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自分の教え子にからかわられる!?

「お前らー、順番来るまで待機してろよー」

「はーい」

「うぃーす」

「任せて!」

 今日は健康診断があり、今は自分たちのクラスの順番が来るまで待機しているという状態である。てか、頭いてぇ。昨日調子乗って飲み過ぎたな。何かあるかもと期待してたけど、何も起こるはずもなく。第一、俺が務めるこの学校では教師同士の恋愛禁止だし。

「嘉人先輩、ハメを外しすぎです」

「ん?なんだ、緑川か……」

「黒葛原先輩とだったから……ですか?」

 なんだ?二日酔いのせいか、緑川がいつもと違って見える。これはいかん、早く酔いを覚まさなければ。

「すまん、ちょっとトイレ行ってくる」

「あっ……」

 俺はトイレに行きたい訳でもないのだが、その場から離れるようそそくさと教室から飛び出した。

「あ、嘉人先生」

「ん?ああ、確か……」

「昨日、バレー部の見学に来た赤星陽菜(あかほしひな)って言います」

「赤星か。ところで、こんなとこで何してんだ。ここは2年のフロアだぞ?」

 俺が疑問げにそう言うと、赤星はやれやれとため息を吐いていた。

「嘉人先生はおバカさんなんですか?」

「おバカさんって……」

「1年生である私が2年生のフロアにいるってことは、健康診断の順番を教えに来たに決まってるじゃないですか」

「言われてみれば確かにそうだが……」

 そう赤星は言うと、私の役目は終わったんで帰りますねとだけ言い残し、教室前にある階段をスタスタと降りていった。俺はその背中が見えなくなるのを確認すると、教室の扉を開いて皆に声をかける。

「順番来たみたいだから、みんな準備しろよー。さっきも言った通り、男子は体育館、女子は保健室からだからな。間違っても保健室に行くなよー、男子」

「心外だそよしと!」

「そうだそうだ!」

「そう言えば、保健室どこだっけ?」

「おい!」

 そう男子たちと俺はそんなやり取りを行うと、クラス全体で笑いが起こる。全体を見るに、1人として不快な気持ちになっていそうな生徒はいなそうであったため、俺はホッと胸を撫で下ろす。生徒たちは健康診断のため、更衣室へ体操着に着替えへ向かう。俺たち教師は健康診断時は何もすることがないため、次の授業に向けて準備に取り掛かろうとする。すると、そんな俺の元へと2人の生徒がやってきた。

「よっしー」

「よっしおー!」

「どした金山、青野」

 俺の元へとやってきた生徒とは、金山と青野であった。様子から何か用事があるようには見えず、俺をまたからかいに来たのだと考える。

「あたしたち、よしおに悩み相談しに来たんだ!」

「そんな風には見えんが」

「とりまさ、聞いてくんない?よっしー」

 からかいに来たと思ったのだが、2人によると悩みがあってそれを俺に相談しに来たというのだ。だがしかし、この2人に限って俺に悩みを打ち明けるのだろうか。否、そんなはずがない。だけれども、本当にそうだとしたら。俺は真反対のことを思い浮かべながら、後者である悩みを打ち明けにきたことを信じてみることにした。教師が疑いから入るなど、あってはならない。俺は目の前に広げていた業務を隅に片付け、2人に向かい合う。

「なんだ、悩みって」

「いやさー、アタシたちって可愛いじゃん?」

「……は?」

 俺はその青野の言葉によって、真剣であった心持ちが崩れる。そして、考えと理解が追いつかず、ただただ問い返してしまう。いやこの場合、聞き間違いであってくれと願った聞き返しなのかもしれない。

「だーかーらー、アタシたちって可愛いんだよ!」

「……お、おう」

「何その反応、ウケるんですけど」

 (なら笑えよ!)

 と、心の中でそう金山にツッコミつつ、ため息をつく。悩みを打ち明けにきたのだと信じ込んだ俺が馬鹿だったと、そう思ったからだ。

「で、2人が可愛いから何なんだ?」

「だからって、アタシたちの着替えてるところ見に来ないでね?」

「…………」

「え?なになに?図星ー?」

「……早く着替えに行け、お前ら」

「あーい。緑川せんせー、よっしーの見張りよろー」

 ほんとにこいつらは……。俺は呆れたように2人を追い払うと、続きの仕事に取り掛かる。

「嘉人先輩、女子の健康診断が終わるまで一緒に居てあげますね?」

「……あ、うん。ありがとう……」

 緑川の凄い圧を背後から感じながら、俺は震える手でペンを走らせたのだった。

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