日常!?
「はい、これで連絡は以上。十分後に始業式だから、それまでにトイレとか済ましとけよー。起立」
俺の掛け声と共に、生徒たちは席から立ち上がった。
「礼」
生徒たちは礼をし終わると、各グループに分かれ、話始めた。その様子を少し見守る。春休みがあり、みんなと会えない時間があったが、相変わらず元気な姿を見て、少し心を落ち着かせる。一人で安堵していると俺の元に、二人の女子生徒が近づいてきた。
「よっしー、おっはー!」
「おはよう〜!」
「おお、おはよう」
元気に挨拶をしてきたこの二人は、去年担当していた教え子たちだ。教師をニックネームで呼ぶ生徒は、金山美香と言い、テニス部に所属するギャルだ。持ち前の明るさもあるおかげで、沢山の生徒からは好かれ、カースト上位に君臨している。見た目はキャピキャピしていて、俺の苦手とするタイプの女性だ。
「今年もよしおって、女バレの顧問?」
女バレに所属するこの生徒は、青野夏海と言い、スポーツならなんでもできるスポーツ少女だ。赤点ギリギリの彼女がこの進学校に入学できたのも、スポーツができるという面が大きい。
「多分そうだろうな」
「やったー!」
天真爛漫なのはいいのだが、勉強も頑張って欲しいと思うのは、教師の性なのだろう。そんなことを思っていると、五分がいつの間にか経過していて、生徒たちが体育館に移動を始めていた。
「ほら二人とも、始業式始まるから移動して」
そう言うと、金山は右腕にしがみついてきた。
「おっけー、よっしーも一緒行こっ?」
金山の胸が腕に押し当てられ、教師といえど反応してしまう。その俺の様子を見ていた青野が、私もと言わんばかりに、左腕に抱きついてきた。
「えー、アタシもよしおと一緒に行きたいんだけど」
青野の引き締まった体が、腕に密着し、それまた反応してしまう。
「お、おい!俺は緑川先生を案内しながら行くから、お前たちは二人で行け!」
『え〜〜〜』
二人は露骨に嫌そうな反応をする。しかし、仕方がないのだ。本当に仕方がないのだ。
嫌がりながらも体育館に向かう二人を見届けた後、緑川先生の方に体を向ける。
「緑川先生、それではあんな────」
「────嘉人先輩、見損ないました」
「ち、違うんだ緑川!説明させ────」
「────体育館までの道のりは知っているので、これで失礼します」
ぺこりと一礼した緑川は、体育館の方面へと、素早く移動していった。
「あんなに遮らんでも︙︙」
そんな悲しい言葉が、誰もいない教室で響き渡った。