華たちの復讐
グッド・ジョブ媚薬4
2日前
「荷物が到着しました」
千野からかかってきた
電話を一文字が受けた。
「うん、よしわかった」
一文字は横浜の倉庫に向った。
倉庫のシャッターが上がると
一文字と千野が入ってきた。
そこには一コンテナ分の箱が山積みになっていた。
「シャンプー5万本とリンスが5万本、
白髪染め1万本、パーマ液が1万本です」
「わかった、すぐに作業に入れ」
「分かりました」
「これで100kgの薬が作れるな」
「はい、すでに実験済みです。残りのシャンプーとリンス、
白髪染めは各支店に送ります」
「うん、何日でできる?」
「今夜、ここから茨城の作業場へ運んで
2~3週間でできると思います」
「よし、できたらすぐに販売だ、
準備はできているな」
「はい、売人を集めてあります」
「そうか、さすが千野、松川組から
ヘッドハンティング
したかいがあった。頼むぞ」
「お任せください」
「まさか、教会で麻薬を売るとは
誰も思わないだろう」
「そうですね、さすが会長です」
「これで日本は俺の物だ。あはは」
一文字は誇らしげに笑った。
その近くに黒いSUVが停車して様子を伺っていた。
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亮たちがJFA空港をたち水平飛行
移りシートベルトを緩めた。
この日秋山はファーストクラス担当で
亮に話しかけてきた。
「お久しぶりです、團さん」
にっこりと笑った秋山の笑顔が
営業用か本心か亮は疑っていた。
「秋山さんお元気ですか?
何年ぶりでしょうか?」
「10年です」
秋山は1年前亮が悪徳ホスト
徹の魔の手から救った事を
知らず客に笑顔を振りまいて
淡々と仕事をしていた。
「あら、彼女。亮の元カノじゃない」
隣に座っていた美咲が囁いた。
「秋山良子さんです、美咲さんが逮捕したホストの
徹の被害者の一人です。それと元カノじゃないですよ、
その前に別れたんですから」
「あはは、逃げられたんだね」
亮が黙っていると後の席で小妹が
ニヤニヤと笑って聞いていた。
「亮、住む所決まった?」
美咲が心配して聞いた。
「まだです」
「どうするの?日本に着くまで後10時間
しかないわよ」
「そうか、しばらくマンガ喫茶で暮らします
読みたい漫画が有るから」
「嘘?!」
美咲が驚いて口を押えると
小妹が体を乗り出した。
「亮、本当にマンガ喫茶なの?」
「あはは、冗談だよ。一恵さんの事も有るし」
「そうだね」
「あのう、私も何処へ行ったら良いか・・・」
小妹の隣にいた一恵が聞いた。
「困ったわ、みんな住むところが無いなんて」
「しばらくホテル住まいかもしれないな・・・
帰国したら不動産屋に行って物件を探さなくちゃ」
「團さま、お電話が入っております」
秋山が来きて言った。
飛行機に電話とはファーストクラスは
凄い。
「亮か?」
電話の主は飯田だった。
「はい、お久しぶりです」
「そうか、生きていたか。
電話が繋がらなくて心配したぞ、
さんざん手を回してこの飛行機に
乗るのがわかった」
「はい、ご心配をかけました。
スマフォを無くしてしまって」
「うん、うん。」
「渋谷は殺されそうになったので
当分は渋谷のマンションの方へ戻れないんです」
「うん、そうだろうな、それで市ヶ谷の家に
住まないか?」
「飯田さんの家ですか?」
「ああ、金を貸したやつが返せなくて
家を貰ったんだよ」
「そうですか、じゃあ少しの間お借りします」
「ああ、ずっと住んでいて良いぞ。
とりあえず飛行場へ迎えを行かせるからな」
「ありがとうございます」
「うん、じゃあな」
相変わらず強引な飯田が
電話を切ると亮は手を握りしめた。
「よし!マンガ喫茶返上だ」
「何か良い事あったの?」
美咲が聞いた。
「飯田さんが市ヶ谷の家を貸してくれるそうです」
「良かったわね」
小妹と一恵が小さく手を叩いた。
