ヘドロを釣った
「つれねぇ」
それもそうだこんなゴミが沈み、虹色のあれも浮いている。こんな池に…
俺は他の釣り仲間からこの池に虹色の魚がいると言われ、釣りに来ているが…
「ゴポ」池から泡が浮いてきた…臭い
こころなしか腐った魚の臭いまでする
「なんだ」
泡が浮いてきたと思ったと同時に浮きが
どぷんと沈んでった。
「?なんかに引っかかったか?」
長年使っている釣竿が良くしなり水面に先端が付きそうになっていた
ぐっと持ち手を握りしめ釣り上げるように力を込める
「おっ、よいしょっと」
かなりの大物なのかなかなか釣り上げることが出来ない
「ぬわっあっ」
が、いきなり紐でも切れたかのように一気に竿が大きく上がった
どんっ
あまりにいきなりで尻もちを着いた
「いったぁ」
と、同時に
どっぱんっ
「なんだよやっぱゴミじゃねえか」
特大、子供くらいのサイズのヘドロの塊が釣り上げた釣り糸の先に引っかかっていた
「きったねぇな」
ぐにぐに
しばらく見ているとヘドロが蠢いているのに気がついた
「なんかいんのか?」
魚かなにかかと思い中を見てみたくなった
手元にあったバケツの水を雑にぶっかけた
びくんっ
ヘドロが跳ねた驚いたのかもしれない
「生きもんなのか?」
ひったびったうごうご
水をかけたせいかさっきよりも動きが活発になった
「きっしょ」
ドスっ
気持ち悪いので一発蹴りを入れた
死んだのか気絶したのかヘドロは静かになった
「はぁ、釣りするか」
一向に釣れず、30分は過ぎただろうか
後ろに気配を感じる
明らかに人間のソレとは違う、ゾワゾワする
脂汗が出てくる、鼓動が大きく激しく鳴り出した
ぐわっ
後ろで何が大きく開いた
どっ
ここですかさず竿のケツを思いっきり後ろに突いた
厨二病全盛期に、練習した護身術はまだ健在だったようだ
「ーーーーー!!」
声にならない悲鳴のようなものが聞こえる
大きく開いたヘドロの塊が重々しく倒れかかってきた
どべっちゃっ
体に不快感の塊のようなものがかぶさってきた
「っ、、クソが」
塊を思いっきり振り払い、落とした
どっ
ぐちゃぐちゃ
苦しいのかヘドロを撒き散らしながら蠢きまくっている
「ッーー、ーーーー、、ーー」
まだ苦しんでいたのか
「、、、きも」
キモかったから蹴り飛ばしたもちろんみぞおちを
結構軽いのかそこそこ転がった
「ア"アッ、ーーーゴハッ」
やばいなんか吐いた
蹴り飛ばしたからか段々と汚れやヘドロが落ちていくと中にいる生き物の姿がわかってきた
頭部と思わしき部分は汚れてはいるが典型的な美少女と形容でき、しなやかな四肢がまだ未発達の少し痩せている胴から生えている
いわゆるロリっ子だ
つまり、俺は今人間に蹴りを思いっきり決めたと
「た、ーーー、たす、け」
よく考えれば今俺はものすごい絵面なのではないか
一言で言えば犯罪者
いや、割とマジで犯罪者か
さすがにまずい、どうしようか
連れて帰るのはうちは一軒家だから行けなくもないがどうやって連れ帰るか
車はすぐそこだし人目もない
だが、だがだがだが、臭い
ただひたすらにヘドロというかこの世の全てを煮込んでドブに十月十日つけたような臭いがする
連れて帰らないとだが連れて帰りたくない
しかしさすがにこのまま置いていくのは気が引ける
嗅いでみたら意外と臭くないのかもしれない、
「よっと」
しゃがんでみると臭いの発生源に近づいたからか鼻がひん曲がりそうになる
「そーだよなっ、くっさっ」
だがヘドロだったものをよく見ると一般的に美少女と呼ばれるにふさわしいのだろうと再び感じた
ゴクり
断じてやましいことは考えていないが釣り上げた本人としてここは連れ帰らなければならないと思う
「よし、さすがに一旦ヘドロを落とすか」
バシャバシャ
水をかけまくりある程度ヘドロが落ちたように見れたらもう一度臭いを嗅いでみる
