お題 真悠那 林檎 ゲーム
先週投稿できませんでしたすみません。
通信状況が悪くてこんな時間になっちゃいました。申し訳ないです。金曜日じゃない……
真悠那を学校に行かせたい。
突然こう言うのには勿論理由がある。
今年で真悠那も中学2年生。
今後社会に出た時に中卒はダメだと俺は思ったのだ。
一応、兄として俺も勉強を教えているため学校で個別のテストを受けさせてここまで進級してきたが高校に入るにあたって進級には単位が必要だ。
真悠那を引きこもりのままにはさせないからな。学校に対するトラウマを克服してもらいたい。
「真悠那、学校に行かないか」「嫌だ」
改行すら挟まない即答だ。
「一日だけでも行ってみないか?」
「どうしてそこまで学校に行かせたいの?私が学校嫌いなの知ってるくせに」
「それは…………」
真悠那が学校に行きたがらない理由はちゃんと理解している。
それにも終止符をうち真悠那にこれからへの選択肢を示さなければならない。
このまま女子として世間に出るのか、男子として世間に馴染む努力をするのか。
どちらにせよ将来的に両性で社会に出ることは不可能に近いと思っている。
真悠那は運動しておらず、偏食であるためか未だに男子というよりも女子の体型である。
何故か第二次性徴期に入らない。
不可能に近いと言いつつももしかしたらこのままマユナという女の子として生活を続けるのではともに思っている。
「真悠那、1日だけでいい。1日行ってダメだったらもう行かなくていいから」
学校に行ってそれでもダメだったら、ダメだと真悠那が判断したならそれはもう俺がどうこうすることではない。真悠那の意思だ。
「……わかったよ、お兄ちゃん。行ってみるよ」
「そうか、強要して悪かった」
やはり無理な提案だったか…………って
え?
「1日だけだよ。1日だけ学校に行ってみる」
「本当か真悠那⁉︎」
「ただしジャージで行く。あと保健室登校」
「わかった。お前の担任に伝えとくよ」
どんな風の吹き回しかは知らないが真悠那が学校に行く決心をしてくれた。
どういう条件があれ、そう決心してくれたことは成長に違いない。
「じゃあ来週の月曜に登校になるだろうからよろしくな」
◇◇◇◇
「おはようございます。達也先輩」
「おはよう。林檎ちゃん」
毎朝、達也先輩と学校に登校できる。
かなり視線を集めてるけど全部無視!
幸せぇ……。
「昨日はナイスシュートでした!スリーポイントシュートですよね!あんなところから決めることが出来るなんて」
「林檎ちゃんこそ、昨日は的確な指示出してたじゃん。司令塔ってサッカーでは大事なポジションでしょ?流石は「禁断の果実」と呼ばれるだけあって敵に回したくない知恵の持ち主だよね」
「うぅ……その名前で呼ばないでくださいよ。恥ずかしいです……」
昨日はお互い、バスケとサッカーの試合があったのだ。ちょうど午前と午後に分かれていたのでお互いの試合を観に行ったのだ。
私が午後で達也先輩が午前。
「林檎ちゃんさ、午後の試合で暑かったでしょ。俺らは体育館だったからそんな暑くなかったけど」
「まあこの時期は、外での部活ですから暑さに負けない体力が必要なんですけど大丈夫ですよ」
そう返すと達也先輩に頭を両側から掴まれる。
「林檎ちゃん、熱中症をなめたらいけないよ。熱中症は最悪の場合死に至るんだ。しっかり水分補給とんないと駄目だよ?」
「はい、しっかり水分は取りますし適度に休憩も入れますから大丈夫ですよ」
「心配しすぎかな?」
「かなり」
あれ?やり取りをしていて気付いた。
達也先輩はまだ私の頭から手を離していない。
近い近い近い近い近い近い近い近い近い!
