お題 ネクタイ 有料ビニール袋 放置された靴下
スーツを着込み企業の面接を終えた俺は久しぶりに俺と同じように一人暮らしをしている姉の生存確認をしに姉の住むアパートに来ていた。
「おーい駄姉生きてるかーって臭ッ」
鍵を挿し玄関を開けて入ると惨状が目に入った。
積み上げられたゴミ袋にビールの空き缶、果ては食べ終えたままのコンビニ弁当に脱ぎ散らかされた衣類たち。
何ヶ月分放置されたのか知らないがとんでもない異臭を放っていた。
よく今まで苦情来なかったなおい。
「駄姉ー死んでたら返事してくれー」
「……はーい死んでるよー」
「あ、生きてた」
予め持ってきた予備の靴に履き替え素足で歩くとダメージを喰らいそうな廊下を進む。うわ、ここカビ生えてる……。
「あーくんおひさー」
この惨状を生み出した張本人我が駄姉 篠崎アメリ。
2人いる俺、篠崎アンリの姉の1人。
そんな駄姉は脱ぎ散らかした服でできた山に身体を埋め頭だけ出てた。
ちなみにこの部屋も床が見えているところはない。
「なにしてんの」
「食っちゃ寝」
「掃除は?」
「したくない」
この駄姉が。
服にやどかり状態な駄姉を引っ張り出す。
「あーくんのえっち」
「黙れ露出狂が」
なんとなくそうなんじゃないかなと思っていたが駄姉は全裸だった。
寝るとき脱がないと落ち着かない性分らしい。
もう慣れすぎてこの駄姉の裸を見ても何も感じない。
「……もう部屋片付けるから風呂場にでも行ってて」
「頼んだぜぃあーくん」
遠慮くらいしたらどうなのだろうか。
掃除をするにしても未だ俺はスーツのまま、汚すわけには行かないので山の中からハンガーを探し当て被害の少ないところにスーツを掛けた。
ネクタイも緩めておく。
「あーくんそのネクタイ使ってくれたんだ〜」
「まあね」
俺がつけている藍色のネクタイは二人の姉からの大学の進学祝いのときに貰ったもので就活でも使わせてもらった。
駄姉はによによした顔で風呂場に向かっていった。全裸で。
俺は何も見ていない。
「何から手をつければいいんだ」
見渡す限りゴミの山。
食品のパッケージなどのゴミと脱ぎ散らかした服が混ざるように重なっているのがヤバい。
「こりゃ服も一回袋に詰めたほうがいいな」
一度外に出て軍手と地域指定の有料ビニール袋を買ってくる。
この2つは家にあるだろうが探すよりも買ってきたほうが早かった。
ゴミ袋と服用の袋の2つを広げる。
行動しやすいように玄関からやっていく。
……何故玄関にも服が落ちているんだ?
靴と一緒に脱ぎ捨てられそのまま放置されたであろう靴下はまだわかる。
わかりたくはないがわかる。
だが、下着類まであるのは何故なんだ?
まさかとは思うが駄姉は帰った瞬間から全裸になる裸族だったのか?
あーもう1人の姉に会いたくなってきた。
どこかの研究所に勤めているらしいけど……流石にそっちは大丈夫だよな?
あっちの方の姉は掃除はそこそこできるはず。多分。
「今度差し入れ持っていくか……」
そうしているうちに玄関周りが片付いてきた。
もうすでに満杯近い袋を無理ない程度に圧縮し更に詰め込む。
ビール等の空き缶は袋に入れられないので後で捨てに行くために積んである。
多分家中の空き缶集めたらピラミッドできる。
「駄姉、今日泊まり込みで掃除すっから」
「わかったー」
終わらない。そう確信したから泊まり込みで掃除をすることにする。
見たところカップ麺やデリバリーばっかで冷蔵庫には碌なものが入っていないだろう。むしろ冷蔵庫が機能しているかすら怪しい。
この駄姉はこんなんでも一応働いているし稼ぎもいいからここまでの自堕落な生活が続けられているのだろう。
両親に頼んでなんとかしてもらうか…?
あまり期待できない思考を隅に俺はゴミを袋に入れた。
今回のお題は
「ネクタイ」「有料ビニール袋」「放置された靴下」
でした。
友人に貰ったお題。
登場人物
篠崎アンリ
二人の姉を持つ。女のような名前だが男。家事能力が高い。
篠崎アメリ
掃除のできない駄姉。家では基本全裸。外では優秀。
さて三題噺ではお題を募集中!
シチュエーション指定も可。ただそのとおりになるかは別。
感想もお待ちしております。
次回のお題はまだ未定。
追記
来週はちょっと色々あるから金曜日ではなく木曜日になるかも。