終幕は突然に!?
「何故、白鳥さんはバレーをしたいの?」
「え……?」
白鳥の反応は、無理もなかった。試験を始めると言われ気を引き締めたら、いきなりそんな質問をされるのだから。だが、白鳥は戸惑いながらも息を整えそれに答える。咲夜さんは、真剣な眼差しで黙って白鳥を見つめていた。
「……好きだからです。バレーの音が」
「バレーの音……続きを聞かせてくれるかしら?」
「はい。ボールがスパイクで叩きつけられた時、スパイクレシーブの時に鈍い音が響き、スピードと力強さを感じ取る。他にも観客席の歓声、選手の声掛け、靴のなる音……その音どれもが、生きてるって感じがして好きなんです……ごめんなさい、うまく言い表せなくって」
白鳥が好きな理由を語っている時、咲夜さんは自分が選手時代の頃を思い浮かべていたのか、感慨に耽ているようだった。それ程までに白鳥の説明は、その時の光景を思い浮かばせる程までに熱いものであった。
「いや、十分に気持ちが伝わったわ」
「そうですか、なら良かったです」
咲夜さんは返事を聞くと突然コートの方へと歩き出し、その行動から試験を始めるのだろうと俺は考える。そしてその考えは白鳥も思っていたらしく、これから試験が行われるのだろうと咲夜さんの後について行っていた。だが、咲夜さんは来た時と同じように両手を叩いてその場を静かにさせる。
「みんな、練習中悪いんだけど、聞いてくれる?」
「……」
部員が練習をやめ、こちらに向いていることを確認するとそう話す。そして白鳥の方に視線をやり、部員の視線を今度はそちらに注目させる。
「今日から、女子バレーボール部に入部することとなった白鳥雪乃さんです。あ、ちなみにポジションはリベロね」
「――――ええっ!?」
「……よ、よろしくお願いします!」
「じゃ、早速だけど練習に参加してくれる?」
「はい、分かりました!」
まさかの咲夜さんの行動に俺は驚きを隠せなかった。白鳥は驚きつつも挨拶をすると、解散して行った部員に着いていって練習を始めた。俺は、腕を組んで仁王立ちしている咲夜さんに顔を向けると、質問を投げ掛ける。
「咲夜さん!ど、どういうことですか!?試験は……」
「試験は合格よ。あれだけあったら十分だわ」
「合格って……まだ何も――――」
「嘉人くん、言ったでしょ?彼女、白鳥さんがどれくらいバレーが好きなのか知るための試験だって」
「つまり……」
「ええ、さっきの質問が試験よ」
俺は咲夜さんからその言葉を聞くと、戸惑いながらも胸を撫で下ろした。無事、白鳥が合格したこともそうだが、咲夜さんが好きを確かめたいという気持ちが本心であったことが確信出来たからだ。
「咲夜さん!」
「ん?どうしたの嘉人くん、急に畏まって」
俺は咲夜さんを呼び止め、真剣な面持ちで向かい合った彼女の瞳を見つめる。咲夜さんはやはり大人の女性であり、視線が合っているにも関わらずたじろぐ事もせず、俺に応えるかのようにこちらを見つめる。その対応に、呼び掛けた本人である俺が動揺していた。
「これから、女子バレー部をよろ――――」
「よしお、危ないーっ!」
「ぶべぼぉっ!」
そう青野の声が聞こえた頃には、既にスパイクで地面に叩きつけられたボールは俺の顔目掛けて迫ってきており、それを避けるということは不可能であった。そして、右頬の強い衝撃と共に、青野や白鳥、赤星に咲夜さんが目を見開いて驚いている光景が飛び込んでくると、突如として暗い幕が下ろされたのだった。