達也先輩のカッコいいイケメンフェイスが目の前まで迫っていた。
普段の身長差では有り得ない景色。
何この急な憧れシチュエーション⁉︎
すると達也先輩は何を思ったか手を一度、頭から離し少し下の私のほっぺをムニムニし始めた。
あうあう。
されるがままなのである。
…………。
「うにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉」
気がつけば私は声を上げ真っ赤に染まった顔を抑え走っていた。
サッカー部で鍛え上げられた軽い身のこなしのおかげか、人と一切ぶつからず華麗なステップで最短最速で走る。
私こと国立林檎はこういうラブラブシチュエーションにめっぽう弱いのであった。
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいッ…………。
あ!先輩から逃げちゃった!もうやだ嫌われてないかな……。
羞恥と罪悪感で押しつぶされそうだった。
「あ、林檎おはよう」
隣をクラスメイトにしてチームメイトの夏目蜜柑が声をかけ並走してきても視界にも耳にも入ってこない。
授業が全然入ってこない。
一時間目の古典の授業を終え冷静になった私の感想だった。
「林檎ーうぅ……古典わかんなぁい。教えてー」
蜜柑が後ろから寄りかかってきた。
それに連動して机に突っ伏する。
「林檎?」
「……蜜柑私も授業聞けなかった」
「うえっ⁉珍しいこともあるもんだ」
仕方ないので隣の席の鹿野杏子にノートを見せてもらおう。
私と違ってしっかりノートを取っているはずだ。
「杏子ノート見せて」
「あら、クラス一の真面目さんの林檎さんが。珍しいこともあるのねぇ」
おっとりとした性格の彼女は中学生のはずなのに無駄なグラマラスな体型をしている。
羨ましいと思ったり思わなかったり。
「ノートは見せてあげますけど……林檎さん一度保健室に行ったほうがいいと思いますわ」
「うーん、行ったほうがいい?」
「倒れてから行くよりは幾分かマシですわ」
じゃあ一応保健室行くか。
◇◇◇◇
1時間目、難なくクリア。
保健室、結構快適。
本来の1時間目は古典だったけど保健室の担当の倉城来夢先生との対話で終わった。
学校へ行くと決めてからお兄ちゃんの行動は速かった。
学校に電話をし、私のジャージ登校と保健室登校の許可をとった。
更に何故かモニタリング用のカメラとパソコンまで持ち込みを許可してもらった。
理由を聞いたところ、
「ほら、保健室にずっといるつもりだろ?だから授業を受けるにはいいかと」
とのことだった。
「真悠那、起きろ。今日は学校だぞ」
時刻は午前6時。
カメラの設置と誰にも出会うことなく学校に行くために早めに起きた。
学校が近所なのは今回に限って嬉しい。
これでもゲーム界では有名な方で顔バレは多分してる。
前にお兄ちゃんが動画に映って少し危険だったから注意している。
ストーカーは来てほしくないし、もし来たらストーカーの命が危ない。
うちには私に優しくて強いセコムがいるから。
お兄ちゃんの有能さは私が本当に女の子だったら惚れてた。
お兄ちゃんに彼女はいないみたいだし。
「八代さん、1時間目終わったけどどう?胸が苦しかったり頭が痛くなったりしない?」
「いえ、大丈夫です。ありがとうございます、やっぱり保健室登校なんて無茶を……」
「いいのよ。過去にもこういうことあったし、何より八代くん……龍馬くん真剣だったからね」
1時間目は来夢先生にカウンセリングみたいなことをしてもらった。
悩みはまだ打ち解けてないけど、大体のことを話した。
「事情はよく知らないけど、まあとにかくいっぱい悩みなさい。時間はあるから」
小学2年生の頃から引きこもって小学4年生の頃にゲームと出会い、小学6年生でゲーム実況少女マユナとして活動を始めた。
ゲームを持った頃からもう悩むことを考えないようにしてきた。
考える時間はこれからもある。
『倉城先生至急職員室の方へいらしてください』
放送で来夢先生が呼ばれた。
「あら、呼ばれちゃったわ。八代さん誰か来たらよろしくね」
「えっ?」
来夢先生はそのまま行ってしまった。
「人前に出れない私にどうしろと……」
どうにか思考を巡らせていると、こちらへ歩いてくる足音が聞こえた。
保健室は校舎1階の端にあるため、わかりやすい。
「倉城先生戻ってくるの早かったですね」
そう言いながらドアの方を振り返る。
ドアを開けて入ってきたのは一般女性の平均身長より少し高めな来夢先生のシルエットではなく、一般の女子中学生の平均身長よりやや低い生徒のようだった。
見つかる前にベットに戻ってカーテンを閉めないと……。
「ふみゃッ!」
足を滑らせ転倒。大きな音もなったし、情けない声も出てしまった。
「わわっ、大丈夫?」
ヤバっ気付かれた!どうしようまだお兄ちゃんと来夢先生としか会話してない会話方法わかんない!
私は這って移動し、見つからないようにすることを願うだけだった。
◇◇◇◇
「はぁ……」
なんだろう、朝のアレ以来ボーっとしたりフラーっとなったりする。
蜜柑に保健室に行くことを先生に伝えてと指示してあるから次の授業は少し遅れても大丈夫。
「失礼します」
礼儀としてノックをし、保健室に入る。
「倉城先生いますか?」
いつも保健室にいる来夢先生が見当たらない。
「もしかしていない?」
そう思いとりあえず保健室の奥の方へ進む。
「ふみゃッ!」
ガチャンと大きな音がなり小さく悲鳴が上がった。
大きな音は治療器具がいくつか乗っていたワゴンでこちらにもぶちまけられている。
「大丈夫?」
散らばった物を踏まないように歩き、音の出所へ向かう。
そこには黒髪の女の子がいた。
いたというか這っていた。
「大丈夫?」
「…………」
話しかけても答えてくれない。
むしろ睨まれてる。
着ているのはこの学校のジャージでカラーリングは私と同じ2年生のもの。
顔立ちは中性的な顔つきで長くて艶やかな黒髪がなければ男の子と見間違えていたかもしれない。
身長は私よりも高い。…………むう。
「えっと私の名前は国立林檎。違うクラスなのかな?はじめまして」
「…………」
なかなか警戒を解いてくれない。それどころかジリジリと後退してカーテンのしまっているベッドへ近づいている。
「ん?」
警戒する女の子のジャージの少し開いた胸元から体育着が少し覗いていて「八代」と見える。
八代?八代龍馬先輩?
