死んじゃったよ
よければ読んでってください
真っ白いカーテンに真っ白い布団、ベッド。そして何より真っ白な天井。そんなどこもかしこも白いこんな場所に俺はずっと居座っている。今夜かもしれない。
朝目が覚めるとやはり見慣れた白い天井。時計を見ると午前7時30分と学校に行っていた時より随分と早起きになったものだ。厳密には体が起きてしまうだけなのだが。この時間にいつも通り起きると必ずいつもの白い服の女性、皆さん大好きナースがなつきさん調子はどうですか、と訪ねてくる。俺が普通です、とわずかに微笑みながら答えるまでがテンプレ。
この一室には自分以外の患者はおらず音を気にせず動画などを見られるのはなかなか気に入っている。
なぜこんな退屈な場所で俺が入院しているのか。単刀直入に病気だからである。しかもこれがなんの病気かもわからず原因が掴めないまま心臓が腐敗していくのだとか。余命1か月と言われあの時はまあ泣いたが一旦開き直れば意外と耐えられる恐怖である。今も腐敗は進んでいるが腐敗があるところまで進むと酸素を体に送り込めなくなり死ぬためそれまでは全く痛みや苦しみはない。だからいつ死ぬのかもわからない、わかりたくもないわけだ。
「おはようなつ、最近は朝早いのねぇ、いいことだわ。そうやって健康的に過ごしていれば体は治るはずよ。」
そう言って部屋に入ってくるのはうちの母さん。俺が入院してからかなり痩せて窶れているのが見て取れる。すごく疲れているようにも見えるしそんな母さんを心配させたくなくて
「そうだね、ありがとう。」
いつもこう返してしまう。そんなことあるはずがないのに。
「今日はなるは一緒に来てないんだね。
どうかしたの?」
妹のことを聞くと母さんはまた悲しそうな顔をしてこんなことを言った。
「なつに会うのはあの子にも辛いでしょうからこれからは極力会わないようにと思って。」
俺だってなるみに会いたい、会わせてくれ、そう言いたい気持ちがぐっと堪えて
「そうだよね、わかった。」
母はいつも俺の生存を確認したらすぐに仕事に行ってしまう。毎回多くの果物を残して。
いつ死ぬかもわからない、だがしかしそんなこと気にしていたら身がもたない。だからこうして自由なひと時を過ごしているのだが、その時は唐突に訪れた。
「!!」
いくら吸って吐いても体に力が入らない。血が巡らずどんどんと手先が冷たくなっていくのがわかった。あーこのまま死ぬんだなってわかった。ナースコール押してから死ぬ。それができれば死後時間が経って悪臭を放ち迷惑をかけることはないだろう。ボーッと視界がぼやけ意識が遠ざかっていく中そんなことを考え俺は心臓が停止した。
18年という短い人生。暗い闇の中天に召されようとしている中思い出なんて思うように出て来なけりゃ親しい友人を思って涙も出ない。しょうもない人生でつまんなかったな。せめて何か大成功と呼ぶべきことを一つ成し遂げたかった。
ふと目を開けるとそこには白い天井があった。なんだ、夢か。そう願い目を擦るともう違和感を感じる。今まで伸びっぱなしにしていた前髪がない。というか体が軽いしなんとなく目もぱっちり開く。起き上がってみるとわかる。やはり体が小さくなっている。
これはしょうもない人生とか言ったから神様がやり直させてくれたのか、死んだらタイムリープしてた、なんてSFのようなこと実際に病室で考えていたしそうに違いないと勝手に決め付けていた。
しかし見覚えがない。昔に戻ったなら見覚えのある場所で寝ているはずだが。
ベッドから降りあたりを見回すと12畳のまあまあ広めな部屋にドアが一つ。さっきまで寝ていたベッドに片付いた机、それに棚にクローゼットまでついた部屋ではないか。
まだ情報が足りないと水色のパジャマを纏った小さな少年はドアを開けすぐに見える階段を下る。他の住人は寝静まっているようで誰も状況を説明してくれそうな人間は見当たらない。時計を見ると2時15分を指している。廊下の窓が暗かったことから深夜であろう。子供の体ではこれ以上の活動は厳しいと判断し今夜はひとまず睡眠を取ることとした。またベッドへと移動しまぶたを閉じる。
また目が覚めるとやはり白い天井。軽い体にぱっちりとまぶたが開く。夢ではなかったらしい。時計を見ると7時30分。病院での習慣は健在らしい。下へ下るとご飯の香り。とりあえず顔を洗おうと洗面台へ向かうとそこには驚くべきものがあった。。
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