「狭くても一戸建てならプライバシーが保てますからね。
それに市ヶ谷なら新宿でも銀座でも行くのに便利です」
「そうね」
美咲がうなずくと亮は体をひねって小妹の方を向いた。
「小妹、帰ったら大掃除だぞ」
「うん、肉体労働は得意だから大丈夫よ」
「私は仕事柄かたづけ得意です」
一恵は行き先が決まったせいかやっと顔に笑顔が戻った。
「ところで、一恵さん実家は何処ですか?」
「茨城の稲敷市です」
「ああ、霞ヶ浦のところですね」
「はい、ご存知ですか?」
「はい、行った事はないですが」
「ねえ、一恵さん。亮は人間GPS、
日本中の地図が頭に入っているのよ」
美咲が言うと一恵は驚いたように聞いた。
「亮さん、本当ですか?」
「はい、ただ地図が好きなだけです。
あの辺りはゴルフ場がたくさんありますよね」
「はい、母は農閑期にキャディをやっていたんですよ」
「農閑期と言うと何を作っているんですか?」
「野菜とレンコンです」
亮はお嬢さん学校と言われている一葉学園に
一恵のような家庭の娘が入っている事が
不思議だった。
ただ、森に聞いた話だと美人で成績が良いと
AAAで学費も免除と特典が付くらしい。
「本当ですか?」
亮は体を乗り出した。
「はい」
一恵がうなずくと亮が真剣な顔をして言った。
「レンコンの種が欲しいんですけど」
「何に使うんですか?」
一恵は亮が突然変な事を言うので
変わった男だと思った。
「蓮の種はカルシウム、カリウムが豊富で、
漢方(蓮肉)では胃腸を強くして
滋養強壮剤として使われているんです」
「そうなんですか」
「うちの軽井沢の薬草園では
レンコンを育てられないんですよ」
一恵はいきなり薬草園と言われて意味が
解らず笑顔で答えた。
「分かりました。母に話してみます」
「では帰国したら連れて行ってください」
「は、はい」
一恵は強引な亮にオドオドしていて
亮は満足そうに椅子に深く座った。
「美咲さん、3ヶ月前一文字は
どうなったんですか?」
「ええ、一文字はインサイダー取引の
疑いで逮捕、社長が捕まった事でDUN製薬の
株とストレートHDの株を時価で交換、
DUN製薬の方が利益が多かったみたい。
1株3000円の利益、約300億円儲かったみたい。
本来だったらDUN製薬がストレートHDの
経営権を持って一文字を解任出来たんだけど
お父様が胡散臭いから止めたらしい」
「それは正解です」
その進め方は亮が手紙に書いて秀樹と友子に
指示した通りだった。
亮の周りの内村、飯田、絵里子達
は株の取引でかなり儲けたはずである。
「それで一文字は社長から会長に、
専務の磯村が社長になった」
「罪はどれくらい」
「インサイダーではなく正式な株取引という
事で不起訴だったわ」
「秘書たちの漏洩が立証できなかったんですね」
「ええ」
「教唆なんかの他の罪は?」
「それも立証できなかった」
「さすが、一文字逃げ方は上手い」
亮は一恵や玲奈や屋島の証言で一文字のすべての
悪事を暴くつもりでいた。
「亮、これから仕事はどうするの?」
美咲が体を乗り出して亮に聞いた。
「うん、DUN製薬は死亡退職になっているから
戻るわけには行かないし」
「うふふ」
「とりあえず、スタジオDアメリカの運営と
冷凍食品の販売とレコード会社の買収
芸能プロダクションを作ります。
そして一文字を捕まえます」
「そうか、やることはたくさんあるのね」
「もちろん、一文字は必ず捕まえましょう。
時間がないですから」
「はい?」
美咲は時間がないと言う意味が分からなかった。
「あの男は僕が邪魔らしいです。
ですからなんとしても1ヶ月以内に
逮捕起訴をしないと、僕が殺られます」
「それは困るわ、日本は法治国家ですから」
「はい。なんとしても逮捕しましょう」
「はい」
美咲はそれを聞いてホッとした。
「そう言えば、少ないけどうち(警察庁)の方
からあなたのお給料も払いますので、
生活の足しになると思います」