第一章 未開の地2
第二節 調査
ミリアは実に優秀だった。
人工知能とはいえ、市販されているドロイドたちよりも限りなく【人間】に近いおかげで、着眼点や視野の広さが人間よりも秀逸だったのだ。
ジェイクはそんな【相棒】を頼もしく思っていたし、何より、家族だと思っていた。
『ジェイ!この惑星、やっぱ不思議だわ~。限りなく地球に近い環境にあるけど、太陽は存在しない。なのに【昼と夜の概念】があるのって変じゃない?』
そう。調査していて気づいたことだが、この惑星に太陽はない。
どんなにレーダーを駆使しても、太陽に相当する惑星も恒星もないし、第一、昼も夜もあるのだが、気温の変化はまったくない。
まるで、コロニーにある人工庭園のようだった。
ここはおそらく、【春】が固定されているのだろう。
ならば、人工惑星なのか?
それだと、座標軸がないのはおかしい。
座標軸がない=未開の惑星というのが基本だからだ。
ここは、明らかに前人未到なのだ。
『どうする?ジェイ。他に何か手がかりになりそうなポイントを探す?』
ミリアにも若干、倦怠感があるようだ。
確かに、ここは草原地帯だからか何も目ぼしい情報はなかった。
見渡す限り草原というわけではない。
やや距離はあるが、山々も見えるし、細いながらも道だってあるのだ。
まずは道なりに移動するのが筋だろう。
「ミリア。船をポイント0で固定し、記録しておいてくれ。その後、船のステルス機能を展開。移動用のRBにキャンプ道具は積んでおくから」
ジェイクはそういって、船から三人乗りのRBを降ろし、必要な荷物を積み始めた。
なかなかの短時間で準備は整った。
ミリアは実によい相棒だ。
自分のAIにいろいろ機能を移したようだ。
簡単なレーダーにもなるし、船の遠隔操作も可能らしい。
『出発です~!』
RBの操縦もミリアが引き受けてくれた。久々だからだろうか。テンションが高い。
この惑星を見つけるまで3ヶ月ほど宇宙空間にいたからだろうとぼんやり考えながら、ジェイクはこの不思議な惑星の景色を見つめていた。
まずは、向こうに見える山々を目指して。