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優れた記者は優れた演出家でもある!?

「で、どうするんですか?嘉人先輩」

「ん?ああ、そうだな……」

 校長と話し合ったあの後、俺と緑川は別れて授業を行っていた。やはり学生新聞が出回っていたせいか、生徒からの視線が授業中だけではなくお昼休みの時間でさえ絶え間無かったのだが、ようやく放課後になり、何とかその視線から一時的ではあるが解放された。そして今、俺と緑川は作戦会議を自身が受け持つクラスが目の前にある廊下で話し合っていた。

「そうだな……じゃないですよ!この噂を無くすことが出来なければ、私たちクビなんですよ!?」

「おい、あんまり大声出すなよ。俺たちはただでさえ注目の的なんだから、目立つような行動は控えてくれ」

 そう注意を促した俺を恥ずかしそうにしながら睨みつけた緑川は、胸元に抱えていた生徒たちの課題を抱き寄せる。

「……もういいです。策がないのなら、私がやります」

「やるって……何か策があるのか?」

「当たり前です」

 緑川は怒られたことを反省し、小声で話しながら自信ありげに声を上ずらせる。それを俺は、この場において疑念よりも下位の感情である無関心の面持ちで耳を傾ける。

「直接私が新聞部の生徒に訴えかけます!」

「……うん、いいと思う」

 俺は緑川の策になど、ハナから期待などしていなかったのだ。馬鹿が逆に付いてしまう程の真面目で堅物な緑川が、柔軟性に優れた思考など出来るはずがないのだ。ゴールがあるのなら、真っ直ぐに進むのが最適かつ効率的と判断するのが彼女だからだ。それが例え、茨の道だったとしても。

「あんまり人の意見に口は出したくないが、それは難しいと思うぞ……」

「なんですか?私には出来ないとでも?」

「逆上するなよ、緑川」

「逆上なんてしていません!私に嘉人先輩がまとわりついているだけと、必ず情報を訂正してみせます!」

「――――2人とも、喧嘩はそれくらいにしな?」

「……青野」

 俺たちの間に割って入るように会話をしてきたのは、担当するクラスの生徒である青野であった。そしてその後ろには、機嫌が悪そうに腕を組んで爪を触っている金山の姿も見える。

「あのさ、仲良いのは構わないんだけどさ、見せつけられるウチらの身にもなって欲しいわけ」

「それは悪いことをしたな。だけど、これだけは訂正しとかなきゃ……」

「――――いいよ美香、行こっ?」

 いきなり手を掴まれて呆気にとられた金山を気にすることなく、腕を引っ張って食堂の奥へと消えていった青野は、何やらもどかしそうな表情をしていた気がする。それは何故なのかと問われれば、答えることはできない。これはただの憶測であり、真実と呼べるものではないからだ。

「……では、私は今から新聞部の方へと行ってきますので」

「そうか、良い報告を待ってるよ」

 そう口では言いつつも、成功するはずも無いことを俺は知っていた。それは、新聞部の部長がとんでもない欲を持ち合わせているからだ。新渡戸 聞治(にとべ ぶんじ)、通称|The Devil'puppeteer《悪魔の傀儡師》。4月6日に生を享けて現在は16歳。1年生ながらにして、新聞部の部長に登り詰めた彼は、学園に関連する全ての情報を把握している。そのことは、彼が初めて記事を担当した「女子生徒の盗撮を試みようとしていた男性教師(56)」という記事によって証明されている。そしてそんな彼の欲とは、多くの注目を得ることである。その公開する内容が嘘だとしても、彼は全てのことを知っているという学園内の共通認識からそれが本当のことであると、誰も疑わないのである。そのことを利用し、熱愛報道がされる前に、学園内で俺と緑川が付き合っているのではないかという噂が広まっていたことに目を着け、記事の一面にしたということだ。

「さて、俺は仕事に戻るとするか」

 掲示板に大々的に貼られている自身と緑川の熱愛報道を横目に、俺は職員室へ続く廊下をコツコツと歩いていった。

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