お題 男の娘 少女 もふもふ
読者の方からのお題です!
「なあ、お前ら知ってるか?今ゲーム実況で人気急上昇中の超美少女!マユナたん!」
放課後、帰り道で大輔が俺と達也に向かってそう話を切り出した。
「あー知ってる知ってる。顔出ししてて可愛いよね。モンブレの実況見たわ」
「達也も見たか」
モンブレっていうのは今、流行っているいろんな世代がハマっているVRMMO「モンスターブレイド」で俺と達也と大輔は持っている。
「可愛いよなぁ。マユナたんの部屋とかピンク色でぬいぐるみで囲まれてたりザ・女の子って感じ!」
「水色の服が超似合ってるよなぁ」
しばらくマユナがどんなに可愛いか語り合う二人。何故か俺だけ蚊帳の外。
「龍馬は知ってるよな?マユナたん」
大輔が俺に向かって話しかけてくる。
おおう、いきなりだな。
「……あー知ってる知ってる。モンブレのトップクラスのプレイヤーで、美少女でマユナって名前しかわからないやつだろ」
俺はさっきネットで調べた内容を混ぜて知っていることを話す。
「それだけ?」
「それだけってなんだよ」
達也が詰め寄ってくる。
「なーんか隠しとるやろ」
「なっ、なんもねえよ!」
弁解する俺にさらに詰め寄ってくる。
「けっ、まあいいさ。じゃあ今日、7時にメインストリートの広場な」
「おっけ」
「大輔遅れんなよ」
「遅れねーよ」
モンブレの集合約束をして解散する。
◇◇◇◇
「ただいま」
返事はない。両親は今、出張で海外なので家には俺と弟の二人だけだ。
うちの弟は引きこもりの不登校児なので滅多に家から出ない。
「はぁ……マユナたん、ねー」
正体不明の美少女ゲーマー、マユナ。
「…………」
言えないよなぁ。
俺の弟が美少女ゲーマーマユナの正体だなんて。
「お兄、お帰り」
「おう、真悠那。帰ったぞ」
噂をすればなんとやら。
リビングに水色の水玉パジャマの美少女に見える少年、俺の弟の真悠那がいた。
腰まで伸びた綺麗な黒髪に、声変わりしたのに高い声、痩せて細い白い肌が完全に真悠那を女の子にしている。見た目も声も「深窓の令嬢」みたいになっている。
「今日、実況するから部屋入らないでね」
「おう、わかった。俺もログインする予定だから6時に夕飯な」
「了解」
会話はあまりしない。
ゆっくりと部屋に戻る真悠那を見送る。
わかるだろうか、この気持ち。
自分の弟が人気で正体不明の美少女で男の娘だなんて。
しかもその原因を俺自身が作ったなんて。
真悠那はもともと女の子だったらつけるはずだった名前でいろんな小さな出来事がありそのまま名前がついてしまった。
真悠那は小学生の頃に名前の所為でいじめを受け、不登校になってしまった。
そして引きこもって心を閉ざした真悠那に小遣いを貯めてゲームを与えたのが俺だ。モンブレもその1つ。
その結果引きこもってゲームばかりさせてしまった。そしてオンラインゲームでなんかの1位を取ってプロゲーマーとしてスカウトされた。
その収入でネット通販とかして生活してる。
男の娘になった件については心当たりがないが、甘やかして引きこもりゲーマーにさせたのは俺の責任だと思っている。
そして俺はまだ、真悠那を甘やかしている。
二度と傷つけないように。
気持ちを切り替えよう。暗い感情はダメだ。
夕飯の支度でもして気を紛らわそう。
といっても夕飯の献立はまだ決まっていない。
「さて、夕飯は何にしようか」
「お兄」
「うおっ⁉︎真悠那⁉︎いつからそこに⁉︎」
キッチンに立つ俺の後ろに真悠那がいた。
「さっき。お兄、これ食べたい」
「なんだ?」
真悠那が手に持っているのは電子タブレット。画面は暗い。
?これを食べるのか?電子機器なのに?
「暗くなってた。これのこと」
真悠那がタブレットの電源を入れて画像を見せてくる。
「鮭のホイル焼き?食べたいのか?」
「食べたい」
「わかった。食べたいんだろ。」
「ありがとう。お兄。好きだよ」
「っ!…………おう」
弟であることがわかっているのにドキッとしてしまう。マジで脱がすくらいしないと性別がわからない。いるんだなそんな存在。
真悠那はレシピが書かれたタブレットだけ置いて部屋に戻っていった。余談だが真悠那の部屋は大輔の言う通りピンク色の壁紙にクマやネコなどのぬいぐるみが沢山ある部屋だ。ぬいぐるみは真悠那が集め始めたものの1つで正直、溢れかけてる。
「マジか、鮭ねえじゃん」
冷蔵庫に肝心の鮭がなかった。
クッソ買ってくるか。
弟に甘い?
