二度目の強盗犯
「小妹、チャンの様子は?」
亮はチャンの事が心配で電話をかけた。
「たいした事無かったので3針
縫って病院を出たばかり」
「病院代は?」
「後で亮が払うと言って出てきた」
「あはは、良いよ。チャンと連絡取れるかな?」
「うん、脇にいる」
「じゃあ、電話を代わってくれ」
亮に言われてチャンが電話に変わると
「チャンさん、店を守ってくれて
ありがとうございます」
亮はとても優しく言った。
「と、とんでもない、礼を言うのはこっちの方だ
これで安心して国に帰れる」
「警察が明日、調べに行くようだから朝一の
飛行機で帰ったほうがいい」
「1つ聞かせてくれ、どうして俺たちみたいな
泥棒にそんなに優しくしてくれるんだ」
「そうですね、店に入って来た時ピストルを
持つ手が震えていました。
あなたたちが根っから悪い人じゃなかった」
「ありがとうございます」
「世の中には善人ぶって人を苦しめ人を殺す
人間がいる、そんな奴らから見ればあなたた
ちは善人だ、もう2度と会わないけど、家族とお幸せに」
「謝謝、謝謝・・・・」
チャンは目に涙を浮かべ何度も何度も亮に礼を言った。
~~~~~~
亮はCホテルに戻りカードキーで部屋に入ると
「お帰りなさい」
一恵が入り口に立っていた。
「一恵さん起きていたんですか?」
「はい、心配でおきていました何かあったんですか?」
「大丈夫ですよ、この服のお陰で
体が良く動きました。ありがとう」
「良かった」
一恵は亮の胸に顔をうずめた。
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翌朝、8時に亮は美咲に
電話をかけ強盗団の話をした。
「そう、一文字たちの仕業だったのね」
「ええ、でも彼らは直接命令を
していないので無実です」
「そうね、まったくなんて
悪知恵の働く連中なのかしら」
「美咲さん僕たちも知恵が働いていますけどね」
「うふふ、そうね」
「それで今日は忙しいので昨日捕まえた連中
うまく処理してください、建造物侵入未遂ですけど
火薬類取締役法違反、銃刀法違反で捕まえて
余罪が出てきそうなので起訴は出来るでしょう」
「まったくしょうがないわね」
「すみません」
「犯人の余罪にもよるけど本部長賞と金一封が出ると思うわ」
「えっ、金一封っていくらもらえるんですか?」
亮はいくらもらえるか気になって顔がほころんだ
「1000円」
「たった1000円ですか?」
「1000円の図書カードかもしれない」
亮は危険を犯してがんばる現場の警察官が気の毒に思えた。
「1000円より価値があるのが賞状なの、
賞状一枚で出世のスピードが変わるのよ。
おそらく今回の事と前回の件で巡査長になるわ」
「なるほど」
亮は出世などどうでも良く、公務員試験を
受けて警察の捜査員になったのは
原巌に頼まれ、ただ自分が正しい事を
するための身分証だと思っていた。
「それでここだけの話、亮の公務員試験結果は満点で
5月中に二次試験に面接と論文が有って
7月に正式採用なんだけど、
すでに警察庁に採用されている人間が
国家公務員試験を受けた前例が無いので、
人事院が判断に困っている様よ」
亮が美咲への連絡を終えると支度を終えた一恵が
窓際の椅子に座っていた亮にキスをした。
「亮、10時にホテルイワタですね」
「はい、さあ朝ごはん食べに行きましょう」
「そう言えば昨日、みんなどうしたかしら?」
「玲奈さん?姉たち?」
「ええ、それに中村さんと麻実ちゃん」
「今日はみんなの話を聞くようかな?」
亮と一恵がブッフェのテーブルに付くと
小妹から電話がかかってきた。
「チャンたち今、国に帰って行ったよ」
「了解、チャンの怪我の具合は?」
「うん、問題ない。亮にもらった抗生物質を
たっぷり渡しておいたから」
「ご苦労さま。今日は休んでいいよ」
「うん、そうする。それで、
玲奈さんの件なんだけど・・・」
