語り継がれぬ物語~穴を抜けたらまばゆい蒼穹
よろしくお願いします。
2/3話です。今回は鬼の視線。
_sideバシュラ
「おぉ、なんと美しい。」
我デーモンのバシュラなり。その目的はこの地を支配する事。なぜだかそれだけが頭の中を駆け巡る。穴から出た我は、空を見上げた。木々の木漏れ日の先には蒼穹が広がっていた。
さぁこの地にはどのような強者が待ち受けているのか。この地には闘うに値する者は、存在するのか。
すると目の前に戦う前から眼を合わせただけで戦意喪失している生き物を発見。手には武器らしきものを持ち得ているので闘う意思はあったのであろうが・・・
すでに決しておる故、値なし。
我は弱きものを弄る趣味は持ち合わせてはおらぬ。
それから少し周囲を見て回ったがなんと小さな世界なり。
我は出てくるところを間違えたのであろうか・・・。
この地は我の足で歩いて端から端まで行くのにそう時間はかからないくらいに小さい。
しかし、_絶景なりこの世界!。
高台から見えるは光で煌めく果てしなき青い水の群れ!。
少しこの小さな世界をくまなく見て回ろうと思い、集合しているその間近までいき観察したが、どの生き物も戦うに値する者は無し。
残念無念なり・・・。だがそれなりに知性を持ち合わせ、皆協力しながら精いっぱい生きている様子だ。その生き様は美しい!。獣の類の集まりならばすぐに蹴散らし見飽きてしまうが・・・
途方に暮れて歩いていると美しき生き物を発見。それに何やら良い香りがする。
ただ残念なのは闘う意思は微塵も感じられず、怯えている様子だ。
その生き物を近くまで行きまじまじと視る。艶のある美しい黒髪に、透き通るような白い肌。その曇りなき黒き瞳は吸い込まれるように美しかった。
「おい、お前に名はあるのか?」
するとその美しい生き物は何やら果実を差し出してきた。良い香りがするのはこれか?一口齧るとこれがまた美味い。そしてまた穴倉に戻った。
穴倉を寝床に偶に這い上がって来る獣を肴に、そこな生き物共の生活を観察する事数日。するとまたあの美しい生き物が何やら籠を背負って穴倉にやって来た。
_あの美味い果実か。それに・・・なんだこの美味い食い物は!。穴倉より出でる獣とは一味も二味も違う!。
「おい、なぜ我にこれをくれるのだ?」
「&%!#キク●:@◆」
何を言ってるのか全く分からん・・・。_我に手を向けているから名を聞いているのか?
「_デーモンのバシュラなり」
「ダイモン・アシュラ?」
まぁすこし発音は違うが、まぁよいそうだと頷く。
今度はその生き物は自身の胸に手を当てながら何やら繰り返す。
「キ・ク」
「お前はキクと申すのか?」
そうすると花が咲いたように明るい顔色でうなずく。
しばらくすると何かを言い残し、その美しき生き物は去って行った・・・
が。数日おきに穴倉へ食い物を持ってきてくれる。そのうち我はなぜだか、その生き物が気になって仕方なくなってきた。我は強き者以外に興味を持ったことは無かったというのに。
言葉は通じぬが何度か会ううちに、その顔から怯えの色は消え、花が咲いたような明るい顔色でやってくるようになり、それがまた一層美しく思えた。
そうやってしばらくの日々が過ぎるうちに我はその生き物が来るのを楽しみにしていたのかもしれない。
ある日その美しき者は黒い錦を渡してきた。広げてみると美しい黒に黄金で輝く何やら文字が入っており我はこれが気に入った!。その者は我にそれを着飾ってくれた。何やらこの世界の生き物になった様で滑稽だった。
「クッ・ククク・・・」
気が付けば口角が上がり息が漏れていた。
その者も花が咲いたような顔色で心地よい軽やかな声が_我の耳をくすぐった。
「わ・ら・っ・た!」
「ワ・ラ・タ?」
なぜだか心が安らぐ。そうか、_これがワロタと言う事か!。
その者の真似をして大げさにやってみた。
「ク・クク・・・。_アッハハハハハ!。」
「あはははは」
その者の心地よい声色と一緒に大声でやってみるとなぜだか心が弾んでいく・・・。
一時期はこの穴倉の奥へ志半ばで恥を忍んで戻ろうかと思っていたが。
_このような生き方も悪くない。
お付き合い頂きありがとうございました。
後1話楽しみにお待ちください!




