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守り神人と呼ばれた一族  作者: おにまる


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3/3

我が生き様はここにあり!

儚くも切ない物語です。ハンカチをご準備してお読みください。


 いつしかそのダイモン・アシュラは、穴倉から這い出てくる魔物を退治する番人になりつつあった。もともと戦闘狂のアシュラにとって闘う事は楽しみであり、強いモノが出てくるほどに胸躍った。時にはその戦闘により穴倉の周りの木々はなぎ倒され穴倉の周りは開けた地になっていった。


島民たちは鬼神様と言ってアシュラを崇める様になっていき、ついには穴倉より少し離れた処に立派な御殿が建てられ、そこに住むことになった。


そしてついにはアシュラへの貢ぎ物の巫女として使わされたその女も一緒に住まう事になってついには祝言が挙げられた。そして名を・・・


大門 阿修羅(だいもん あしゅら)と改めた。


大門阿修羅と大門キク。


それが、今やどこにも残されていない大門家の始まりであった。

二人は心を通わせあった。キクから言葉を習い、阿修羅も人の言葉を理解するようになりたどたどしいながらも言葉を話し、島民の生活にも顔を出すようになった。


阿修羅はこのキクと生涯を添い遂げる誓いを決意した。


順番が前後してると思われるかもしれないがようやく人の言葉を理解し人の祝言を呑み込めたのだ。


その決意の表明ともいうべき証を残そうと思い右腕に「大門 阿修羅」左腕に「大門 キク」と村の彫師に彫ってもらった。キクもそれを喜んでくれた。


キクはそのお祝いにと、この島の特産の一つである水晶を数珠繋ぎにしたブレスレットを阿修羅へ贈った。飾り紐に黒と金糸で編み込まれた紐が付いており阿修羅もそれを気に入った。


そしてついには奇跡が起こった・・・。


人とデーモンの子が誕生した。それはもう元気な男の子だった。


キクは大層喜んだ。阿修羅も初めての自分の子を持ち感動に打ち震えていた。

「阿修羅様、どうか抱き上げて下さい。」


「鬼である我が、触れてもよいのであろうか?・・・」


「阿修羅様は、この子のお父上になるんですよ。」


震える手でその子を抱き上げる。瞳は琥珀色をしていた。肌は白く母親似か。角は生えてなく見た目は人の赤ん坊と何ら変わらず。


「角は生えてないな。_良かった。」


この子は人として強く逞しく育ってくれと言う願いをかけ名を太郎となずけた。


大門太郎。


大門家に今も名を遺す初代当主の誕生である。なぜ太郎が初代なのか?それを知るにはもう少しお付き合いください。



この島には数年に一度海賊が上陸する事があると言う。大門家の穏やかな生活が始まりつつあった時にもそれは、現れた。


御殿に島民が息を切らせながら急を告げてきた。


「助けてください大門様!。か、海賊が港に!」


阿修羅は急ぎ港へ駆けつけた。そこは島民たちが海賊から叫び声を上げながら逃げ惑う悲惨な状況が繰り広げられていた。


その状況を見た阿修羅は怒りの表情で、一番近くの海賊の元へ瞬間移動の様に間を詰め頭を握りつぶし阿修羅は吠えた。


「この野蛮人どもめぇえええええ!」



「ひえええええ 鬼だぁああああ」



交戦する海賊を一撃で粉砕していくうちに海賊達は、これはかなわぬと船へと逃げ始めた。


何度か海賊どもをこれでもかと言うほど追い払ううちに海賊どもの間で鬼の住まう島として噂が広がったのか全く来なくなった。


島民たちは改めて鬼神の力の凄さを知るとともにこの島の守り神としてさらに崇める様になった。



それからは大穴こと『奈落』の番人として魔物を退治しながら島の平和を守る鬼神様として穏やかな日々が流れ太郎もすくすくと大きくなっていった。やはり半分鬼の血を引く太郎の強さも桁外れであった。阿修羅から闘いの基本を学びつつ『奈落』から湧き出る魔物も倒しながら強くたくましく成長していくのであった。


阿修羅は討伐対象の魔物によっては、その体格を三倍にも大きくし闘う事もあった。


「私も父上の様に大きくなったりすることは出来ぬのでしょうか?」


「太郎はそのままでも十分強い。そのままの姿で人として島民を守るのだ。」


この時から阿修羅はたびたび高台より海を眺める様になった。

長くこの地で過ごすうちにこの海の先には大陸がありそこには多くの人たちが居ることも学んだ。ここの島民たちの多くは阿修羅を崇めているが、人間は人並外れた強い力を持つ者を非常に恐れることも知る。


