表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

大魔王を倒したっていうのに、なんでカインは帰ってこないのよ!? 別れる時に、「大魔王を倒したら結婚しよう」って言ってたくせに! こうなったら絶対見つけ出して一発なぐってやんなきゃ気が済まないんだから!

作者: さいらなおき

 そして村を飛び出して2分、私はついにカインの奴を見つけ出した。

 あのトーヘンボク、やっぱり村のすぐ裏手の森に隠れてた! 昔から何か嫌なことがあると、いつも隠れるのはあそこの洞窟だった。中にきれいな川が流れてて、火も使えて、周りは食べられる果物がいろいろ採れて、私とカインだけの秘密の隠れ家。私たちはいつもあそこで――って、そんな小さい頃の思い出にひたっている場合じゃなかった。

 のほほんと洞窟から出てきたアイツの前に、私は素早く立ちはだかる。

「メ、メアリー!? どうしてここが――」

「どうして? 幼なじみナメんな! さあ、どうして約束を破ったのか、教えてもらいましょうか、カイン? 事と次第によっては――」

 言いながら拳を構えた矢先、カインの後ろから小さな女の子が姿を表した。それも2人も。

 そして――

「……パパ、知ってる人?」「ヒト……?」

“パパ”!? “パパ”ですってぇ……!?

「ちょっ、メアリー、これには訳が――」

 稲妻よりも速い速度で私の右フックが奴の顔にめり込んだ。次は左ストレート。そのまま右、左、右、左、と立て続けに拳をめり込ませる。顔に、腹に、みぞおちに。

 ふと気が付くと、さっきの女の子たちがシクシク泣いていた。

「パパを……もう、いじめないで……」「で……」

 時すでに遅し。カインはもう虫の息だった。

 川の水で冷やしてあげると、少しは人間らしい顔に戻った。まったく世話が焼けるんだから!

 だけど話を聞くと、またまたとんでもない話だった。倒した大魔王の死にぎわに、娘を託されたのだという。それも2人も。

 私は呆れ返った。

「あんたバカなの? こんな小さな女の子2人、それも大魔王の娘を、かくまいながらあんた1人で育てるなんて、無理に決まってるでしょう!」

 カインはムスッとして答える。

「無理じゃない。無理だと思ったら、できることだってできなくなる」

 その言葉に、私は思い出した。

 そういえば、村を出る時もそんなこと言ってたっけ、こいつ。

 私は大きくため息をついた。

「しゃーない、あたしも手伝うわ!」

 大きく目を見開いたカインに、帰ってきたら見せようと思っていた、とっておきの笑顔を見せた。

「もう決めたからね? 今度は、置いて行かせないわよ?」

 お読み頂きありがとうございました。

 楽しんで頂けましたでしょうか。

『下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ』でも「タイトルは面白そう!」のコーナーで毎回投稿してますので、そちらもよろしくしていただけますと幸いです。

 ラジオは文化放送にて毎週金曜日23:00から放送中。スマホアプリradikoなら無料で1週間聞き逃し配信してます。YouTubeには過去アーカイブも揃ってます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 「無理じゃない。無理だと思ったら、できることだってできなくなる」 非常に道徳的で破滅的なこの台詞に乾杯 [気になる点] カインはきっと他にもまだ何か隠してる そしてメアリーはまだまだ苦…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