第2章 術師への道 12 肉林の池
脱出した先には、呪張のいったとおりの楽園が広がっていた。地下空間とは思えないほどの広大な草原があり、天井を支える柱類は、ところどころに群生している林に巧妙に隠されていた。さらに、柱の下端部は、以前異術学院を襲った吸盤だらけのタコの足のような構造が見え隠れしていた。
そんな空間を、温帯から熱帯にかけての豊かな虫類、鳥類、動物たちが行きかい、飛び交っていた。七人は、その光景に見とれた。だが、その後ろには、どのようにしてか、金縛りを解いた既に女王呪張とその兵隊たちが追いついていた。
「逃げ道は無いわよ」
女王のあざけりは、逃げる7人の背中に届いた。智子は、女王の姿を認めると振り返って怒鳴り返した。
「逃げ道? そう、私たちを追い込んでいるつもり?」
「へえ、それはもう逃げられないことを悟ったのね」
呪張は嘲笑した。それを見た智子は他の6人に逃げる方向を示しながら、とどまった。
「逃げられない? そのつもりは無いわ……確かにこの先は行き止まりらしいけど、あんた、彼をあの宮殿のある空間に入れてもいいの?」
「彼? どの彼だ?」
呪張は、そう言うと改めて智子を見つめた。智子は呪張を見つめて、淡々と指摘した。
「私が教えるのは、このまま私たちをあの空間に入れてもいいのかという警告よ? 『彼』について私が教えるとでもおもったかしら?」
「な、それはどういう意味だ?」
「私がこれ以上教えるはずはないでしょ?」
智子はそう言うと、立ち止まって考え始めた呪張やその兵隊たちを置いて、先に行った仲間たちを追って行った。
七人は、鬱蒼とした森林地帯と柱とが林立した区域に、入り込んだ。
「この方向でいいのか?」
先行する総一郎が、後ろの智子を見た。智子は、その問いに首を振りながら答えた。
「この方向は、彼らの思う壺よ......彼らは、先程の空間に虫、鳥、動物たちを閉じ込めて、生命エネルギーを吸い取っていたわ………人間なんかも、どこかに閉じ込められて生命エネルギーを吸い取られているはずよ………私達もいずれそうなるかもしれないわね………ただし、ここでは異術を十分に使えるはずよ......結局、此方しか道はないわ」
智子の指摘に、他の5人もそのまま鬱蒼とした森林地帯へと駆け込んでいくしかなかった。
まもなく、森林地帯から視界が急に開けた。彼らが出たのは、海に突き出た崖の上だった。
「う、行き止まりだ」
「ここから、水の中へ飛び込むか?」
彼らはどうしていいか判断しかねていた。そこに、女王たちがゆっくりと彼らの後ろに現われた。
「さあ、あんたたちはもう逃げられないよ」
女王は勝ち誇ったように七人を睥睨しつつ、言葉をゆっくり継いだ。
「あんたたち、異術学院の生徒たちだよね…あんたたちは、なぜこの地下迷宮に入り込んだのかね?」
「お、おれたちは、学院のフィールドワークチームだ」
総一郎はそう言うと、女王めがけて周辺の岩や小石などを集中させた。それに合わせて、悠然も砂を吹き上げた渦を、女王たちにぶつけた。女王はその反応を一周すると、興味深そうに7人を見つめた。
「そうか、異術の訓練として、フィールドワークをしていたのかね」
「そ、そうだぜ! これで俺たちは劇的に能力を伸ばすことができるんだ」
総一郎たちはそう言うと、一斉に得意とする異術をぶつけた。女王は、それらの攻撃も一蹴すると、彼らの様子を微笑みながら提案した。
「それならば、この先にある空間に滞在すれば、そんな訓練をしなくとも世界を意のままにできるように、異術の力を無限にしてあげられるわよ。ただし、私を神としてあがめたら、ね」
「え?」