鼻を近づけた瞬間
「ん"ッア"ァァ」
ヘドロが落ちたせいか体に染み付いたどぎつい生臭さが顔面を襲った
急いでその場を数歩離れた
顔を服の袖で拭おうとすると服にも臭いがついたのか余計死にそうになってしまった
悶絶してしまったが相手は人間?ださすがに放置はやばい
「っすーーー、んっ」
ヘドロ自体は落ちている
決死の覚悟でロリのことを身に寄せ抱っこをした
ロリを連れて帰りこの場をなかったことにしなくてはという焦りと汚物が眼前にあるという不快感の相容れないふたつの感情が湧いてきた
急いで車に乗せドアを閉める
家まではそう遠くない
アクセルを踏みしめ、あまり車の通らない近所の通りを抜けていく
先程の池とは違う晴れやかな青空と緑が俺のことを覗いていた
やっとの思いで家まで着いた
ロリを抱き上げ玄関ドアを通り、靴のまま風呂場まで連れていく
浴槽に置き、もう一度臭いを嗅いでみる
「っ、、」
相変わらずの臭さが立ち上った
ガシャッジャッじゃーー
シャワーヘッドを手に持ち水をかけた
「んっ」
水をかけたせいか目が覚めたようだ
さすがヘドロからでてきただけはある水をかけられても驚いていない
それに寝起き?だからか目は半開きだ
「ちべたい、」
「大丈夫か?怪我とかないか?」
一応は声をかけてみて体の汚れを流しながら体を診る話しかけているのは会話が可能ならこれからが楽だからだ
だがどこかおかしい、指には水かきのようなものがついているし、さっきまで足だった部位は人魚のような魚の体になっていた
「くちゅぐったい、、」
触られることに慣れていないのか身をよじる
「お前、なんなんだ?人魚か?」
「わかんない、人魚って?なに?」
首を傾げ、こちらに聞いてくる姿はただのロリっ子だ
「んー、、お前みたいな魚っぽいやつのことだ」
「んー、ならそうかも?」
水かきのついた指を顎にあてがい首を傾げる
あまり難しい言葉は知らないようだ
見てて思ったが寝起きだからか元からなのか感情が希薄に見えた
水かきや魚のような下半身からひとまず人魚ということにしておく
シャンプーやらなんやらで体を洗ったが
すんすん、、ん"っ
臭いはどぎついがマシにはなったか
もう少し洗おう
「きもち」
だが不思議だ水や石鹸が目に入っても瞬きひとつしない人魚だからなのか?
「目、痛くないか?」
「?」
しみるということすら知らないようだ
数分後
風呂場から出俺のTシャツを着せておく
「すんすん、ふふっいいにおーい」
俺のお古の匂いを嗅ぎ手をバンザイにして喜んだ
ひとまずは気に入ってくれたようだ
「よかったな」
「いーでしょ!」
何故か誇らしげに仁王立ちでこちらを見てくる
「いーなそれうらやましいよ」
わしわし
ロリに目線を合わせしゃがみ頭を撫でた
「ふふっ」
少し嗅いでみるとしばらく洗ったからか、臭いもいくらか取れたもしくは俺の鼻が死んだか臭いもあまりしなくなった
ふと窓から外を見ると気づけばもう昼だ太陽が真上にある気がする
取ってきたタオルでロリの体を拭く
わしわしわし
「やっ、」
タオルで髪を乾かすのは嫌なのか
「我慢しな」
「やっ!」
ぴょんっと後ろに飛び断固たる拒否を示すと同時に
こめかみ辺りに人差し指を当てこちらを睨んできた
すると
みょんみょん
そうとしか言えない動きでロリのアホ毛が動きだした
「?」
何をしてんだそう言おうとした瞬間
ごっ
足元に物音がした
理解に数秒がかかった何かが上から降ってきたのだ
「まっおまっ」
「んっ!んー!」
ロリのアホ毛がさっきよりもみょんみょんしてる
ごごっ
「いっだっ!なんだよっ!」
みょんみょんみょんみょん
どっごっどどっごごっごご
「あだだだだ」
めちゃくちゃにものを落とされている
身を守るためロリから数歩身じろいだ
ぎっ!
