表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/18

17話 何を考えているか分からない奴は、問題事を持ってくる

 あぁ……疲れた……。

   

 俺は部屋に置いてある椅子に腰掛けて、体の力を抜いていた。

 今日一日で色々なことがありすぎて頭が痛い。


 マラフィーは、今俺が居る隣の部屋に泊まっている。

 依頼を達成した報酬がそこそこ良かったこともあり、2つの部屋に分けたのだ。

 ちなみに、逃げられると困るということで、部屋の入り口の扉は魔法でロックされている。

 逃げると面倒臭いから、逃げたりしないけどな。


 今日あった出来事が、順番に頭の中を駆け巡っていく。


 シュフランか……。

 あの勇者、どう考えても国王と馴れ馴れしすぎだろ。

 この国で住んでもう長い間経つが、今までにあんな馴れ馴れしく接する奴はいなかった。

 もし、あんな風に接したら絶対拘束されるからな。


 それに、国王が言っていたシュフランの独自で創り上げる魔法。

 国の情報をいつでも手に入れることができるとか、どう考えても強すぎだろ。

 ていうかそんな魔法なんて、創ることができるのか?

 

 あの時は、色々あり過ぎて納得してしまったが、落ち着いて考えてみれば不思議なことばっかだな。

 まぁ、考えても仕方がないか。

 どうせ俺には関係にないことだ。

 このまま、問題もなく……今日問題は起こしてしまったが……これ以上起こさず過ごしていければ何の問題ない。


 着替えるために、椅子から立ち上がり服を脱ごうとした時、俺の部屋の扉の前に誰かが立っている気配がした。


 マラフィーか?

 でも、マラフィーならすぐにノックするはずだよな……。

 なら、一体誰――


 誰なのかを確認するために、扉に近づこうとしたら、突然扉が引かれた。


 おいおい、やめてくれよ……。

 いま今、問題を起こさないようにって思ったばかりなんだぞ!


 もう一度扉が引かれるが、マラフィーの魔法でロックがかかっている為、開くことはない。

 頼むから、マラフィー魔法頑張ってくれよ……!


 だが、俺のそんな願いは一瞬にして崩れ去った。


 「開かないじゃん。仕方がないか。こわそ」


 そんな、どこかで聞いたことあるような声と同時に、俺の部屋の扉は凄まじい音を立てながら粉々に壊された。

 破壊された扉は、跡形もなくなり、俺のベットや服の上に撒き散らされていた。


 やりやがった。

 マラフィーの魔法を無視して、破壊しやがった。


 扉を壊したことをどうとも思っていないのか、パキパキと粉々になった扉の破片を踏みながら、1人の女が入ってくる。

  

 「え、ぇ、え!? ルドス様!?」


 隣の部屋から物凄く慌てた声が聞こえた直後、隣の部屋の扉が勢いよく開く音が聞こえる。

 

 どうやらマラフィーは、今までにないほど慌てているようだ。

 いつも冷静でいることが多かったから、少し驚いた。

 あんな風に慌てるんだな。


 て、今そんなこと言ってる場合じゃないだろ!

 さっき聞いた声には、聞き覚えがある。

 俺の耳が勘違いしていなければ、こいつは――


 「こんばんは。ルドス・カーナベル君」

 「やっぱりお前か。シュフラン・スクーガル」


 着替えてしまった後なのか、マラフィーは装備も一切装着しないまま、柔らかい生地の服を纏う格好で俺の部屋の前に駆けつけた。

 

 「えぇ……。私の魔法が……」


 木っ端微塵に砕かれた扉の破片を見つめながら、唖然としている。

 扉が砕け散るという異常事態に、自分の魔法が破られるという衝撃的な出来事のせいで、頭の中が混乱しているのだろう。

 

 それよりも……。


 「何の用だ。シュフラン・スクーガル。俺を殺しに来たか?」

 

 俺の部屋の中でニコニコしながら立っている、シュフランという不審者を睨みつけながら、そう言い放つ。


 「やだなぁ、殺すなんて。それに、シュフランでいいよ。これから、一緒にやっていく仲間なんだし」

 「はぁ? それは一体どういう――」

 「ということで! 今日からシュフラン・スクーガルは、ルドス君の仲間でーす!」


 いやいやいやいや! 

 ちょっと待てよ!

 仲間ってなんだよ。

 話が急に進み過ぎだろ。


 「なぜ、お前が仲間になろうとしてるのか分からんが、絶対お断りだ。

 俺は今仲間とか受け付けてないし、それにこれ以上面倒事は増やしたくない。だから、ぶっ壊した扉の修理費を払って出て行ってくれよ」

 

 俺は早く出て行け、という意味で手を払うジェスチャーをして、部屋に備えてあったほうきを手に取って、飛び散る破片を集めた。


 こいつが俺に関わるようになったら、どんな未来になるか容易に想像ができる。

 絶対に、毎回毎回問題を起こして、この国の奴らの目が俺に向けられてしまう。

 ただでさえ、町を歩くだけで必ず視線を向けられるのに、これ以上目を付けられたら、たまったもんじゃない。


 とにかく俺は、こいつと絶対関わらない。

 

 出ていったか気になり、シュフランがいた場所に視線を向けると、ボヘッとした顔で突っ立っていた。

 

 なんで一歩も動いてないんだよ。

 変わったの表情だけだぞ。


 「なぁ、なんでまだ居るんだよ」

 「え?」

 「あ?」

 

 なんで、そんな不思議そうな顔をするのか。

 シュフランの反応を聞いて、俺もつらてて変な反応をしてしまった。


 「なんでって、仲間が仲間の部屋にいることって不思議なこと?」

 「ん? はぁ……、あのな……」


 手に持っていたほうきを、元あった場所に戻して頭をかいた。


 「何を勘違いしてるのか知らないが、俺とお前は仲間じゃない」

 「なんで?」

 「なんでって何がだよ。いいか。俺とお前は今さっき、初めて会話をした。それなのに、仲間? 何を勘違いしたらそうなるのか分からない」

 「でも」

 

 そこでシュフランは言葉を止めて、俺に近づいてきた。

 

 「国王様に、お前は、ルドスのもう1人の監視者に任命するって言われた。共に仲間として頑張るように、とも言われた。だから、ルドス君と私は仲間ってこと!」

 「意味分からん。さぁ、早く出て行ってく――」

 「国王様が言ったから仲間なのです! ということで、私は寝まーす」

 

 そうシュフランは、俺に宣言してくると横を通り過ぎてベットに向かった。

 手で木の破片を払うと、まるで自分の部屋にあるベットのように飛び込むと、そのまま目を瞑って寝てしまった。


 なんなんだ……。

 一体こいつはなんなんだ……!

 俺は仮にも犯罪者だぞ!

 よくもまあ、犯罪者の部屋で、それも犯罪者の隣で寝ることができるな。

 俺には到底無理だ。

 

 はぁ……本当にどうすれば良いんだよ。

 もう今すぐここから逃げ出して、こいつから逃げるしかないか……。


 マラフィーは現在放心状態の為、俺が頭の中でシュフランの対応を考えていると、すごい足音を立てながら宿の管理人が走ってきた。


 「はぁ!? 扉が壊れてる! どうしたらこんな事になるんだ!」


 全部シュフランのせいだ。

 あのベットに寝てるシュフランのせいだ。


 俺は何度もこう説明したが、なぜか俺が払う羽目になったのだった。

 

 

 



 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