「もしかして八代龍馬先輩の妹のマユナさん?」
「⁉︎」
マユナさん(推定)は驚いたように後退る。
「あ、えっとこの前龍馬先輩と話して……」
「お兄ちゃんを知ってるのね」
龍馬先輩の名前を出すと警戒を解いたマユナさん。お兄ちゃんということは本当に兄妹なのだろう。
「マユナちゃんって呼んでいい?」
「…………そうか。やっぱり君もそう見えるんだね」
「?」
「いやこっちの話だよ」
そう言われると気になってしまうが聞かなくてもいいだろう。多分。
「で、あなたは何をしに来たの?」
「え?」
「どうして保健室に来たわけ?薬品の使用以外なら私が代わりをやるから」
「ん?あぁ、えっと聞いてもらえるかな?」
私は取り敢えず今日朝あったこととボーっとしてしまうことを話した。
「その達也先輩って誰?彼氏?」
「そうだよ」
「はぁーなんだ、惚気か」
「え?」
「……多分だけど林檎は達也先輩とやらが好きすぎて仕方ないんでしょ?そしてずっと考えちゃうからボーっとした風になるんだよ」
「先輩が好きすぎて…………」
カアーッと頰が赤くなるのを感じた。
マユナちゃんはニヤニヤしてる。
「私もお兄ちゃんとそういうのやりたいな………男同士だし無理だけど(ボソ)」
声が小さくて聞き取れなかった。
「お兄さん……龍馬先輩と……兄妹愛?」
家庭内恋愛?
家庭には色々な事情がある。
「林檎の悩みは聞いたわ。次は私の相談に乗って」
「え、これってそういうやつだったんですか」
「いいじゃない別に」
む……。確かに平等にした方がいいか。
「私の知り合いのことなんだけど…………男の子なのに名前が女の子のものでいじめられちゃって、ネットで女の子として活躍している子なんだけど」
「うん」
結構深くない?私の煩悩よりも深刻な問題じゃない?
「で、その子が今男の子として生きるか女の子として生きるか悩んでてどうにかしてあげたいんだけど……」
「その子は本当は男の子なんだよね?」
これは私が言えることは1つしかないんじゃないかな。
「私の勝手な意見だからそんなに参考にして欲しくないんだけどね、その子に言って欲しいことがあるの」
「なに?」
「好きに生きるんだよ。貴方のその判断は消して愚かじゃなくて正しい判断だとわかる日が来るから」
「…………」
「まあ、映画の受け売りなんだけどね」
「…………」
あれ?マユナちゃんが黙ったまま固まっている。
なんか間違っちゃった?
「好きに生きる……ね。私にはなかった発想だよ。ちゃんと伝えるよ」
マユナちゃんはにっこり笑った。
とても魅力的な笑みだった。
「林檎。また明日ここで会おう。君のことが気に入ったよ。もっと話がしたい」
「え?教室でよくない?」
「体が弱いの、仕方ないでしょ」
「まあ、わかった」
「明日が楽しみよ。さて、林檎。もうすぐ2時間目半分終わるよ。行かなくていいの?」
「うぇっ⁉︎本当だ、また後で!」
思ったより話し込んでたみたい。
急いで戻らなきゃ。
2時間目が終わり、急いで保健室に向かったがマユナちゃんの姿は見えなかった。
来夢先生に聞くとそんな人はいなかったと言われた。
私が見たのは誰だったのだろう。
◇◇◇◇
友達ができた、と思う。
国立林檎。
モンブレやってるかな?
フレンド申請したい。
あの後すぐに帰宅した。
明日会おうとか言っておいてまだ2時間目でまだ会えるじゃん!ってなってあんなカッコよく去り際を締めたのにまた会っちゃうと気まずいから逃げるように帰った。
恥ずかしいじゃん。
お兄ちゃんが帰って来てからすぐ言った。
「お兄ちゃん、私今週は学校行く」
「……そうか、すぐ手続きしてくる。保健室か?」
「保健室」
「了解。学校でなんかあったのか?」
「それは秘密」
モンブレは動画の編集に時間をとるから休むことにする。
『少女ゲーマーマユナ、1週間動画投稿停止』
その日、モンブレに激震が走った。
今回のお題は
「真悠那」「林檎」「ゲーム」
でした!
相手から見たとき
真悠那が男子、マユナが女子の表記です。
新登場人物
鹿野 杏子 林檎のクラスメイト
倉城 来夢 中学保険室担当教師。
次回の三題噺もお楽しみに!
よろしくお願いします!
来週の投稿こそはちゃん時間通りします。