「どうした?」
「いいや、本人に聞いて」
小妹は思わせぶりに途中で話をやめた。
亮は心配だったが本人に
恐ろしくて聞くのが嫌だった
「わ、わかったよ。本人に聞いてみる」
「そうして、私たちは夕方までのんびりしているわ」
「うん、たまには蓮華と桃華を遊びに行かせるといいよ」
「そうね、じゃあスポーツウエアでも買いに行ってくる」
小妹の電話を切ると亮は
ドキドキしながら玲奈に電話をかけた。
「おはようございます」
「おはよう、亮」
玲奈は元気な声で返事をした。
「昨日はどうでした?」
「会って話したい・・・」
亮は何かが有ったのかとドキドキ
しながら玲奈に指示をした。
「分かりました、10時にホテルイワタに
来てくれますか
社長と打ち合わせがあります」
「分かりました」
電話を終えた亮は席に戻ると
テーブルにバイキング料理が並んでいた
「ありがとう、一恵さん」
「いいえ」
「今日のホテルイワタへは玲奈さんと行きます」
「えっ?」
一恵は悲しそうな顔をした。
「昨日、一恵さんはレストランで
岩田さんに会っているので
説明しにくいもので」
「そ、そうですね」
「1時からの五島商事で会議があるのでその間、
デビッドに送ってもらったD&R社とバイオ燃料の
資料を翻訳して葉子さんに渡して下さい」
「了解です、ボス」
一恵は立ち上がって敬礼をした。
「ではよろしくお願いします。一恵さん」
亮は朝食を取りながらアメリカの
D&R社との日本の新会社の関係、
中国の新会社設立をどうすべきか考えていた。
「おいしいですね、ここのパン」
一恵が微笑んだ。
「うん、おいしいけどもっと
美味しいパンを知っています」
亮は緑川五郎が作ったパンの方が
美味しいと思っていた。
「わあ、食べてみたい、パンの味が
そんなに違うんですか?」
「それは酵母です、パンは発酵させてから
焼くので良い発酵が出来れば
美味しいパンが出来るんです。
五郎さんは良い酵母を持っているんです」
「素敵、機内食に使えばいいですね。
飛行機に乗らないと食べられないパン
受けると思います」
「そうか、パンか気がつかなかった」
「ハーブティはいかがですか?」
「今ではハーブティと言ってブームになっていますが、
僕のご先祖様は薬草茶として
製造方法を古文書に残しているんです、
元気になりますよ」
「味は?」
「マズイ!それに精液のような臭いがする」
亮がしかめっ面をすると一恵が笑って言った。
「うふふ、今度飲ませてください」
まずいと言われてそれを飲みたいと言う
一恵は本当に変な女性だと亮は思った。
「ん?それともそっちの臭いが好きなのか?」
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9時45分にホテルイワタのロビーに着いた
スーツ姿の玲奈は亮を探した。
「おはようございます」
亮は後ろからヒップラインがはっきりと出た
タイトスカートの玲奈のお尻を撫でた。
「あっ、おはようございます。
どうしたんですか?急に」
亮は昨日の夜の事が気になって
玲奈のお尻思わずを触ってしまった。
「すみません、あまりに良いお尻していたので・・・」
亮が頭を下げてすまなそうな顔をすると
「いいえ、良いんです。もっと触っていいですよ」
玲奈は嬉しくて優しい顔で微笑んだ。
「さて、行きましょう、玲奈さん」
亮はフロントで名前を言うと
日本庭園が観える会議室に通された。
会議室のテーブルに五人の人が座っており
亮と玲奈にその目が注がれた。
岩田時子がセンターに座っていて
その向かいに亮と玲奈は座った。
「お待たせしました」
「いらっしゃい、実は社長が体を壊して専務の
私が代理を務めさせていただきます」
「はい」
岩田時子は会議の場にいる人間を一人一人紹介した。
「さっそくですが、團さんにうちのホテルの
売り上げる手伝いをお願いしたいんです」




