進学校は部活も強い!?
午後の授業は、体育館で部活動紹介を行った。部活動にも力を入れているこの学校は、有名スポーツ選手などを排出している学校でもある。
最初は文化部の吹奏楽部から紹介が始まった。新しい環境に馴染めていない一年生達を、音色に一切のブレがない鮮やかな演奏でほぐしていった。そのおかげか、どこか一年生の顔が強ばった表情から緩やかなものへと変わっていった。
吹奏楽部の次は、美術部、茶道部、演劇部などの文化部の部活動紹介が次々にされていった。
そして次に、運動部の部活動紹介が始まった。この流れを見るに、富士谷学園の部活動紹介では、文化部の次に運動部を紹介するという流れが決まっているらしい。運動部の最初は野球部で、部員たちで笑いを取るような紹介の仕方をしていた。その寸劇に生徒たちは勿論、教師陣の中でも笑いが起こっていた。
野球部の次は、バレー部の部活動紹介だった。先程までの笑いが静まり、ステージに視線が向けられる。その視線の先には、青野や須藤などの女子バレーボール部の部員達がいた。
「頑張れよ」
俺の応援がまるで聞こえていたかのように、気合いの入った円陣が始まった。静かだった体育館には、合唱部にも引けを取らない美しい声と、他の運動部にも負けないような大きな声で円陣を響かせていた。円陣をし終えると、体育館はバレー部を称えるような拍手が巻き起こった。拍手が静まり返った後、須藤が何事もなかったかのように淡々と部活動紹介をし始めた。その須藤らしい姿に、思わず笑みがこぼれてしまう。
「嘉人君、バレー部上手くいって良かったね!」
そんな俺の様子を見ていたのか、隣に立っていた黒葛原さんが素敵な笑顔で声を掛けてきた。
「そうですね。彼女達ならこれくらい大丈夫だと思ってはいましたがね」
「そ〜う?嘉人君の足、凄く震えてるけど?」
「き、気のせいです︙︙」
「ふふっ」
バレていた。俺の話もまともに聞かないアイツらが、あんな大勢の前で部活動紹介ができるか不安で心配していたことが。しかし、アイツらは俺の予想を良い意味で裏切ってくれた。本当に頼もしい連中だ。
そんなことを思っている内にバレー部は舞台袖へと下がっていき、次の紹介をするためにバスケ部が前へと出てきていた。事前に用意されていた待機場所に戻ろうと、バレー部達が早足で教師陣の後ろを通っていた。
「あお︙︙」
俺の後ろを通り過ぎようとしていた青野を見つけ、先程の紹介を褒めるため呼び止めようとしたのだが、清々しい顔で笑っていた顔を見て話しかけることをやめた。
「良かったぞ」
そんな俺の言葉は、体育館中に響き渡っている声の中に消えていった。