買収の闇
「そんな事調べているんですか?」
「はい、JOLの銀座のクラブの売掛金も
集計してあります。
取締役の個人的なお付き合いの女性のデータ
もこちらの手にあります」
「えっ!」
「脅してどうこうする訳ではありませんが、
前向きに再建に取り組んでくれる
取締役でないと融資はできませんから」
「は、はい。善処します」
須賀は慌てて電話を切った。
「ほう、ずいぶん脅したな」
文明が笑っていた。
亮は次に絵里子に電話を掛けた。
「おはようございます。すみません」
「ううん、大丈夫よ」
「Oホテルって旧大原財閥系ですよね」
「ええ、そうよ」
「ルートありませんか?」
「あるわよ。後で電話するわ。
でもお父さんに聞いても良いんじゃない」
絵里子はすぐに電話を切った。
「おはようございます、亮です」
「お父さん、大原物産に知り合いいますか?」
「うん、Oホテルには家具や
調度品を納品している」
「そうですか・・・」
亮は相手がお客では話が難しいと思った。
「どうした?」
「実は・・・」
亮はJOLホテルの買収で難航している事を伝えた。
「わかった、社長に電話をさせる」
秀樹はすぐに電話を切った。
「亮、私。今調べたら大原物産の
株5%を持っているわ。
社長も良く知っているから話は出来るわよ」
「わかりました。ありがとうございます」
上場会社の5%を持っているとは
絵里子のすごさには驚いていた。
大原物産は昔、石炭の輸入を行っていて
巨万の富を築いたが石炭の消費が落ちて
経営の危機に陥ったが、現在は繊維の販売と
輸出で安定した売り上げを伸ばしている、
中堅商社である。グループの中にはOホテル、
洋服のファストブランドを経営している。
「團亮さんのお電話ですか?」
亮に電話がかかって来た。
「はい」
「大原物産の大原博と申します」
「あっ、すみません突然に」
「お父様から電話がありましたが、
どういったご用件ですか?」
亮はJOLの再建でJOLホテルの
買収に難航している話をした。
「買収の件は船本専務に任せたきりで
条件もかなり厳しいので困っていたところです」
「実は昨日、船本専務とJOLホテルズの
小金社長が銀座のクラブ華で飲んでいました」
「えっ、弊社は過剰な接待を禁止しています。なんて事を」
「いいえ、支払いは小金社長がしたようです」
「売る側がですか?
変ですね。船本に聞いてみます」
「はい、今の状況を教えてください」
「一度電話を切らせていただきます」
大原が電話を切った。
亮は大原と父の関係が気になっていた。
まもなく大原から電話が有った。
「團さん、当社はJOLホテル買収からから身を引きます」
「えっ、良いんですか?」
「今、お恥ずかしながら船本を問いただした所、
おかしな所が有ったので・・・」
「わかりました。
その話は聞かなかった事にします」
「ありがとうございます。いきなり絵里子さんと
團さんから連続で電話が有ったので
驚きました」
「すみません、父との関係は?」
「先代の社長の時代、倒産寸前の当社を
あなたのおじいさん團拓馬さんに
資金援助をいただいて助けてもらった事が
有るんです。おかげで衣料品の海外生産の
波に乗り売り上げを伸ばしています」
「そうですか祖父の代と言えど、
お役に立ってよかったです」
「亮さんの噂をかねがね伺っています。
ずいぶんご活躍とか」
「いえいえ、若輩者で周りに迷惑をかけております」
「あはは、謙虚な方ですね。一度お会いできませんか?」
「私もそう思いましたぜひ」
亮は丁寧な物腰の大原に会ってみたかった。
「亮、上手くいったようだな」
文明が亮の肩を叩いた。
「はい、須賀さんに連絡をしてみます」
亮は須賀に電話を掛けてOホテルが
買収から手を引く旨を話した。
「本当ですか?」
「今社長の大原さんと話をしました」
「わかりました。すぐに小金社長と話しをします」
須賀は慌てていた。
「須賀さん、今から岩田観光さんと
買収の話を進めていいでしょうか?」
「は、はい。優先取引契約の相手が
手を引かれては岩田観光さんに
お願いするしかありません」
「わかりました。進めさせていただきます」
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一方、大原物産の社長室では大原と船本が話をしていた。
「船本さん、昨日あなたが小金社長と
銀座のクラブで飲んでいた事を知っているんだよ。
このままだと、痛くない腹まで探られますよ」
「実は・・・」
小金社長から指名された人間を高額で
継続雇用する事、取引業者と継続契約をする事、
1億円のリベートバック要求が有った事を話した。
「では、小金社長から1億円のリベートバックの
話が有ったんだね」
「はい」
船本が頭を下げた。
「では、うちの会社には問題ないと・・・」
「はい」
船本は大原の目を見て答えた。
~~~~~
10時になると亮と文明が会議室に呼ばれた。
玲奈は岩田観光とルーセントホテルズの
契約書を持って亮と文明の後を付いて行った。
亮が前日JOLホテルの会議が
不調に終わった報告をすると
千住常務が当然起こる事だと笑っていた。
「やはりそうですか。何か密約が有ったようですね」
「先ほど大原物産の社長と話をしたところ、
JOLホテルの買収から手を引くそうです。
再建委員の須賀さんと話した所こちらで
進めていいそうです」
「わかりました。早速契約を進めましょう」
岩田時子が言うと契約書を玲奈が時子に渡した。
「すみません、昨日メールで送った英文の
契約書と同文ですので確認してください」
時子は渉外弁護士柏原に渡し契約書を確認していた。
「問題有りません、調印をお願いします」
弁護士は時子に言った。
互いに1通ずつ書類に印鑑とサインをして
印鑑証明書と署名証明書を提出した。
「では、次に株式譲渡証明書。
融資契約書に署名いただきます」
柏原は書類を確認して契約が終わり
岩田時子と劉文明が握手をした。
「岩田専務、JOLホテルとの交渉はお任せします」
「あっ、團さんこちらの書類に署名捺印お願いします」
時子は取締役就任承諾書を亮に渡した。
「はい?」
「すでに取締役会で承認しています。
社長が病気療養のために私のアドバイザー的な
立場になって欲しいんです」
亮が悩んでいると文明が肘でわき腹を突いた。
「軌道に乗るまで監視役に入れ」
「は、はい」
亮は仕方なしに署名捺印をした。
「それでゴルフ場の結果はいかがですか?」
「会員権の価格が今50万円で2000人、
その他15億円でいかがですか?」
「分かりました、すぐにお金を用意します
請求書をお願いします」
「承知いたしましました。
お食事でもいかがですか?」
「僕はこの後仕事がありますので・・・」
亮は時子の誘いを断った。
「玲奈さん、通訳に文明と食事してください」
「わかりました」
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亮がホテルイワタを出るとアイザックから
電話が有った。
「亮、今から帰って仕事を片付ける。
みんなによろしくな、また会おう」