この恐れの裏返しがキクや太郎に降りかかる事は無いだろうかと考える様になった。阿修羅は人ではなく鬼なのだ。何か一つ違えば人は人外なるものを恐れ排除しようとすると言う事を知ったのだ。


月日はあっという間に流れ、今ではすっかりこの島の生活になじんだ阿修羅。太郎も20歳になりもう立派な青年となり、その強さは父親に引けを取らぬほどに。


闘い方を、技を阿修羅の持つ全てを太郎へと伝授した。それと比例するように『奈落』は強い魔素を出すようになり魔物の強さも強く強大なモノが出てくるようになっていった。



_そしてついにはその日が来たのだ・・・。




『奈落』より出でたるは、おそらく阿修羅と同格の【オーガジェネラル】その個体名を【バサラ】。それが【オーガ】の軍を率いて現れたのだ・・・。


「お前は、『バシュラ』では無いか?」


「・・・・」


「何をしているのだ?まだこの地は燃えておらぬぞ。それにそれは人間か?戯れておるのか?」


「我は大門阿修羅なり。その息子。太郎だ。」


「アハハハハハハハ。 _バシュラよ。血迷ったか?。」


阿修羅は一瞬考えた。太郎と共に闘えば撃退することも可能ではないかと。だがしかし阿修羅が選んだのは・・・



「_太郎よ母を連れて逃げよ。」


「父上!。共に闘いまする!」


「二度は言わぬ。この阿修羅の命令だ。退け!」


「くぅ」


一言零しながら歯を食いしばった太郎は、御殿へと走り戻った。



「親子の別れはすんだのか?」



「これ以上の言葉は無粋。いくぞ!」



そこからは激闘だった。阿修羅と同格のバサラを相手にしながらオーガ達を撃破していく。お互いの拳の衝撃波で凄い轟音があたりに響きわたりそれが島民たちに緊急事態の知らせにもなった。


急ぎ御殿に戻った太郎は母を抱え上げ村へと走り島民の皆に船で一旦避難するよう呼びかけた。


「太郎よ、お父上は無事なのですか?。」


「大丈夫です。父上は誰よりも強い。母上が船で離れたら私も父の元へ向かい闘いますゆえ。」


そういって島民と共に母親を船に乗せ避難したのを見送ると太郎は急ぎ父の元へと走った。そこには壮絶な闘いを繰り広げた痕跡と今なお、息も絶え絶えに無数の【オーガ】達を葬りながら闘い続ける父、阿修羅の姿があった。だがしかし多勢に無勢。数人の【オーガ】とバサラを残し力尽き倒れる寸前であった。


