バレー部にも入部希望者が!?
今日のテストに続き、部活動紹介も難なく成功したことに安堵した俺は、早足で本校舎にある体育館へと向かった。今年も女子バレー部の顧問に就任した俺は、部員が来る前に体育館の掃除や設備の点検をしなければならない。
「よし、やるか」
俺は体育館の入口前に立つと、気を引き締めた。体育館の電気をつけ、モップを掛けて床を綺麗にする。こういうことは基本的に生徒たちが行うのだろうが、俺はバレーの知識など全くといっていいほど皆無である。そんな俺が唯一出来ることといえば、全国を目指す部員たちのサポートくらいしかない。ならば、それに全力で務めるだけだ。
「おっ!嘉人先生、ありがとうございます!」
バレーボールの入ったカゴを用具室から取り出し終えると、体育館の入口の方から青野の声がした。声の方に振り向くと、青野を含む二年生や三年生がチラホラと集まってきていて、部員たちは準備をしている俺に、ありがとうございますとお礼を言うと、バレーをする準備に取り掛かり始めた。俺は各自アップをやり始めた生徒たちを見守りながら、事前に用意していたパイプ椅子に腰を下ろした。しばらくしてランニングを終えた部員たちが歩きながら休憩していると、先生。と、か細い声で呼び掛けられた。
「須藤、どうした?」
「昨日送って貰ったから、お礼しようと思って。ありがとう」
「いやいや、教師として当たり前のことをしたまでだ」
何か言いたそうにしている須藤が気になりながらも、生徒たちを自分の元へと集合させた。
「まずは全員、進級おめでとう。今日は新学期最初の部活動だから、新入生が見学に来ると思うけど、しっかりと気を抜かずに練習に励めよ。俺たちの目標はインターハイ優勝だ、いくぞ!」
『おーーーー!!!!』
俺の挨拶が終えると、部員たちはそれに応えるかのように熱のこもった声を上げた。部員たちはその勢いのまま、最初の基礎練習から取り掛かり始めた。体育館全体にはボールの音、シューズの音、そして部員たちの声が響き渡っている。全体を見るに、とても良い雰囲気で行えている事が分かる。
「︙︙来たか」
しばらく基礎練をしていると、体育館の入口が開いた音が聞こえた。音の方に目を向けると、数人程度の新入生が見学しに来ていた。俺は新入生が来たことを確認し終えると、部員たちの方に目線を戻そうとした。しかし、聞きなれない呼び方をされた俺は、目線を留めることとなった。
「架谷先生」
目をやると、見慣れないショートヘアの中性的な女生徒とサイドテールをした小柄な女生徒が俺の方を見上げて立っていた。
「入学早々、先生の名前を覚えるとは関心だな」
「いえ、髭を生やしている教員の方など、なかなかお見受けしないものですから……」
「そ、そうだよな……」
透明感のあるその子は申し訳なさそうにそう言うと、顔を下に向け黙り込んでいた。俺はその行動に困り果て、教師としてあるまじき、生徒との間に気まづい空気を流してしまった。
「……ど、どうした?」
「雪乃、何も言わないと先生困ってるでしょ」
「あっ。そう、ですよね……ごめんなさい」
サイドテールの女生徒にそう言われた雪乃と呼ばれた女生徒は、俺へと軽く謝罪をした。そして、身支度を軽く整えると、俺に視線を合わせる。
「僕、白鳥 雪乃って言います。私をバレー部に入部させてください!」
「お、早速入部希望者か。是非入ってく――――」
「そうね。入部したいと言うのなら、あなたの実力を見せてくれるかしら?雪乃さん」
そう俺の言葉を遮った聞き馴染みのある声に驚き、俺は声の主へ体を向けた。すると、腕を組んで余裕のある笑みをこぼしている黒葛原さんが立っていた。




