語り継がれぬ物語
3話読み切りですがよろしくおねがいします。
これは、『守り神人』である大門家の家系図にも残っていないある者のお話です。
日本の西の果てに南北20km、東西18kmの小さな島がある。通称鬼ヶ島。何故そう呼ばれるのか?。いつからそう呼ばれているのか?それを語るには避けられない人々の記憶からも消された、儚い物語に少しばかりお付き合いください。
それは今から200年以上前の事。日本の西の果てにある小さな島の中心に突如ぽっかりと穴が現れました。
「なんだべ?こんなところに穴が開いている。」
「アナグマの巣じゃねーか?」
「まぁ、こんな森の中だしな。」
この島には千人程の島民が住んでおり、自然に恵まれ土は良く、穀物は育ち、海の幸にも恵まれ自給自足の生活サイクルが確立されていた。人は争う事も無くのんびりとした島だった。だが突如島の中心にぽっかりと開いた穴の出現によって風雲急を告げる事になろうとしていた。
突如現れた穴は不思議な事に、次第に大きく広がり始めた。恐る恐る中を覗き込むとその先は斜め奥にどこまでも続いている様子だった。
「どんどん大きくなってねぇかい?」
「もしや熊の巣穴か?」
「アブねぇから近寄らねぇ様に皆に言うべ。」
島民の間では、不気味な穴倉の話題で持ち切りだった。ある者は大蛇が住んでいるのでは?等と見もしない噂話があちらこちらで囁かれ始めた。
が、その穴は噂話だけで終わらなかった・・・
しばらくするとその森で人間の子供位の大きさの小鬼を見たと言う噂が広まった。きっとあの大穴から出て来たんだろうと島民は話始めた。
_ギャギャ!
穴から這い出てきた小鬼は作物を食べたり、家畜を襲うようになっていった。これまでその様な大事件は全く無かった村であったため皆はこの先小鬼がどんどん増えて住処も奪われるかもしれないと恐れた。そこで島民達は集会を開き対策を話し合った。もうだめだ!。逃げるしかねぇ!。そんな声が上がる中、漁師や若者の腕っぷしの強い者達から声が上がった。
「腕に覚えのある者で自警団作って退治するべ!」
俺たちで出来ることはやってみようと、若者達で自警団を結成し穴の周辺を見て回り小鬼を退治する事にした。
現在でいう所の【ゴブリン】である。腕に覚えのある若者達が取り囲めばそれを倒すのはそう難しい事では無かった。そうやってゴブリンの数は減ってきた。
だがだんだんイノシシの化け物や中型の鬼等も出現し始めたが、罠を仕掛けたり、槍を鍛えたりしてまだどうにか自警団で対処出来ていた。
その内にその穴から妙な瘴気が漂うようになり島民たちは一層の警戒を高め見張り小屋や櫓を立て島民の皆に警戒を知らせたりしていた。
_そして恐れていた事が、出て来てはならない《《モノ》》が、とうとう出てきてしまったのである。
それは、明らかに今までとは規格外の化け物。まさしく_鬼とも呼べるものが・・・
自警団の若者たちはそれが穴から這い出て来るのを見た時に戦慄したという。
束になって戦っても_勝てる見込みが見当たらなかった。
その恐ろしい鬼は、『デーモン』でありその個体名を『バシュラ』と言う。身長は2m近くあり、体格は筋肉隆々。その眼は真紅の瞳でギラツキ、額には二本の角。
それは穴から出てきてしばし空を見上げていた。その後、辺りをきょろきょろとし、そして何かを考えるような素振りも見せ、知性も持ち合わせている様子が伺えた。
その一部始終を見張り小屋より見ていた自警団の若者の一人は村に伝令へ、一人は勇気を出しその鬼の前に飛び出ていった。決死の覚悟で出た若者であったが・・・
_その鬼と目が合うなり腰を抜かし、動けなくなった。
生物としての格の違いを体が一目で受け入れてしまったのであろう。
だがその『バシュラ』は、チラリとその青年を見たがすぐに興味も失せたようにどこかへと歩いて行った。それからそれは、何かを探すように島のあちらこちらをうろついている様だった。
「ひえぇえ、お助けを!」
「・・・」
ある時は、島民とばったり出くわす時もあるが襲ってくる訳でもなくじっと見た後にまたどこかへと歩き去って行くと言う。
「こちらから攻撃さえしなければ見逃してもらえる様だな。」
「触らぬ神に祟りなしじゃ。島民に言い聞かせよう。」
決して鬼を見かけても戦おうとするべからず!
ある時は山の高台より海を眺めているのを目撃されたり。ある時は村の中に現れ人々の生活を観察するように見て回ったりと。恐ろしいその見た目を覗けば害は無いようだと・・・この小さな島は話題も少ない。だが今は島民の間で四六時中その話でもちきりだった。
「ひやっ!」
『バシュラ』が森の中を歩いていると一人の女性とばったり出くわした。
女が恐怖で立ちすくんでいるとそれはゆっくり近づいてきて、クンクンと鼻を鳴らせながらその女をじっくりと観察するように周りをぐるっと一回りして、女の正面に来てじっと顔を見つめた。
「&%#▼■〇:*」
その女には食い物を持ってないかと言われた様な気がして背中のかごから果物を取り出しゆっくりと差し出した。すると『バシュラ』はそれを受け取りムシャムシャとかじりながら大穴のある方へと戻っていった。
村へ戻った女がその話をすると、定期的に貢物を持って行ったらいいんじゃないかと言う話になり、誰がそれを持っていくかと言う話になったが、初めて鬼に話しかけられたその女が選ばれた。
そして貢物を届ける最初の日を迎え女は恐る恐る大穴に果物や魚や肉の入った貢物を背負ってゆっくりと近づいて行った。
その穴倉からはヒューという風の音が聞こえてきていて女はその不気味さにおじけづきそうになる。
しかし島民達から頭を下げられ、その期待に応えるべく勇気を振り絞った。
一歩、また一歩とその大穴の近くまで震える足を進めると女は震える声で呼びかけてみた。
「_あのぅ~、_鬼さんいますかー・・・」
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