家族を甘やかして何が悪い。
「真悠那、夕飯できたぞ!」
あれから近くの魚屋に走っていって鮭を二切れ買って速攻で料理を作った。
「…………わかった」
真悠那の部屋の方からくぐもった声が聞こえる。
「我ながらよく出来たなこれ」
俺は自分で作った鮭のホイル焼きを眺める。
レシピ通りに作ろうとしたのだがちょっとアレンジした。
「お兄、食べていい?」
「いいぞ。いいただきます」
「いただきます」
まず始めにホイル焼きに箸を伸ばす。
玉ねぎや人参も加えてみたので結構うまく仕上がっている。
「これはっ!……コンソメ?」
「おお、よくわかったな。塩のところをコンソメに変えてみたんだが、どうだ?」
「美味しい。星3つ」
真悠那の口にあったようで何よりだ。
「ところで真悠那。今日実況するっつってたけど何すんだ?」
「お楽しみ」
神出鬼没の美少女ゲーマーなだけあるわ。
告知なし実況だから一種のツチノコみたいになってたりもする。
「ご馳走さまでした」
「お粗末様です」
食事を終えるとそれぞれの部屋へ別れる。
モンブレをするのだ。
部屋に着くとVRMMOにログインするためのゴーグルをつけてベットに横たわる。
「ゲームスタート」
目の前が真っ暗なったと思うと一転、ゲーム世界が広がる。
「おう、リョウマ来たか」
「ダイスケも遅れずに来れたんだな」
待ち合わせの広場に行くと大輔のキャラのダイスケがいた。職業は剣士。
俺のキャラ名もそのままリョウマで、職業は侍。
「おまたせー」
「お前が最後だそ、タツヤ」
タツヤの職業は魔法使い。
この3人のパーティは実は全員アタッカーで回復役がいないので十分にゲーム探索できないのである。
「マユナたんの生実況やるらしいぞ!それ見てから行こうぜ!」
「いいねー!そうしよう!」
「リョウマも見るぞ!」
「お、おう」
3人でモンブレのサイトをウィンドウに表示する。しばらくするとゲーマー・マユナの実況が放送される。
『やっほー!マユナでーす。みんな見ているかなー?』
画面にパジャマのままの真悠那が映っている。真悠那の実況はゲームキャラのマユナから始めるのではなく、自室のログイン前から実況を始める。
普段は見せない魅力的な笑みを浮かべている。男だと知っている身としてはなんか……うん。微妙な感じがしたりしなかったり。
『今日は美味しい晩ご飯を食べてきたからマユナは元気いっぱいなんだよー!……さて、今日はなんちゃって東京ガールズコレクションinモンブレを開催しちゃうよー!』
「新イベ、キター!」
「イベントじゃねえだろ、マユナの企画だろ」
騒ぎ出したダイスケを抑える。何気に攻撃型なのでダメージが入ったらやばい。抑えるほうが。
『今日は最近実装された新モンスターの素材を使用して新衣装を作るよ!今日狩るモンスターはこちら!映ってるかな?エレガントシープの上位個体として新登場のエンプレスシープ!取れる羊毛はエレガントシープの10倍以上もふもふしてるんだって!』
画面に気品のある巨大羊が映っている。これがエンプレスシープらしい。名前的には女王羊か。
『マユナのもふもふ姿見たい〜?』
「見たぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!」
騒ぎ暴れ出したダイスケを以下略。
『じゃあ、レッツ!ゲーム!』
そう言って画面に映る真悠那が一度消え、ゲーム世界のマユナに切り替わる。
「マユナたんログインしたぞ!」
ダイスケ、マジでうるさい。
『今日はこれで倒していきまーす。魔剣バルムンク〜!ファブニールからのドロップアイテムだよー』
「あれってめっちゃレアじゃなかったっけ?」
そういえば一度真悠那がファブニールと戦うからご飯いらないって言った日があった。
ちなみにその日は部屋まで夕飯を持って行って食べさせてやった。
「いい加減そろそろゲーム始めようぜ」
タツヤがダイスケに言った。
そうだ。もっと言ってやれ!
「このままだと実況見るだけで終わるぞ」
「む、それはそれでつまらないな。でもマユナたんも観てたい」
「じゃあ俺らもエンプレスシープ手に入れに行きゃあいいだろ」
「何という名案!タツヤ褒めてつかわすー」
「何様じゃお前は」
お?なんか俺を置いて色々決まっていくぞ?
「というわけでマユナたんが狩ろうとしているエンプレスシープを俺たちも狩に行こう」
「へ?」
こうして三題噺なのにシリーズ展開しそうな物語が幕を開いたのであった。
続く…………かも?
今回のお題は
「男の娘」「少女」「もふもふ」
でした!
登場人物紹介
龍馬 (リョウマ) 語り部
真悠那 (マユナ) 龍馬の弟 美少女実況ゲーマー
大輔 (ダイスケ) 龍馬の友達 マユナの大ファン
達也 (タツヤ) 龍馬の友達 マユナのファン
なんかこの話、書いてて楽しかったからもしかしたら別のお題で続きが出るかも?
お題はまだまだ募集中です!