それを目撃した太郎の中で何かが弾けた。


「グゥウウウウウオオオオオオオオオオオ!」


太郎の中で眠っていた鬼の血が眼を覚ました。


その体躯は3倍の6mほどになり、肌は赤く紅潮し、その瞳は真紅の強い光を放っていた。


その鬼の一歩は瞬間移動のごとく間を詰め、放たれる一撃は大砲のごとし。


残った数匹の【オーガ】達を全て一撃のもと葬り、残すはバサラのみ


「ほぅもしかしてバシュラより___」


バサラが喋り終わる前に大砲のごとき一撃を叩き込み『奈落』の奥底へと叩き込んだ。太郎は完全に自我を失っていた。


眼前の敵を全て倒して尚、治まらぬ、滾る鬼の血。


その矛先を探すその真紅の瞳の前に立つ阿修羅。そしてしっかりと我が子を抱きしめ駄々を捏ねる子をあやす様に。


「もう終わったのだ。静まるのだ。」


それでも暴れようとする太郎。その眼に映る全てを無に帰すまで止まる事を知らぬかのように。


「グゥウウオオオオオ!」


「戻るのだ太郎。鬼になってはなら__!」


太郎のその腕は阿修羅の胸を貫いていた。


_プシュー


ようやく自我を取り戻し元の大きさに戻る阿修羅と太郎。


「あ・・・ああ・・・・あぁ・・・・父上・・・・」


「_良いのだ太郎。_母は無事か?」


コクコクとうなずく太郎の頬を優しくなでる阿修羅。


「すまぬが急ぎ母を、_キクを呼んできてくれるか?」


またもやコクコクとうなずき急ぎ港へと飛ぶように駆け、母を呼び戻し抱え上げ父の元へと戻った。


「父上、母上を連れてまいりました!」


「あぁ・・・阿修羅さま・・・・」


「_どうやら_お別れの様だ。」


「そんな父上・・・誰よりも強い父上は不死身のはず。」


「良いのだ。_これは我が望むことなのだ。_我は『奈落』より這い出た鬼。それを倒すは大門の者でなくては。」


「そんな・・・・嫌です生きて下さい!父上。」


「もう決めたことだ。そして最後の妖力を使いこの島民の記憶から我の存在自体を消し去る事にする。_許せ。お前は人として、大門太郎としてこの島を守れ。」


「そんな阿修羅様。_あなた様の事を・・・忘れる事など出来るはずがありませぬ!。」


「すまぬなキクよ。ここでの生活は悪くなかった。_今まで感謝する。もし万が一お主より記憶が消せなくても我が名は後世に残さぬように。_意味は分かるな?」


 コクコクと頷くキクは阿修羅がここ最近、鬼としての自分がここに居てもいいものだろうかと悩んでいたのを知っていた。それがキクや太郎に何か災いとして降りかからないだろうかと・・・逞しい太郎と言う後継者が育った今では、『奈落』の事は任せられるしもう・・・


そういって太郎の肩をつかみながら立ち上がる阿修羅は、二人の姿をしかとその眼に焼き付けた・・・


「_太郎よ、母の事を_頼んだぞ。」


そして、_最後の力を振り絞り。


_天に向かって拳を放った。


「我が生き様はここにあり!」


それは島民全てに聞こえるような、大地を響かせる様な大声であった。まるで阿修羅はここに居るぞと島民に言っているような。最後に皆にお別れの挨拶だったのかもしれない。


 その拳から放たれた力は天高く舞い夜空に花火の様にはじけ・・・島全体を覆った。


その降り落ちる残り火は全ての島民の記憶から、チリチリと阿修羅の存在した軌跡を焼き尽くした。


太郎に残る阿修羅の存在の記憶も持って行った。それは阿修羅の優しさの表れだ。父親を手に掛けた記憶などあってはならぬ。


只一人を残して・・・


「あぁ・・・阿修羅様・・・_私の阿修羅様。・・・」


「_すまぬ。」


そう言って阿修羅は眼を閉じた。


この島へ来てキクと出会い。そして人のぬくもりを教えてくれたその穏やかな日々。キクと過ごした幸せな日々の記憶だけは奪う事が出来なかった。それがさらにつらい事になるという事も想像できるほどにやさしき心を持つようになった阿修羅。


それを天秤にかけるも忘れてほしくなかったのかも知れない。


「あぁ・・私は幸せ者でした。あなたの人以上に優しい_その心根を持った鬼が居たという事は死ぬまで忘れませぬ。_私だけの心の中で《《永遠に》》生き続けますから・・・。」



太郎も含めて《《キク以外》》は、この瞬間、深い眠り落ちた。



_そして阿修羅という鬼の存在は全ての島民の記憶から消え去った。


それからは大門太郎が、『守り神人(もりびと)』と呼ばれ『奈落』から這い出てくる魔物を討伐する島の守り神になった。それは大門太郎の次の世代へと代々引き継がれていく事になる。


それは阿修羅が願った事であり、大門家は人としてこの後もずっと続いて行けばそれで幸せだと思ったのだ。阿修羅の生きた軌跡は語り継がれぬとも、確実にその証は後世まで続くのだ。


それほどまでに人間を愛した心やさしき鬼がいた。


_だが始まりが鬼であってはならぬ。鬼を討つのは大門の家の人間でなければ・・・





_もりびと鬼神となりて鬼を討つ~♪


この島の者達がまるで念仏の様に口ずさむ言葉。




 その後キクは、海が見渡せる丘の上に名も無き塚を建てた。阿修羅が好きだったここからの絶景を見下ろせる場所に・・・





 「阿修羅様。今日も海が綺麗ですね。」



_クッククク・・・。






これで始まりの、誰にも語り継がれぬ物語は終わりますが、どうかこの記憶は消去して頂き他言無用でお願いします。







お付き合いいただきありがとうございます。


面白かったと思う方が一人でもいらっしゃれば幸いです。


この後は現代の『守り神人』を絶賛下書き中!


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