この提案に、総一郎たちにとって意外だったらしく、驚きにこわばった表情を浮かべた。ただ、直哉だけは興味を失ったかのようにつぶやいた。
「さっき、啓典の言葉の一つ一つによって生きると言ったはずなのに、変な奴を崇めるはずないじゃないか」
「そうね、あんたたちの提案は私たちにとって意味のないものよ」
智子は淡々とそう指摘した。それでも女王は、直哉と智子を除いた総一郎たちの反応に満足したらしく、言葉をつづけた。
「まあ良い。総一郎が最初にここからその道を下って行けばよい。その先に、お前たちにとっての楽園があるぞ。そこには楽園を得た人間たちの姿を見るであろう、そうだ、そこはある意味では理想郷だぞ……おそらくは、愚かな直哉という少年よ、あんたもふくめて、あんた達すべては魅入られるであろうよ」
これを聞いた総一郎は、真っ先に女王の示した小道を崖の下へと走りおりていった。他のメンバーも彼を追って降りて行った。女王は、彼らの姿を見送りながら、ほほ笑んでいた。
彼らが降り立ったところは、まるで海辺の砂浜だった。打ち寄せる波には、多くの男女たちが戯れていた。天井を支える柱はその底辺にタコの足の構造を有しつつ湖水の中に立っており、それらは屈折率の高い最外層によって、その実体を空間の中に溶け込ませていた。
「こんな広大な海が、地下にあるなんて...」
「これは海じゃない…ほら、よくあそこを見てごらん、空と微妙に光の色合いが違うところがあるだろう? それからうっすらと見える柱とその下端のタコの足!」
「あ、あれか?」
「そうだ、見えたかい」
悠然と虹洋は、そう言いながら小道から水辺へ降りて行った。それに続いて、ほかのメンバーも水辺に降り立った。彼らの目の前では、若い男女たち数人が一つのグループとなって水辺で絡み戯れていた。彼らは、簡単な胸当てと腰巻だけで体を重ねていて、寝転び戯れる姿は、直也にはもちろん刺激的すぎ、他の六人をも戸惑わせ、羞恥を覚えさせたほどだった。
「智姉、ここばかりじゃない! 智姉の行こうとするあっちにも、あそこにも、あそこにも、あっちにも、いたるところでほぼ裸でたわむれあっている集団がいる……あの姿は......」
直哉は、小径の途中で智子を必死で引き留めた。彼の腕をがっちり引っ張っている智子の腕を、一生懸命に振りほどこうとして、必死の形相だった。だが、智子は、そんな直哉の戸惑いを無視するかのように指摘した。
「そうよ、水辺で絡み戯れている彼らは、最低限の布しか身に着けていないのよ」
「智姉、ぼ、僕は進めない」
「だめよ 進むのよ」
「え? どうして?」
直哉は、そう言ったのだが、智子はふたたび直哉を引きずり始めた。それでも直哉はなおも、智子に食い下がった。だが、智子はそれ以上直哉の様々な言葉も表情も反応にも、応じようとしなかった。そんな扱いが直哉をさらに追い込んでいった。
「智姉、どうして答えてくれないの?…ねえ…智姉…ねえ、ねえ……」
彼はますます混乱して、ついには引っ張られるままに任せ、目を閉じて黙ってしまった。
女王は、海岸で彼らがそれぞれに反応を示した様子を見つつ、満足した表情を浮かべた。
「所詮は少年少女、しかも、権威と誘惑に弱い彼らには、ここが最もふさわしい世界だろうね……しばらくは彼らにここにいてもらおう」
こうして、7人の彼らには、浜の近くに宿舎が与えられた。すると、脱出を考えていたはずの智子までが、ほかのメンバーに声をかけて浜辺で遊ぶようになっていた。総一郎やほかのメンバーは、その姿勢に驚いたものの、一緒に戯れて過ごした。直哉といえば、否応なくこの中に引きずり込まれ、目をつぶり黙り続けて抵抗したものの、浜辺で、宿舎の中で、さらには自室で押しかけてきたアリサによって、翻弄され続けた。こうして、皆はこの空間を楽しみ過ごすかのように見えた。
