お題 夏 風鈴 雨
あらすじの部分に三題噺のお題に関するルールを追加しました
ご確認ください
8月4日 快晴 気温 30℃ 湿度 15%
よく晴れた。
どころでもなく猛暑。
暫く、雨も降らず、日々暑くなるばかり。
夏の風物詩とも言える風鈴もスイカもかき氷も完備しているのだがこの暑さの前にはそれらも無に等しい。
楽しめない。
この前昼過ぎまで寝ていたら廃人になってしまうとかなんとか言っていた気がするが、この冷房完備の部屋で寝てたい。寝させろ。
というのも今日、例によって例の如く私の友人、亜希子がなんとも海に行きたいらしく私も呼ばれた。
せっかくの大学の夏休みなのに。
雨降ってくんないかな。
うちの大学の夏休みはかなり長い方だが、一応言って私の海へ行きたくないことを伝えておこう。
まあこう言いながら現在、自分の部屋でなく、太陽の強烈な日差しが差し込むビーチでジュースを飲んでいる私はやはり捻くれ者なのだろう。
◇◇◇◇
遡って数時間前。
「美咲ー。どうせ寝てると思ったから迎えにきたよー!」
なんとも残念なことに今回は亜希子に先制された。
下宿先のアパートなんだがドアは叩かなで欲しい。ただ単にうるさい。ぐっすり眠れないじゃないか。
「美咲姉さん。僕が出ましょうか?」
夏休みだから遊びに来た高校生の妹が言った。こいつこんな喋り方だからよく男だと思われてる。ウケる。
私は布団に潜りながら手でドアを示す。
「お前がいけ」の合図だ。
「全く美咲姉さんは人使いが荒いんだから」
お前が言い出したんやろ。
なんというかうちの妹がひねくれてきた。
誰に似たんだか。
家を出て一人暮らしを始めるまでは普通のやつだったのに。
◇◇◇◇
「はい。どちら様でしょうか」
「およ?」
扉を開けたら人がいた。当たり前か。
てっきりピンポンダッシュかと思った。
「ピンポンダッシュじゃないわよ」
「セールスとかお断りしてるんで……」
そう言ってドアを閉める。
「待ちなさいよ」
ドアの間に足を挟まれ閉めるのを阻止される。
「チッ」
「聞こえてるわよ!そもそもこんな格好でセールスに来る人がいるもんですか!」
「いえ、そうやって油断させて買わせに来る人とかザルにいますし……」
「違うわよ!それはそれでタチ悪いわね!」
「じゃっ。失礼します」
そう言ってドアを閉める。
「待ちなさいよ!何度やらせるのよ!このやり取り」
またドアの間に足を挟まれ閉めるのを阻止される。
「はぁ……」
「なんのため息よ!こっちがつきたいわ!」
改めて訪問者の姿を見る。
美咲姉さんを連れ出しに来たとなると多分亜希子って人だろう。
姉さんには友達とかいなそう。
大学生なのに友達いないんだって。
亜希子さんは大学生らしい背格好に夏らしく露出多めな服。ビーチサンダル履いてる。
「10点」
「何が?」
「あっ100点満点中ですよ?」
「そこは聞いてない」
さてどうしようか。これ以上自然に追い返す……じゃなくってお引き取り願うためのコミュニケーション方法がもうないな。
…………。
「ちょ⁉︎ちょっと無言で閉めようとしないでよ!」
不意打ち気味で閉めたのだがダメだったか。
「どんだけ帰って欲しいのよ」
「家に侵入したコバエくらいくらいですかね」
「おう、初対面に向かってそう言うか!」
「亜希子うるさい。用がないなら帰ってくれ」
長々と訪問者をいじってたら美咲姉さんが来てしまった。タイムアップか。
◇◇◇◇
あの愚妹遅くね?
かれこれ20分は玄関口でなんかやってる。
途中ガチャガチャとドアが開いたり閉まったりする音とかも聞こえる。これじゃ寝れやしない。
私は仕方なくそれはもう仕方なく出向くことにした。
「亜希子うるさい。用がないなら帰ってくれ」
本当に用がないなら帰ってくれ。
玄関が開いたままだと折角の冷房が無駄ではないか。
そのところも考えてくれよ。
「用って……あんた約束したでしょ!今日は海に行くって!」
「姉さん海行くんですか?今日は一日中寝てたいって……」
どうせ行かなきゃいけないんでしょ?
いくらひねくれてても家まで押しかけられちゃ断れない。砂浜に顔以外全部埋めてやるから覚悟しとけよ。
「美咲。準備急ぎなさい!そんなだらしない格好じゃまともに外に出られないわよ!」
午前11時。私はまだ寝巻き。
着替えるに決まってるでしょ。
「美咲の妹さん?あんたも行くなら連れて行ってあげるから用意してきなさい」
「え、いいんですか」
「いいわよ、別に」
「何企んでるんですか?」
「何も企んでないわよ!」
ということで私の妹までも海へ行くことに。
「亜希子海までどうやって行くんだ」
「私の彼氏の車で行くけど?」
「この家にニトログリセリンあったっけ?」
「姉さん確かそこの棚に……」
「あんた達本当に似てるわね!そのひねくれ具合とか!」
リア充は爆発すべきだと私は思うんだ。
二重の意味で。
「こちらが私の彼氏の谷崎君よ」
「はじめまして。谷崎栄太と言います」
「はじめまして。私は亜希子の友人をしている椎名美咲と言います。亜希子がいつも迷惑かけてすみません」
「はじめまして。僕は椎名美咲の妹です。姉の友人の亜希子さんのことはよく知らないですけど仲良くしてあげてください」
「あんた達一言以上余計よ」
「谷崎さん。今日はよろしくお願いします」
◇◇◇◇
8月4日 快晴 気温 30℃ 湿度 15%
よく晴れた。
どころでもなく猛暑。
暫く、雨も降らず、日々暑くなるばかり。
雨降ってほしい。
ともかくこうして私は海にいる。家にあったスイカも持ってきたしまあ楽しんでる。うちの妹がスイカ割りで目隠しした谷崎さんを亜希子の方へ誘導したり、うちの妹が亜希子にイチゴアイス風のハバネロアイスを買ってきたり色々あった。
亜希子は日焼け止めを塗らずに化粧水を塗ってたので真っ黒に日焼けし、日焼け止めを塗ってた谷崎さんと私は焼けてない。妹は焼きたがってたから元より塗ってない。
日焼け止め容器に化粧水を入れて持ってきた私には責任がないだろう。
夜になると涼しくて快適だった。
手持ちの花火を眺めてこういう夏もいいななんて思ったり思わなかったりした。
来年は海に行……かないかもしれない。
彼氏が出来たら考えなくもなくもない。行けたら行く。
今回のお題は
「夏」「風鈴」「雨」
でした!
登場人物に新キャラはいません
今年の夏は海行ければいいな
私は多忙なので……
ちょっと今回も金曜日投稿はギリギリです……