旧市街のような美しい建造物が立ち並んでいる。
噴水や、大きな時計塔、美術館、教会等がある。
二人は、水の女神が、壺から水を出している石像の白い噴水の所に座った。
ガサガサとソフィアは、茶色い紙袋から、姫りんごを一つ取り出して、小人に渡した。
「はい。小人さん」
「アリガトウ」
小人は、姫りんごをかじって美味しそうに食べた。
ソフィアは、マスカダインを食べながら、小人に話しかけた。
「この、帽子についている、薄紫のコスモスかわいいね。ソフィアこの花好きだよ」
ソフィアは、ニッコリと笑った。
「ア…アリガトウ。ウレシイナ。ホメテクレルナンテ…」
小人は、照れくさそうに言った。
そのあと、二人はおしゃべりを楽しんだ。
そして。食べ終わり、ゴミ箱に紙袋とぶどうの皮、りんごの芯を捨ててから、ソフィアは小人を妖精の森近くまで送った。
「小人さんまたね~!!」
ソフィアは、手をふって見送った。
小人は何度も振り返って妖精の森へと帰っていった。
そのあとソフィアは、お菓子屋さんに行き、ビターチョコレート、フロッグ型グミ、バットチョコ、
棒付きゴーストキャンディー、チョコクッキーを買って、魔法列車に乗り、ペロペロとゴーストキャンディー(ミルク味)を舐めながら自宅まで帰っていった。
次の日の朝。
「…くあ…」
クラティスが、二階から、おりてきて、ダイニングキッチンに向かった。
そして、キッチンでコーヒーポットのお湯を沸かしたり、フライパンでベーコンエッグを作ったりして朝食の準備をした。
そして、テーブルにお皿やコーヒーカップ、砂糖ポット、ミルククリーマー、ジャム類、スプーン、フォーク等を用意した。
黒食パンと、魔法トースター、お皿に昨日のサラダとベーコンエッグをテーブルに置いた。
そして、イギリス食パン二枚を魔法トースターでセットしてふと思った。
(…そーいえば、バター忘れてた。ん?)
クラティスは、ソフィアの座っている、椅子の上に四角い白いバター入れ(バターナイフ付き)と、薄紫のコスモスの花が一輪置かれてあった。
(花?)
クラティスは、不思議に思いながら、バター入れとコスモスをテーブルの上に置いといた。
ソフィアの為にほんのり甘い温かいカフェオレを作ってあげた。(水玉模様の小さなマグカップに) そしてパカッと、バター入れのふたを開けてみて鼻をヒクヒクさせて匂いをかいでみた。
中には世界最高級のバターエシュレバターがたっぷりと入っていたのだ。
香り高いバターで、一回友達にもらった事あるのですぐにわかった。
「クラたんおはよ~」
フアー!と大きなあくびをして、二階からソフィアがまぶたをこすりながら起きてきた。
「おはよう」
クラティスは、粉末のコーヒー豆の入ったコーヒーカップにお湯をそそいでスプーンでかき混ぜながら言った。
「そうだお前昨日バター買ってきたのか?」
ソフィアは、席についてからキョトンとした顔で言った。
「へ?ソフィア、昨日お菓子しか買っていないよー。バターなんか…」
そう言って、ふとバター入れを見てみると、バター入れの脇に薄紫のコスモスが置かれてあった。
(このコスモスどこかで見たような…あ!)
ソフィアは、昨日小人と出会って、その小人の赤のとんがり帽子に薄紫のコスモスが付いていたのを思い出した。
(もしかして、小人さんのお礼?)
ソフィアは、ボソッとつぶやいた。
「…小人さんのお礼かもね。」
「なんか言ったか?」とクラティス。
ちょうどその時、ポン!と魔法トースターからきつね色のトースト二枚とび出した。
「おっ。焼けたな」
クラティスとソフィアは、トーストを自分のお皿に乗せ、熱いうちに小人からもらったバターを塗った。
そして、二人は「いただきます」と言ってからトーストを食べ始めた。
ソフィアは、バタートーストを食べて窓から見えるオレンジの月を眺めながら、心の中で呟いた。
(ありがとう。小人さん。また会おうね)終
「ハロウィン!」二回目の話です。
前回の話読んでくれた方ありがとうございます。
フランケンシュタインの女の子と小人の話を書いてみました。
ぜひ読んで感想を下さい。一話完結編です。