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アルファガールとオメガボーイ  作者: 命知叶


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できた関わり


「ねえ、きら?」

ぼんやりしている和煌(あきら)を覗き込むようにしていつみが見てきた。はっとして苦笑いを浮かべる。

「ごめん、私やっぱりちょっと、ぼーっとしてるね」

「そうね。やっぱあの子に会ったから?」

問われてまた考える。

「‥うん、そうかもね。でも‥男子、だったじゃない?」

「うん、結構オメガっぽい男子だったと思う」

「‥‥男子、なんだよねえ‥」

再びおにぎりをもしゃもしゃ食べながらいつみが尋ねた。

「男子は嫌なの?」

「‥‥う~ん‥ほら、うちってベータの両親じゃん?」

「ああ、そうだったね」

「だから、なんていうか、第一性に引っ張られちゃうんだよね。あの男子と番になるなら、私は産ませる方になるじゃん?」

「あ~‥そう、だねえ」


和煌(あきら)は身長171㎝、肩に着くか着かないかくらいの髪は黒くさらさらとして艶やかだ。顔立ちもどちらかと言えばきりっとした美人顔で、パンツスタイルで歩いているとよく男性に間違われる。スタイルもすらりと均整がとれているせいか目立つ方だ。ベータの両親から産まれたとは思えないほど「アルファらしいアルファ」なのである。

一方、母が男オメガ、父が女アルファという家庭で育ったいつみは、その家庭が当たり前で何も疑問に思っていなかった。だが、一般的なベータの家庭は女性が子どもを産む。その中で育ってきていれば、「女性」である自分が「産ませる」側になることに和煌が戸惑うのも仕方がないことかもしれない、といつみは考えた。


和煌は俯きながらぼそぼそと話している。

「まださ‥なんか、かわいい女子オメガだったらイメージできるんだよね。‥正直、あの‥夜のあれ、とかもわかるんだけど‥男子のオメガをどうこう、って考えるとさ‥」

「‥う~ん‥」

いつみにとっての「普通」が、和煌にとっては『普通」ではないんだな、というのは、少し硬い表情になっている和煌の顔を見てもわかった。だが、せっかく滅多に出会えない「相性合致フェロモンの相手」であるのに、それだけで避けてしまってはもったいないようにいつみには思えた。


和煌の手の中のサンドイッチは一向に減っていかない。それを見ていつみはぽんぽんと優しく和煌の背中を叩いた。

「きーら、考えすぎないで!幸いあの子は二年生だしそんなに接点もないでしょ?今すぐ色々と結論を出さなくてもいいと思うよ。後‥よかったら今度うちの両親に会ってみる?お父さん、女性アルファだし何かきらの参考になるかもだし!」

「あり、がとう‥」

優しくそう提案してくれるいつみに、ぎこちない微笑みを浮かべながら和煌はサンドイッチを胃の中に落とし込む作業を続けた。



だがしかし。

あの出会いからわずか二日後、文化祭実行委員会の場で再び二人は出会ってしまった。

和煌(あきら)は実行委員長、耿良(あきら)は代理の実行委員という立場での邂逅だった。




「ぶんかさいじっこういいん?」

聞きなれない言葉に、思わず耿良は復唱した。クラス委員である田嶋は、うん、と頷いてから困ったように笑った。

「11月に文化祭っていう学校のイベントがあってね。各クラスに委員がいるんだけど、このクラスの実行委員だった瀬野君がほら、怪我で入院しちゃったから‥今このクラスには実行委員がいなくて」

耿良はぱちぱちとせわしく瞬きをしながら田嶋の話を聞いていた。田嶋は申し訳なさそうな顔をしながらも切り出した。

「他の人も色々委員や係もやっているし、学校の事を知るって意味でも佐藤君にやってもらえたらと思って。お願いしていいかな?」

「‥え?やだけど」

まさかにすぐさま断られるとも思っていなかった田嶋は、きょとんとした顔をして、「え?」と聞き返してきた。耿良はすぐさま反論した。

「いや、俺転入してきたばっかりで色々わかんねえし、いいん?とかって言われても何したらいいかもさっぱりだから。出来ないと思う」

田嶋は、う、と言葉に詰まってちらりと横にいる香川の方を見た。香川は副クラス委員である。田嶋に無言のヘルプを飛ばされた香川は、ハア、とため息をついてからじろっと耿良の方を睨んだ。

「佐藤君さ、これってほぼ決定事項だから。他の人もそれぞれ色々やってるんだから文句言わないでやって。学校の事なんか委員やってるうちに覚えたらいいでしょ」

「何だよそんな乱暴な」

香川は面倒くさそうに鞄を取り上げ方にかついだ。鞄についているぬいぐるみやキーホルダーがじゃらじゃらと音を立てる。

「やりたくない、っていう意思表示すんのはアメリカっぽいかもしんないけど、ここ日本だから。これはほぼ命令だと思って。あんたもクラスの一員になったんだから文句言わずにやんなさいよ」


そう高い声で言い捨てると香川はずかずか歩いて教室を出ていった。残された田嶋も申し訳なさそうな顔をしながらも。「ごめん、他にできる人がいないから‥頼むね」と言い置いてそそくさと教室を出ていく。

頭の中に、はあ?と大きなクエスチョンマークを浮かべていた耿良だったが、はっとしてまだ残っていた担任教諭に食ってかかった。

「先生、どういうこと?無理だよ俺何もわかんねんだし!」

しかし食ってかかられた方の教諭は、穏やかに笑って答えた。

「ま、何事も経験だから。わからないことは聞けばいいし、実行委員長も面倒見のいい子だから大丈夫だよ。頑張って!」

担任教諭はそう言って教室から出て行ってしまったのだった。


そうしてやってきた会議室でまたあのアルファと出会ってしまったのだ。

身体がぞわぞわとして、何かが体内を駆け上ってくるような感覚がする。だが今回はこれから委員会が実施されるということもあり、お互いに逃げ出すわけにもいかない。和煌も耿良も、それぞれ自分が持っている頓服の抑制剤タブレットを、こっそり口の中に入れて噛み砕いた。


実行委員の中には和煌と耿良以外にも、アルファが三人、オメガが一人含まれている。二人のフェロモンの変化をこの四人も感じ取っていたようだったが、とりあえずこの場では気づかないふりをしてくれたようだった。抑制剤が効いたこともあり、その後特に混乱なく委員会を終了できたので、和煌はほっとした。

散会してから書類をまとめ、会議室を出ようとしたところで和煌は声をかけられた。


「よう。ちょっと、話いいか」


あの、オメガの男子生徒だった。




お読みくださってありがとうございます。

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