めちゃめちゃ睨んでくる
「ごめん!」
「、、きらい!」
やらかしたぁぁ
ていうかさっきからこいつは何を飛ばしているんだ
ちらっと足元を見ると、、
「ご、ゴルフボール、、石、ごみか、、」
最悪だ、ごみが大量に転がっている
しかもさらに床は石とかごみに付いた泥か土かが床についてよごれている
ロリはどーしてんだと見てみたが、、
「んー、」
相変わらず睨んでやがる
ふと周りを見た
散らかった部屋、汚れた床、恐らくあざになる腕、積まれた漫画、溜まったごみ箱、、
なんか無性に腹が立ってきた
全部こいつのせいだ多分絶対、十中八九、9割9部9厘、つまりこいつのせいだ
さすがに叱ってやろうと気持ちを切り替えた
「やめっ」
顔など守るべき部位を守りながら近ずいてくと
みょっ、、、
ロリのアホ毛のみょんみょんが急にしなびてやれ茎に垂れ下がった
その瞬間
ゴッ
鈍い音と共に空中にあったゴルフボールがロリの頭に落ちた
「っっっいっだっぁぁあ"」
「ちょっ大丈夫か?」
悶絶、そうとしか言えない動きの合間に見える表情には疑問と混乱と涙が見える
「なんでっ!いだいっなっ、いたっえっ」
その場にうずくまりながら頭を抱え泣いている
「大丈夫大丈夫よしよし、いたいのいたいのとんでけ」
さすがに可哀想だから苦しむロリを優しく抱きかかえ
「うっうっ、いだいよおじさん、なんでっうう」
かなり効いたのかこちらに涙で濡れた瞳を向けてくる
「いたいよなよしよし、けどな?お兄さんもそれくらい痛かったんだぞ」
頭を撫でつつ叱りも入れたこれが正しいのかは分からない
「うっ、こんなに痛かったの?」
涙を拭い再びこちらに問いかける
「いたいいたいだよ」
腕をさすり痛がる素振りを見せる
「けどおじさん泣いてないよ」
痛みから気が逸れてきたのか涙は止んだ
「かっこいいお兄さんは泣かないで笑うんだ!」
にかっと歯をみせ笑う
「そうなの?けど、ごめんなさい」
しゅんとした表情でこちらに謝罪した
「えらいえらい、よしよしいたいのいたいのとんでけ」
「わたしもやりたい!いたいのいたいのとんでけ!」
ロリっ子が拙い操作で俺の頭を撫でる
あたったのは腕なんだが
「ありがとうな、もう治ったよ」
にいっ
ロリっ子の口角を指で上げ俺も笑った
「にっ」
ロリっ子も笑った
「タオルつかっていいか?」
濡れた髪を見て思い出した俺は風呂に入れていたんだ
「いーよ!」
頭を差し出しこちらに委ねる
タオルを頭にかぶせわしゃわしゃと水気を取っていくと普段俺が使わないリンスやトリートメントを使ったからかかわいていくと同時にふわふわの髪になっていくのがわかった
「よし!かわいたぞ」
「ふわふわしてる!ふわふわだいすき!きもちいー」
ふんふんと花歌を歌いながら髪を触っている
にこにこと笑った表情を見ると癒される
思えば初めよりも感情が豊かへと変化している
「よかったな、ろr」
ふと思った
そういえばこいつの名前ってあるのか
「なぁロリっ子、お前の名前ってなんだ?」
こちらに視線を移し首を傾げた
それと共に喜びの表情から疑問の表情へと変化した
「なあえ?」
キョトンとしていて"名前"というもの自体を理解していないようだ
「なーまーえ、わかんないのか?」
「うん?わかんない」
名前がないのも呼びづらい
「うーん、」
こいつの特徴を頭の中で並べていく
ロリ、アホ毛、明るい茶色の毛、ヘドロ、
「ヘドロか、、どろこってのはどうだ?」
「どろこ?」
聞いたと同時に考えるように左の斜め上の空を見た
「どろこだ嫌か?」
「うーん、やじゃない!かあいい!どろこどろこ」
可愛いじゃないか
ぐうううううう
小動物のような喜びを噛み締めた瞬間猛獣のような唸り声が聞こえた
お腹をさするどろこを見て気がついた
「もう昼か」
どろこだけじゃなく俺も早朝から何も食べていない
「あー、お腹すいたよな、なんか食うか?」
「なんでもたべる!」
きらきらとした目でこちらを見つめている
「そうか、そうだ昨日の寿司食うか」
「すし?たべる」
ガチャンと寿司の乗った皿が置かれた
昨日俺が食べなかった握り寿司が乗ってる
「おさかな?」
「そうだよ」
池から出てきただけに魚はだめなのかと思ったが
「、、、」
「やっぱり魚は食べないのか?」
「おさかな!たべる!大好きなの!」
「おう」
まじかよ食うのか
「はぐはぐ」
寿司を両手に持ち口に次々に突っ込んでいく
「ほいひい!ほえも!んーー!」
さながらほっぺが落ちるようにとろんとした表情へとなっていく
皿を見ると余程腹がすいていたのか口が寿司で膨らんでいくと同時に皿の寿司が消えていく
「はぐはぐ」
顔いっぱいに米がついている
「汚ねぇな」
「ん」
俺はドロ子の顔についた米を顔から取り
「しょっぺ」
食べた
「くすぐったい」
「あ!お前俺の分は?!」
更にはもう1粒も残っていない
「んーんー?」
口いっぱいに寿司を頬張りこちらを覗いてくる
「かわいいな」
頭を撫でるとにこにこと笑っている
できる限り守っていきたいそう思えた