「直哉さん、このアリサ、あなたのために舞を捧げます」
直哉にとっては、彼の周囲にあられもない女性たちが氾濫する事態となった。ある時には、この言葉のように、アリサが、ちょこんとした小さなドレスに身を包み切れていないままで、踊る姿を見せつけた。また智子や仲間たちが、ほかの男女たちと同様の、ほんの申し訳程度の着衣のままで水辺で遊ぶ姿も、毎日のことだった。それは、さらに直哉を追い込み、追い込んだ。ただ、それでも直哉は智子の傍に居続けた。
そんな直哉をさらに追い込む事態が起きた。
7人の宿舎では、男女の居室は離れて設けたはずだった。そうでなければ、直哉が騒ぐためだった。だが、ある日、宿舎の空室で音がしたことを不思議に思った直哉は、総一郎たちとともに、その室を覗き込んだ。そこには、悠然と虹洋とがが抱き合う姿があった。
「二人で何をしているんだ あの池の連中と同じことを始めたのか?」
彼らが、抵抗する二人からかぶっているものをはがすと、その中にいた悠然と虹洋は何も身に着けずに体を重ねていた。
この姿を見た梓晴と総一郎、そしてアリサは、二人を見つめ、そして互いを見つめた。
「直哉は私を相手にしてくれないことはわかったわ。だから、彼をあきらめたわ 私は今総一郎を」
アリサがそう言うと、梓晴もまた言った。
「そう、だから私も総一郎を」
「それなら、二人で総一郎を相手にしましょ!」
他方、直哉は怒り心頭だった。
「何をしているんだ」
「私たちは結婚の約束をしたの」
虹洋はそう答えた。悠然もまたそれにうなづいた。智子は驚いて口を開けた。
「え、結婚?」
「こんなことは許されないぞ。女の人を男が抱くなんて」
直哉が怒鳴り始めた。それを無視しながら、虹洋はつづけた。
「私は彼だけを愛しているわ」
「僕は、彼女だけを愛している。そう約束をしたんだ」
悠然もまた、そう答えた。直哉は一層怒り始めた。
「約束だと? そんなみだらな約束をするのか…男と女が、隠れもせずに抱き合うなんて…男は女を情欲を持ってみてはいけないんだぞ!」
「じゃあ、女は? 女は好きな男に抱かれるだけなの?」
智子は、直哉に手を置いて窘めた。だが、直哉は一層主張した。
「女も、男も、抱き合うなんていけないんだ。その先にあるこも、体を重ね合って交わること、一体になることももっといけないことだ」
「もしかすると、わたしたち、酷い間違いをしているかもしれないわよ」
智子はさらに指摘すると、直哉は智子に顔を向けた。
「どうして? こんな破廉恥なことを許すのか」
「異性を好きになることがいけないの? 異性と抱き合うことがいけないの?」
智子は、静かに指摘した。直哉はだんだん、戸惑いを深くした。
「抱き合うなんて、しちゃいけないはずだ....」
「直ちゃん、それは違うわ…直ちゃん、覚えていないの? パウロの言葉を、そして預言を......若い妻を楽しめ…産めよ増えよ地に満てよ......直ちゃん、これは命令なのよ。彼ら二人は、忠実にそれを果たそうとしているのよ。彼ら二人が互いを唯一の相手として選んで愛して結婚するなら、彼女たち二人を祝福する以外、わたしたちにやることは無いし、ほかは許されないはずよ」
智子は、遠くを見るような眼で、直哉をたしなめ続けた。だが、直哉はなおも主張し続けた。
「なんだよ、それ……僕はあの二人のようにたとえ互いが唯一の相手だとしても抱き合うなんて、見たことも聞いたこともないし、とんでもない、考えられない、絶対やりたくない」
「直ちゃん、それじゃいけないのよ」
「何がいけないんだ、僕は小さい時から、こんなことを絶対にしないことを誓って守ってきたんだ」
