好きな人からのお誘い!?
数時間の会議を終え、会議室から出る。外を眺めると日が沈み、綺麗な夕焼けを拝めることが出来た。
そんな黄昏た俺を尻目に、ポケットの中でスマホが振動する。確認すると、高校の同級生から電話がかかってきていた。特に出れない用事もないので、電話に出ることにした。
「もしもし?」
「あのさ、いけないことだと分かってるんだけど、お金か────」
「お金なら貸さねーぞ」
「頼むぅぅうううう!!!!今月ピンチなんだァァァんんああん!!!倍にして返すからっ!」
「知らねぇーよ!じゃあな!」
先程までのうるささが嘘かのように、辺りが静まり返る。先程のうるさい電話の主は、高校の頃同級生だった、石田稜と言う、ヒモをしている男だ。俺の人生の中で、これとつるんでいたことは、唯一の黒歴史である。そのことを忘れさろうとするかのように、長い階段を降りていく。降りた後、そのまま職員室に向かい、自分のデスクにある鞄を整理する。この後の仕事は何も無いし、定時で帰るとするか。そう思い職員室を出ると、また石田から電話が掛かってきた。
「もしもし?金なら貸さねーぞ」
「金はいらん。嘉人この後空いてる?英翔も予定空いてるし、三人で久しぶりに飲みに行かない?」
「それは行く」
「よし決まり。じゃ、LINEで集合場所送っとくね」
「分かった」
そう言って電話を切ると、すぐにLINEが届いた。飲む場所は、いつも三人で集合する恒例の居酒屋だった。時間もあるし、一旦家に帰るか。そう思い玄関に向かう最中、緑川と咲夜さんが二人で帰っているところに遭遇した。
「あっ、嘉人君も今帰り?」
「はい、そうですけど」
「この後飲みに行くんだけどさ︙︙嘉人君もどう?」
好きな人からの嬉しいお誘い。今すぐに一緒に行きたいのだが、先客がいるので、断るしか無かった。
「すいません、この後予定があるので────」
「────もしかして︙︙彼女さん?」
『彼女!?』
あまりの驚きに、何故か緑川とハモった。
「咲夜さん、からかうのはやめてくださいよ」
「そうですよ!先輩に彼女なんて出来るわけないじゃないですか!」
「あらら、二人とも顔真っ赤にしちゃって、かっわいい〜!」
『してません!!!』
今日はなんだか、緑川と息がピッタリだ。
「ごめんごめん、それじゃ、気をつけて帰るのよ!」
「お疲れ様でした」
そう言うと、咲夜さんは前を向きながら、手をひらひらと振っていた。緑川は顔を下に向けたまま、無言で帰ってしまった。
「︙︙帰るか」
新学年初日ということもあり、なんだか疲れてしまった。酒でも飲んで、気分をスッキリでもさせるか。俺はそんなことを考えながら、軽い足取りで駅に向かうのだった。