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15話 勇者たちは仲が悪い

 俺と同じ勇者の一人、ララクは冷た鋭い目線を俺に向けてくる。

 

 「お前がクレバランを殺ったのか?」

 

 俺の後ろに視線を一瞬だけ動かし、そう質問してくる。

 だが、ララクの表情は一切動かない。

 まるで怒りも、悲しさも感じていないみたいだ。


 「俺を殺しに来たのか」

 「俺の質問に答えろ。……まぁ、そのお前の質問が答えのようなものか。なら、お前の質問に答えてやる。俺はお前を殺しに来たわけではない」


 俺を殺しに来たわけじゃないのか。

 なら一体何をしに来たというんだ。

 もしかして……俺を拘束するつもりなのか。


 だが何のために?

 どうせ処刑にするなら、今この場で殺せばいい話だ。

 なら一体何が目的で……。


 「勘違いするなよ。俺はお前を拘束しに来たわけでもない。国王様の命令だ」

 「国王の……?」

 「様をつけ忘れてんじゃねぇよ裏切り野郎が」




 俺の深い傷をマラフィーの魔法で治した後、俺たちはララクについて行った。

 やはりマラフィーの魔法技術は凄かった。


 そしてララクを先頭に、後からやって来た騎士達が俺とマラフィーを囲い、護衛という役目を果たしてる。


 「本当に良かったのですか? もしかしたら処刑される可能性だってあるのですよ」

 「処刑されるのは嫌だが……恐らくそれはないだろう」

 

 何故そう言い切れるのか、という疑問を首を傾けるという動作で表してきた。


 俺がそう言い切れるのは、さっきララクとした会話にある。


 『それでどんな命令をされたんだよ』

 『俺が国王様に受けた命令は、お前を連れてこいというものだ。行くか行かないかは自分で決めていいらしい』

 『どうせ行かないって言っても強制的に連れて行くんだろう』


 ララクは暇そうに前髪をいじって、服についている埃を払った。


 『それはない。国王様には来たくないと言えば絶対に連れて来るな、と言われている。好きにさせろ、と。だからお前が拒否したら連れて行くことはできない』


 意味がわからない。 

 何故今頃国王はそんなことをするのか。

 あと時、あの場で俺のことを散々言ったくせに、今頃好きにさせろだと。

 ふざけやがって。


 『それでどうするんだ』

 『好きにされろって言われたら好きにするしかないよな……。行くに決まってるだろ』


 俺の話を聞いたマラフィーは、なぜか俺のことを白い目で見て手を顔に当てた。

 どうやら呆れているようだ。


 「それで処刑されることは無いって考えたわけですか?」

 「勿論だ」


 マラフィーは大きな大きなため息をつく。


 「ルドス様、それはただ挑発に乗っただけなのではありませんか?」

 「俺はそんなつもりはない」

 「でしょうね。でも実際乗ってるんです」


 だが、今頃どうすることもできない。

 国王の元に向かっていいことがあるわけではないが、逆に行かなくても面倒な事になりそうだ。

 何か情報を手に入れることができるなら手にしておいた方がいい。

 

 


 無駄というほど金を塗装しながら佇んでいる玉座の間に繋がる巨大な木の扉の前に、ララクと共に俺たちは立つ。

 俺たちの周りにいた騎士は、もうすでにどこかへ行ってしまった。

 これも国王の指示なのかはわからない。


 「くれぐれも無礼な態度は取るなよ」

 「それはわからない」 

 「チッ。お前もだぞ。魔道士」

 「分かっています」


 死んだ魚のような目で、マラフィーはそう言い放つ。

 城に着いてからずっとこんな感じだ。

 イライラしているのか、不安なのか、恐怖なのか、それともそれ以外なのか。

 全くわからない。


 ギィィ……。

 と、木が軋む音を立てながら相当な重さの扉が開かれる。

 あの日とほとんど変わらないこの場所。

 唯一変わったことがあるとすれば、人数が減ったことのみだ。

 今この場にいるのは今入った俺たちを除いて、玉座に腰掛ける国王と2人の勇者、メデューラルとファイスだけだ。


 「国王様。ただ今ルドスを連れて参りました」

 「おお、ご苦労であった。それにしても、まさか来るとはな。勇者ルドス」


 腰掛けていた玉座から立ち上がり、俺を見下すように笑う。


 あの顔を見るだけで怒りが湧いてくる。

 糞爺が。


 「それで、俺に何のようだ」

 「国王に向かって何のようだとは口の利き方がなっていないな。貴様が勇者であるからいいようにしているだけなのだぞ。本来なら即刻――」

 「はいはい。分かった分かった。どうせすぐに処刑するんだろ」

 

 俺の口の利き方に国王は顔を顰める。

 この前散々俺を罵っておいて何がいいようにしているだ。

 どういう思考回路をしたらそんなふうに考えられるのか。


 「ルドス。もう少し口の利き方を考えたらどうですか? 国王様に対してあまりに酷すぎますよ」


 弓を背中に背負い、長い漆黒の髪で青藍(せいらん)の瞳を左だけ隠すメデューラルは俺に鋭い声を飛ばして来る。

 

 「いやいやメデューラル。今頃そいつに何言ったって変わらないさ。犯罪者なんかにね。だからこういう時は力尽くでねじ伏せるんだよ」


 軽くパーマのかかった緑に髪をいじりながら、もう1人の勇者、ファイスは煽ることしか出来なさそうな笑みを俺に向けてくる。

 「今のお前は俺に勝てるかわからないぞ」


 まだこいつらは俺が作り上げた技を見ていないはずだからな。

 

 「へぇ……、言ってくれるね。今まで散々僕に負けていたくせに。なら、今度は口を聞けないほど――」

 「おい、黙れ。そんなどうでもいいことは後にしろ」

 「はぁ?」


 ララクの突然の静止に、ファイスは怒りをあらわにする。

 怒りの矛先を俺からララクに移し、ジリジリと詰め寄って行く。


 「え? なになに。もしかして僕に命令するの? 僕に命令していいのは国王様だけなんだけど。さっきの発言撤回しないと同じ勇者でも、殺す――」

 「黙れ」

 「……っ!」

   

 ララクの鋭い睨みとともに、夥しい殺気が流れ出し部屋の空気は一気に変わる。

 ララクの殺気を感じたのか、ファイスは勢いを無くして一粒の汗を流す。

 

 正直俺もゾッとした。

 あいつと同じ戦場で戦ったから分かる。

 今の殺気は、前の戦争でララクたった一人で敵の騎士を1000人殺した時と全く同じものだった。


 当然、ファイスもその時同じ戦場にいたためその作り話のような殺戮を目の当たりにしている。


 「国王様。我ら勇者の無礼をお許しください」


 ララクは一瞬で殺気を消し去り、この場で起きた出来事を国王に謝罪した。


 「気にするなララク。それよりも今この場集めた理由だが、勇者ルドスとその監視者、魔道士マラフィーについてだ。どうやら早速やってくれたらしいなぁ。お前たち」


 


 


 


 

 



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