「直ちゃん、それは、あなたが知らないから……女の子が女の子の身体をしていて、男の子が男の子の身体をしている意味があるのよ......」
「そんなの、しらない......知りたくもない、そんな怖い姿なんて、そんな恐ろしい姿なんて......」
「直ちゃんは、小さい時からそう言って、私を拒んできたでしょ…小さい時に私がお風呂で直ちゃんを洗ってあげた時だって...。直ちゃんは私を見て、怒ったわ。いや、怒ったんじゃなくて、逃げようとした、拒み続けたの....私の生まれたままの姿を受け入れようとしなかったのよ」
「僕は、大切なものを壊したくないんだ」
「直ちゃん、私は貴方を大切な人だと思っているわ・・・」
「僕は好きな人がいる。でも、その人を好きになっちゃいけないんだ。その人は僕の家族だから。僕の家族を好きになって家族を壊しちゃいけないんだ」
「でも、私のお母さんは、もうすぐ天に召される。そうしたら、私は貴方の家族という場所から出て行かなければならないの……孤独に生きていく覚悟はできているし......」
「どうして、そんなことを言うの、....。それなら、今のこのままがいいんだ」
「私は、うけいれてほしい」
「そうやって、みんな僕を追い詰めるんだ。特に、智姉はそうやって僕を追い詰めるんだ」
「私、直ちゃんに少しでもわかってもらおうと思って、努力しているのに」
「僕は嫌だ!」
智子は、黙ってしまった。そしてしばらく考え込んだ後、一言いった。
「それなら、もっと追い込んであげる。そうね、ちょうどいいわ。私が追い込むことで、直ちゃんは成長するんだから。たしかに気を失うけど、それでも追い込まれたときに、直ちゃんは飛躍的に成長するから……」
このやり取り以来、直哉は智子を見ようとはしなくなった。それは、同時に彼らが一体となって脱出しようという機運が無くなったことを示した。
こうして数日たつと、ここかしこで魅入られた人間たちからほとばしり出る生命エネルギーが、地下空間中にあふれるほどになっていた。そのためだろうか、毎晩、蠢く者達さえ出てきた。それは、周辺に蠢く亡霊たちだった。女子生徒たちは、毎晩出現する亡霊たちを怖がり、男子生徒たちの部屋へと直哉に助けを求める事態に至った。これもまた、直哉を追い込んだ。これらの事態は、彼の能力をさらに強めることにもなるはずだった。これは、智子の計算したとおりだった。
そうして、ある夜のこと。水辺一体で、男女の悲鳴が一斉に上がった。総一郎たちもそれに気づいたのだが、次の瞬間には、直哉や総一郎たち七人の宿舎の中にも、突入して来た者たちがいた。
「さあ、収穫の時期だぞ...生命エネルギーが満ちている...さあ、人間たちからも残らず吸い出すんだ!」
その一団の長らしいものが、指示をした。すると、青白い男のような姿が智子、虹洋、梓晴に襲い掛かった。同時に、総一郎や悠然にも、青白い女のような姿が襲いかかった。もちろん、直哉にも襲いかかった者がいたのだが、直哉はパニックになって彼女を蹴飛ばし、外へ逃げだした。これに気づいた青い女たちは総一郎や悠然を途中で放り出し、全員が直哉に向けて追いかけ始めた。
「やめて! やめてくれ! お願いだ! 僕はここにいられない!」
直哉は、押し寄せてくるサキュバスたちの集団から逃れることで、頭がいっぱいだった。彼は狂ったように浜辺の奥へと走り去った。直哉が逃げ出したことに気づいた智子は、彼を追いかけた。この時の彼女が直哉を呼び止めようとする声も、直哉をさらに追い込んだ。
