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男性だとは限らない!?

 俺は新聞部の部室前に立ち、ドアノブに手を掛けて中へと入る。すると、印刷機が絶え間なく稼働する機械音とキーボードのタイピング音、そして部員たちの大きな声でのやり取りが瞬間的に耳へ飛び込んできた。聞こえてくる声は、活気に充ちていると言うより、音にかき消されないよう抗っているように感じる。新聞部の生徒たちは、こちらに興味を示すことなくただ黙々と自身の仕事をこなしていた。

「架谷様、お待ちしておりました」

「え……さ、様?」

 俺は扉の前で立ち尽くし、学生らしからぬ異様な光景に愕然としていると、目が吊り上がっており、まるでこちらを睨んでいるかのような目つきをしたポニーテールの女子生徒が現れた。その女子生徒は丁寧にお辞儀をすると、品のある所作で出入り口ではない別の扉へと俺を案内した。

「えっと、君が新聞部の部長かな?」

「いえ、私は編集局長の補佐をしております。架谷様が来訪した際には案内する様にと局長の方から言付かっておりますので」

 そう言うと局長補佐と言っていた女子生徒は、こちらにお入りくださいとだけ伝えると、お辞儀をして自身のデスクへと戻ってしまった。今のやり取りや部室内からもわかる通り、この新聞部はただの部活動ではない。部長のことを編集局長と呼んでいたり、補佐がいる時点でこの新聞部は編集社として組織化されているのだ。

「ここまでの部に改革した部長とは、一体どんな奴なんだ……」

 俺はいつの間にかに固くなった体を解すため、深呼吸をして気持ちを整えると、勢いよく扉を開いた。どんな生徒がいようと、決して隙を見せてはいけない。そんな姿を見せてしまえば、無様な姿を晒した教師として、明日学園中に新聞がばら撒かれてしまうはずだからだ。

「さっき案内されて……」

「嘉人先輩?」

「……緑川、か?」

 扉を開けた先には、革製のソファに座った緑川の姿しか見られなかった。その姿が目に入ったせいか、一気に肩に入った力が抜け落ちるのを感じる。緑川は俺が現れたことに驚きつつも、客として招き入れられていたのか、差し出されていたコーヒーを啜る。俺は、新聞部の部長に怒鳴りつけてやると言わんばかりの威勢で向かっていった時と今の姿を比べ、呆れから溜め息をこぼしてしまう。

「私の顔を見て、溜め息を吐かないでください。コーヒーが不味くなります」

「お前な……」

 その発言を聞いた俺は立っている事も億劫になる程呆れ、緑川が座っているソファへ腰を下ろした。横に座られたことで窮屈になるのが嫌なのか、1人で騒ぎ始めた緑川をよそに、案内された個室を見渡す。ブラインドカーテンが付いている窓の前には、黒革の椅子と高級感ある木製の机が置かれており、そして俺たちの前には机とこちらに向かい合うよう同じ黒革のソファが佇んでいる。どうやらこの個室は、編集局長室兼応接間であるらしい。

「……!」

 そんな事に気づいたところでなんの意味もなく、そんな気づきをかき消すように扉がノックされる音が聞こえる。俺はそちらへ視線を向けると、ゆっくりと扉が開かれて補佐(仮)の生徒が姿を現した。

「編集局長が参られました」

 その言葉と共に扉を手で抑えながら身を引いた補佐(仮)の横から、こちらを見る1人の生徒と目が合った。

「やあ、嘉人先生。待たせたね」

「君は……」

「ああ……名乗るのが遅くなってすまない。私はここの編集局の局長さ!」

「は、はあ…………え?」

 学園の全ての情報を把握しており、教師からも恐れられる新聞部の部長新渡戸 聞治(にとべ ぶんじ)は、面白い口調の陰気な女子生徒であった。

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