一文字の手段
六本木に事務所にいる
一文字のところに松川組の若頭の
須田から電話がかかってきた。
「一文字さん、千野は香港の飛行場で死んでいました」
「えっ、本当ですか?死因は?」
「心不全でした」
「それでどうしましょうか?」
「うん、代わりの吉野と言う人間を
そちらに行かせます」
「分かりました」
須田は千野が死んで一文字の香港から運んでいる
金の様子が知りたかった。
「いえ、それよりお金で動く政治家がいませんか?
手塚先生だけじゃ心配なので」
「そうかそれなら阿藤幸太郎元総理はどうですか、
金のためなら何でもします」
「でも元総理では力が無いのでは?」
「いや阿藤先生幹事長時代に今の
議員を昔面倒見ていたそうです
それに総理大臣時代に中国に太いパイプを作っていて、
今は中国ビジネスの口利きで大儲けしている。
一文字さんも利用価値があるのではないですか?」
「分かりました是非紹介してください」
「うん、阿藤先生の秘書から直ぐに電話をさせます
「はい」
「それとDUN製薬の乗っ取りはどうしますか?
今度は白血病の特効薬を開発した
そうですけど」
「ええ、情報があって株は買っていたのですがあれ
以来ガードが固くて」
DUN製薬乗っ取りを失敗して一文字は恨んでいた。
「じゃあ美宝堂はどうですか」
「美宝堂ですか?」
「ああ、美宝堂の團一族がDUN製薬のオーナー一族です。
奴らを抹殺すればDUN製薬はガタガタになります」
「分かりました、直ぐに調べて連絡します」
電話を切った一文字は美宝堂の話を聞いて
後輩の高田義信を思い出した。
「高田君か?一文字だ」
「あっ、先輩お久しぶりです」
「今、どうしている?」
「相変わらずブローカーの真似事をしています。
前科持ちではまともな
職には就けませんでしたからね」
「そうだなどうだ、うちの会社を手伝って
くれないか?」
「本当ですか?」
「うん、色々あって優秀な右腕が欲しいんだ」
「行きます、行きます」
優秀な右腕と聞いて義信は舞い上がっていた
「すぐに、六本木の事務所に来てくれ」
「はい!」
「ところで、美宝堂をまだ恨んでいるか?」
「潰してやりたいですね」
偽ブランド販売の容疑で高田を告訴し
逮捕に至らせたのは当時ブランド協会の
会長の團秀樹で、その調査をしたのが亮だった。
~~~~~~
「亮、仕事が終わったわ」
美咲から電話が掛かって来た。
「了解です。自宅に向かいます」
「はい、待っています」
美咲の杉並の家に着き応接間に案内された
亮が待っていると美咲が飲み物を運んできた
「すみません、父は今帰ったばかり
少し待ってくださいね」
「はい」
亮は自宅で警察庁警備局局長が現れると
言うので緊張で掌に汗をかいていた。
「いや、遅くなって申し訳ない」
そう言って美咲の父親、原巌が入って来ると
亮は立ち上がり、巌は亮と握手をして肩を叩いた
「体調はどうだね。亮君」
「はい、痛みがすっかり取れました」
「最初に言っておこう、君を
追尾したのは内閣情報局の車両だった」
巌は椅子に深く座った。
「そうですか、どういう理由で?」
「君の人間関係を内閣情報局が
調べて、危険人物と判断した」
「えっ!」
亮は驚きの声を上げた
「あはは、冗談だよ」
「や、やめてください。真顔で冗談を言うのは」
「どうやらお偉いさんは君に興味があるらしい
でも私の部下だと伝えたら大人しくなった」
「ありがとうございます」
「それで私に話があると言うのは?」
亮は雪の夫の剛がFBIに射殺された事を話した。
「うん、その話はFBIから報告が来ている、
そして亮君が身を挺して爆弾を処理した話も
美咲から報告を受けている」
「この話は業務上有森雪さんが偶然に
見つけた事とご理解ください」
巌は一瞬戸惑ったが
「うん、わかった」
亮はパソコンを開くとリストを開いた。
「こ、このリストは?」
巌は見た事のある名前を何人も見て亮に聞いた。
「警察の裏金に関わっている人の名前です」
「なんていう事だ」
「雪さんはストックされている銀行も突き止めました、
そして出し入れの記録も」
巌を腕を組み天井を見上げた。
「やり方は色々あるな、長官官房と話をして
内部監査で全員を処分、検察と組んで一部を摘発」
巌が言うと亮は首を傾げた。
「はい、でもそのお金が何処まで流れているかですね」
「ああ、検察の人間でも全員潔白とは限らない」
「はい、疑いだすときりが無いですね」
「そうだ、その通りだ。
人が人を信じられなくなっている・・・警察までも」
巌は意を決して美咲に言った。
「美咲!お前は特別班を組織して
リストにある人間を調査しなさい」
「はい」
「人選は慎重に、それと有森さんも
手伝ってもらえないかな」
巌が目を細めて穏やかな言い方を
すると亮の顔を見て確認した。
「はい、分かりました」
「私は、岡村官房長と話を付ける、
次期警視総監と言われている彼なら
上手く動いてくれるはずだ」
亮と美咲はその言葉に原巌が
将来警察庁長官になることを確信した。
※官房長と言う役職は警察庁長官
次長に次ぐ三番目の役職でである。
そして、亮は巌に一文字と雪の複雑な
関係を説明し一文字にリストを
渡すように脅かされている事を話した。
「わかった、その一文字に大阪の官僚殺人の
容疑者の一人として見張りを付ける事にする。
亮君、美咲いいな」
「はい、ありがとうございます」
亮が立ち上がって頭を下げた。
~~~~~~
「美咲、亮君はいい男になったな」
「そう?どこが?」
「なんかしっかりしてきた」
「そんな事、私たち警察キャリアだって
同じ年でもしっかりしているけど」
美咲はわざと否定的な事を言った。
「まあそりゃあそうだが・・・お前たちの
関係がどうなのかなと思って」
巌はオドオドと返事をすると
怒りが収まらない美咲は巌に食って掛かった。
「まったく、私用で公安を使うんだから」
「いや、お前と亮君の関係が気になってな」
「私は亮の事が大好きよ、でもこれは
亮と私の問題もう少し時間をちょうだい」
「分かった」
巌は強気の美咲の言い方に仕方なしに返事をした。
「それで内閣情報局はなんて言っているの?」
「うん、彼を諜報部員にしたいらしい」
「やっぱりスパイか」
「あの若さで中国共産党幹部と友人で
劉泰平に息子と呼ばれているらしいじゃないか
内閣情報局としては今後の
日中間系を踏まえて裏の情報が欲しいらしい」
「そうね、でも亮は友人を裏切るような男
じゃないからスパイは出来ないわ」
「うん、私もそう思っている」
「それに中国だけじゃないしアメリカ
とのパイプはもっと太いかも」
美咲はクスクスと笑った。
「確かにそうだ」
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亮は美咲の家を20時に出ると
渋谷に向かい渋谷で一恵と会い
マッスルカーブへ歩いた。
「亮さん、これから忙しくなりますね」
「ええ、でもたぶん大丈夫ですよ。
皆さん優秀だから」
「はい、そうですね」
「もちろん一恵さんもです」
「ありがとうございます、
差し出がましいようでしたが
マネージャー候補の方が現地で待っています」