彼が逃げ出した先では、満足した表情の青い男女たちと、エネルギーを吸い取られて死人のようになった男女たちがいた。毎晩蠢いていた亡霊のような者達は、実はこのようにエネルギーを吸い取られて死人のようになった男女たちであった。ここからわかることは、直哉を追いかけてくる青白い女たちがサキュバスたちであり、若い女たちを襲った青白い男たちがインキュバスたちであることだった。
直哉は、浜辺を奥へ奥へと走った。直哉はただ逃げだしたい一心で走っていたのだが、その先にはおそらくは呪張にとっての住居、楽園の管理棟でもある宮殿がそびえていた。
直哉は追ってくるサキュバスたちをまいてしまうと、格好の隠れ家と思って宮殿に忍び込んだ。そこには子供たちの声が響いているエリアがあった。
「やだ!」
「くすぐられて気持ち悪い」
「気持ち悪い、いやだよ!」
そんな声の子供たちの中心には、あの呪張女王がいた。
「子供たち、我慢してくれているのねえ…ありがとうね、あんたたちの若さには生命があふれている…あふれている分をいただくよ…将来、吸い取られることに慣れるためにね」
「きもちわるいよぉ」
直哉は物陰に潜みながら、観察を続けた。彼の目の前にも子供たちがうめき声をあげていた。彼らの表情から見ると、決して痛みではないらしいのだが、気持ち悪さと恐怖とでうめき声をあげていた。そして、彼らは声を上げることもできなくなり、全員が静まった。
「あんたたち、誇っていんだよ。そのうち、あんたたちはこの貪りに喜びを感じるようになる」
「女王 呪張はああして子供たちからも生命のエネルギーをむさぼるんだ。子供たちは、こうやって貪りに慣れて、教育される。将来は、ブロイラーになるんだ。浜辺で戯れついには死んでいった大人たちの後継なんだよ」
智子が、いつの間にか直哉の後ろに追いついていた。彼女は直哉に、倒れこんでいる子供たちを見るように促した。そこには、女王の代わりに別の教育係らしいインキュバスが来ていた。
「さあ、あんたたち、聞け」
子供たちは声を上げられなかった。すると、そこに容赦なく鞭が振り下ろされた。
「い、痛い」
「いたいよー」
「黙れ! よく聞け!」
教育係は、なおも容赦ない言葉を子供たちに浴びせた。
「いいか、お前たち、お前たちは素直に我々の指示に従うんだぞ…お前たちが大人になった時、女王 呪張様に、一切の人間たちが従うべきであることを、世に知らしめるんだぞ」
憔悴しきった子供たちは声を上げることなどできるはずもなかった。そこにさらに鞭が当てられた。
「い、痛い!」
「いたいよー」
彼らが幼い悲鳴を上げると、その鞭はかさねて容赦なく振り下ろされた。
「なんだと、素直さのない子供だ、罰をもっと強くあたえなければ」
幼い悲鳴に、鞭の容赦ない音が激しく重なった。子供たちは幼い悲鳴と泣き声を上げた。
直哉は体を震わせて立ち上がった。すでに、精神的神経的に追い込まれていたこともあって、彼は顔色が青色に変わっており、彼の周囲にはすぐに未知の力場が形成されつつあった。
「この大人ども、いや、あんたたちは人間じゃねえ」
「そうさ、我々はあんたたちのような下等人類ではない…あんたたちは我々上位人類の家畜なんだよ」
ちょうどその時、直哉たちを追ってきたサキュバスたちの集団、そして異変を感じて殺到して来たインキュバスたちや兵隊たちが、入り込んできた。
直哉は改めて彼らの素肌を見た。彼らは、海岸に転がっていた今の人類とは異なった肌をしていた。ひび割れた肌は体中に六角形の模様をつくり、口には発達した犬歯さえ見え隠れしていた。
「あんたたちは、そうか…上位人類....」
直哉は周囲を睨みつけると、彼が睨みつけた者達は、一瞬にしてすべての者が動かなくなった。直哉の凍結の際の威力と対象選択能力は、この地下迷宮に来たばかりのころに比べて、飛躍的に拡大していたのだった。




