乙女心は分からない!?
あの後俺も体育館にに向かい、始業式に参加した。
約一時間半の始業式が無事に終わり、教室に戻ってくる。何故だか怒ってる緑川と、頬を膨らました金山と青野が、生徒の中で揉まれながら戻ってきた。
「さ、さぁ、新しい教科書を配りますよー!」
「なんか、よしとテンション可笑しくね?」
「おじさんだからじゃね?」
「そこ、聞こえてんぞー」
そんな茶番をしながらも、俺の頭の中には、三人の不機嫌な顔しかなかった。
(俺が何したってんだよ!俺だって怒りたいわ!)
教科書を配り終え、明日の日程を伝える。そして、今日の分の課程が終了したので、帰りの挨拶を始める。
「じゃ、明日教科書持ってくるの忘れずにな。後、明日テストあるから勉強忘れずにな、解散!」
その言葉と共に、教室内は活気に満ちた声でいっぱいになる。放課後の予定を話し合う生徒や、明日のテストに向けての対策を練る生徒。実に青春らしいではないか。そんなことを思っていると、緑川が俺の元に近づいてきた。
「嘉人先輩、先に職員会議に向かいます。では後ほど」
「いや、俺も一緒に︙︙」
いけないですよねー。だって、なんか怒ってるんですもの。女心は未だに分からん。残っている生徒と少し雑談をした後、俺も職員会議に出席する為、会議室に向かおうとする。すると目の前を、金山と青野が通り過ぎる。
「金山、青野、気をつけてか────」
『────さようなら!』
「︙︙あ、ああ」
快く挨拶をしようと思ったのだが、言葉を遮られ、いつもは長話をするのに、一目散に帰ってしまった。しかし、そんなことを気にしてはいられない。俺も、職員会議に向かわなければ。無駄にデカい校舎を歩きながら、四階にある会議室に向かう。バカ長い階段を渡り終え、会議室の扉前に着く。聞き耳を立てると、話し声は聞こえない。何とか、会議には間に合ったようだ。
「────何してるの?」
「っ!︙︙うわぁ、びっくりした〜!」
「あははははっ!そ、そんなに驚かなくても︙︙ぶふっ」
急に後ろから声を掛けてきたこの女性は、黒葛原咲夜さんと言う、俺の先輩教師だ。昔俺が新人の頃、教育担当としてお世話になった人だ。そして、俺が片思いをしている相手でもある。
「こら、嘉人君!髭剃らないとダメじゃない!教師は生徒のお手本にならなくちゃいけないんだから!」
「︙︙すみません」
「分かればよし!」
咲夜さんはそう言うと、先陣を切って会議室に入り込んでいく。俺はその後に続いていき、自分の席へと着席した。