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14話 散るべきでない命が何故散るか

 俺の首目掛けて振るわれる剣を軽くかわして、相手の剣を弾き飛ばす。

 弾き飛ばされた剣は、地面に勢いよく落下して金属特有の音を立てた。


 「まだやるか?」

 「くそっ……!」

 

 殺す相手しか見ていないような目で俺を睨み、歯軋りをする。


 「どけ、ナル。お前じゃ勇者は倒せない。俺がクレバラン様の仇を討つ」

 「どうやら殺し合いは続くようだな」


 俺たちのする殺し合いは、無くならなくてもよかったはずの命が散っていくことが多い。

 戦争だって、もし話し合いで解決できるならどれ程の命が救われるか。

 だが、こんなことを言ったとすれば、「ならお前は人を殺すのを止めろ」と言われるだろう。

 だが、当然ながらそれは出来ない。

 

 皆、命のために戦う。

 命を奪いたいからではなく、自分の命を、大切な人の命を守るために戦い、仕方なく命を奪うのだ。

 だが、こう言って命を奪うことを正当化するのもおかしなことだろう。

 命を奪うということは、本来許されるべき行為ではない。

 

 だから自分の命を奪われてまでも、他人の命を奪わないかって?

 否。

 命を守るためなら、命を容赦なく狩る。

 それが許されるべき行為ではないとしても。


 男は剣を引き抜いて、重みのある足で一歩一歩近づいてくる。 

 そいつの目は、怒りで満ちている。

 そいつの目は、憎しみで満ちている。

 そいつの目は、悲しみで満ちている。


 「死ねや裏切り勇者がぁ!!!」


 地面を強く踏み込んで、素早い動きで俺に攻撃されないように左右に動きながら接近してくる。

 だが、真眼を使うほどの速さではない。

 この男の動きに合わせて、俺も攻撃を仕掛ける。


 男は俺のすぐ前まで来ると、膝を膝を右側に折り曲げると、そのまま下から剣を振り上げてきた。

 

 やっぱりこいつそこそこ強い。

 流石は勇者のパーティーメンバーだ。

 無駄が何一つとしてない動き。

 俺に向けられる殺意。

 だが……


 「俺はお前に殺される程、雑魚じゃねぇぞ」

 「何!?」


 今の攻撃で確実に俺を殺せると思ったのか、俺が剣で受け止めたことに驚きを隠せないようだ。

 俺もなめられたものだ。


 「剛脚(ごうきゃく)


 これは、俺が作り出した技の一つだ。

 足に意識を集中させて、強烈な蹴りを放つ剛脚。

 この技のデメリットは、意識を集中させないといけないため、使用するまでに多少の時間が掛かること。

 だがメリットは、鎧でも破壊することのできる威力が出ることだ。


 「冷静さを欠いてる時点で、お前の負けなんだよ」

 「ッ……!」


 俺の考えていることがわかったのか、後ろに退避しようとするがすでに遅い。

 剣で押されていた状態でも蹴りを使うことはできたが、今は離れてくれたおかげで体を捻ることが出来る。

 これによって、さらに威力が増す蹴りとなる。


 腰を捻って体重移動をし、凶器となった俺の足は粉を描くようにまわっていき男の横腹にめり込んだ。


 「ぁはぁが……!」


 男の防具は砕け散って、俺の蹴りの衝撃を吸収することができずに体に伝わっていく。

 男は地面を転がっていき止まったかと思えば、白目を剥きながら泡を吹いて気絶していた。


 恐らく男の肋骨は何本か折れているだろう。

 でも、魔法を使って治癒をすれば何の問題もないはずだ。


 「ルドス様」


 名前を呼ばれて後ろを振り向くと、心配するような表情を見せながらマラフィーが近づいてきていた。


 「すまない……。こんなにも大事にしてしまって。もしかしたら――」

 「私は大丈夫です。それよりも怪我の処置を」

 

 続きの言葉を察知したのか、俺の声を遮るようにして俺の怪我の処置を始めた。

 マラフィーは場合によっては俺と共に処刑される。

 もし、今回の件はいずれ国王の耳に入るだろう。

 そうなれば、俺が処刑される可能性もあり、マラフィーも処刑されることも否定できない。

 

 「本当にすま――」

 「何の騒ぎかと思って来てみれば。お前か。ルドス」

 

 突然名前を呼ばれ、声のした方を向くとそこには俺がよく知る人物が立っていた。


 「ララク……!」

 「お前みたいな奴が俺を睨むな。裏切り勇者」

 

 

 


 


 

 

 

 


 

 

 

 

 


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