狙われるラブ・ポーション
会場がざわめいている中
五島商事の内村昭二が和美に呼ばれ
音頭を取って乾杯をすると
会食が始まった。
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玲奈の妹里子のピアノの演奏の
元に歓談が進んでいった。
亮のもとには人だかりが出来上がっていた。
「亮君、本当にそんなことが出来るのかい」
まず内村が口火を切った。
「はい、技術的に可能です。触媒のアンモニア
を使ってコンプレッサーで圧縮します
その動力は太陽光発電と風力発電を使います」
「なるほど、しかし北極圏では風力の
プロペラは凍り付いてしまうだろう」
「はい、その為にフードをつけた
直径2mの小型プロペラを使います。
つまりジェットエンジンの逆ですね。
それをハニカム状に組むんです」
「なるほど」
「ただあくまでドライアイスを地中に
埋めるのは気温を下げるためで
酸素を作るためには植物を植えなくてはいけません」
「うんうん」
「山に植える植林はもちろん海草も
植林しようと思っています」
「えっ?海草?」
「はい、実はバイオ燃料は
海草からも出来るんです。
海草は気候に左右されませんから
安定供給が出来るんです」
「すばらしい」
内村が感心していると
いなほ銀行頭取の横山が質問した
「この設備にはいくらお金がかかるんだ?」
「パイロットプラントに
100億円以上はかかると思います」
「100億円か」
横山は高いような気がした。
「それがアフリカや中東でも利用できるんです」
「ん?」
「まずこのプラントは緑の少ない乾燥地帯の
地下50mところに作ります」
「うん」
「緑の少ない砂漠地帯の地下にドライアイスを
貯蔵し地表温度を下げて土の水分の蒸発を妨げ
ドライアイスの気化した時の
二酸化炭素が植物の育成促進になって緑化が進みます」
「なるほどそれはいい、それだけ大規模な事業に
なれば現地の雇用促進になるしな」
「はい、地下50メートルにプラントを
作るための穴を掘る技術は
日本が教えていきます」
「そうなると、プラント輸出、
トンネル掘削技術と色々あるな」
横山の目が輝いた
「はい、日本に及ぼす経済効果は
年間1兆円以上世界規模で考えれば
何兆円になるか分かりません」
「うん、問題はその資金だな」
横山は資金に乏しい国の事を考えた
「頭取50メートル穴を掘った時何が出るでしょうか」
「少なくとも水は出るだろう、
いやもっと凄いものが出るかもしらん」
横山はドキドキして返事を返した。
「はい、もし水が出たら水を使って
緑藻バイオ燃料を作ります」
「はるほど、アフリカは有り余る
太陽の日差しがあるからな」
「はい、しかもアフリカで資源開発で
あちこちに穴を開ければトラブルが起きます。
でも温暖化防止事業の工事をしていて万が
一鉱産物が出ればその地域の貧困は収まります」
亮が笑った
「ひょっとしたら君は・・・」
横山は笑って返事をすると
横山の隣にいる男が頭を下げた。
「團君、紹介しよう。
JOLの再建特別委員の須賀さんだ」
「はじめまして、團亮です」
「いや、突然あなたの話を聞いて驚きました」
「いいえ」
「頭取に読ませていただいたJOLの
再建案、本当実現可能ですか?」
須賀が亮に聞くと亮は横山の顔を見た。
「團君大丈夫だ、須賀さんは
うちの銀行の役員だ」
横山が言うと
「はい、チャーター便の月間320便の契約が
出来れば5000億円の融資、
バイオ燃料会社にJOLが出資し
上場で借金を消す計画です」
「團さん、あなたがそれをできると言うのですか?」
須賀は驚いて聞いた。
「はい」
亮の真剣な眼差しは千沙子と
お酒を飲んでいる文明を手招きした。
文明が笑いながら亮のところへ
来ると亮の肩を叩いた
「亮、おめでとう」
「ありがとう、文明。紹介する、
いなほ銀行の横山頭取です」
「ユニオンチャイナグループの
息子の劉文明です」
文明は横山と須賀と握手をした。
「この先は正式に会議で話し合いましょう」
亮が言うとみんなが納得した。
「文明、今日来るとは聞いていなかったよ」
「あはは、亮を驚かそうと思ってな」
「違うだろう、千沙子姉さんに
会いたかっただけじゃないか?」
「まあな、今夜はお父さんとお母さんに
挨拶が出来て嬉しいよ」
「ははは、まさか」
亮は文明が本当の兄弟になりそうな
気がしてめまいがしてきた。
亮はアイザックを呼んで劉文明を紹介した。
「アイザック、香港に行かなくて済んだようです」
文明とアイザックは握手をした。
「亮、これが上手くいけば1ドルが入って来るぞ」
「あはは、1ドルですか」
亮は石油業界のリベートの意味が良く分からず
石油業界のリベートは仲介者に1トン
当たり幾らかのリベートを渡す慣習が
ありその契約は取引が続く限り継続される事が多い。
つまり、月間100万トンの取引が有った場合は亮のもとに
約100万ドルのお金が振り込まれる事になる。
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その頃、目黒の日坂の妻のマンションを出た徹は
一文字の指示で歌舞伎町のラブポーションに入った。
「あれ?今日は女の子少ないな」
徹は隣に座った慶子に言った
「うん、みなさん今日は用があるみたいですね」
「そうなんだ、ここの女の子は凄く感じが
いいんだけど社長ってどんな人?」
「どんな人って・・・普通の人です。
お父さんみたいな」
ラブポーションで他の男性を客の前で
褒めないように
教育を受けている慶子は徹に話をした。
「そうか、お父さんみたいな人か」
徹は腹の出た親父を思い浮かべた。
「慶子ちゃん、いい臭いするんだけど」
「うふふ、うちのホステスは4種類の
オーデコロンをつけるよう決まっているの」
「それどこで売っているの?」
「市販はされていないわ、完全オリジナルだそうよ」
徹はラブポーションの経営者がかなり切れ者だと感じた。
「じゃあかなり福利厚生もいいんだろうね」
「はい、とてもいい職場です」
慶子はニコニコと笑って答えた。
そしてボーイを呼ぶと徹に分からないように
ピンクのカードを渡した。
ラブポーションは、ホステスのスカウトを
防ぐためにしつこく聞いてくる
客が来たとき、ピンクのカードを
ボーイに渡すようになっていた。
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「亮、おめでとう」
絵里子と美也子が亮に声をかけて来た。
「ありがとうございます」
亮は二人お土産のヒスイのブレスレッドを渡した。
「二人ともまったく同じものですけど良いんですか?」
「もちろんよ」
絵里子が美也子の顔を見てうなずいた。
「ママ、今夜金融庁と財務省の人が行くので
飲ませてあげてください」
「分かったわ」
美咲と話をしている落合を亮が指差すと絵里子は
「じゃあ、彼を紹介してください」
「はい」
「亮、役人は癖になるからあなたが
一緒の時以外は飲ませちゃだめよ」
「はい、分かりました。今回だけで」
絵里子は自分の会社を持った亮に
男の世界を教育する事に決めていた。
落合のところに絵里子と美也子を
連れて行き紹介をすると
妖艶な二人を見た落合と長谷川は
あまりの色気に顔が緩んでいた。
亮はその場を離れ美咲のところへ行った。
「美咲さんおかげさまで免許が
下りましたありがとうございます」
「いいえ、やっぱり落合に嘘をつかれていた
事を思い出すと悔しい」
美咲はあの時落合の嘘を知っていたら、
初めての男は亮になっていた事を
確信していた。




