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ショートケーキ

 ……クラスで大幅な席替えが行われることになった。


 先生達からのお願いで、フランソワーズの通訳や面倒を見れる生徒たちをひとまとめにするみたい。

 結果……


 一番後ろの窓側の席が私。

 その隣がフランソワーズ。

 私の前が山田。

 山田の横は小牧ちゃんになった。


 フランス語は山田の方が流暢だけど、やっぱり女の子同士の方が良いって事らしい。


 小牧ちゃんは先生にお願いしてフランソワーズの近くに来ようとしていたわ。

 昨日からフランス語を勉強始めたみたい。


 日本語できないフランソワーズとフランス語を学ぼうとしている小牧ちゃん、お互い良い関係になりそう。


 山田の隣になって小牧ちゃんは嬉しそうである。


 私もリア充グループと離れて少し清々している。


 そうよね……偽ってると疲れるのよね……

 これを機に私もちゃんと友達を作ろ。

 一緒にいて自然で、楽な感じの関係……


 山田の大きな背中がある。

 何故か山田を意識してしまった……


 ……そういえば家族以外で山田だけよね? 私の素を見たことがある人って?


 私は山田の背中を見ながら今までのアルバイトの事を思い出していた……


 あれ? 食いしん坊とか腹ペコとか仕事しろって言われてばっかりいる!?


 あ、お腹空いてきた……

 そろそろお昼ね。


 ……よし! 今日から少しずつ変化していこう!


 すぐにチャイムがなった。





 私はリア充グループの元に走った。


「ごめんなさい……フランソワーズさんとこれからの事を話しながら昼食を頂く事にしましたの。……しばらくは一緒にお食事出来ません……」


 女の子達は「えー、うっそ! 超寂しい!」とか言いながら少し嬉しそうだった。

 まるで邪魔者がいなくなって清々しているみたいだ。

 これから男女のグループ交際とかに発展するんじゃない?


 男子達は残念そうにしてたけど、すぐに他の女子のフォローをし始めた。


「寂しいけど、花子がいるから……」

「え!? マジ? う、嬉しいよ……」


 おいおい、ダシにされてるよ……


 イケメン拓海は般若の顔になっていた。


「かなえぇ……かなえぇ……」


 私は笑顔で無視をした!





 というわけでルーシーもチャイムと同時にうちのクラスに飛んできて私、フランソワーズ、山田、小牧ちゃん、ルーシーの5人でご飯を食べることにしたの!



 私は朝作ったお弁当を取り出した。


「わわ! かなえさんのお弁当可愛いですね!」


「ふふふ、今日は自信作よ! あ、小牧ちゃん、敬語要らないよ!」


「ふえ!? か、可能な限り頑張ります! …な、なんか口調がいつもと違いますね?」


「そう? いつもこんな感じよ?」


 だってもう疲れるの嫌だもん。

 みんなの前で猫かぶりたくないし……


 フランソワーズは焼きそばを食べながらルーシーと喋っている。


『わわわ、なんて言ってるの? 僕馬鹿にされてる? マキはアニメに出てきそうだね! メガネの図書委員っぽい!』


『あのリア充は、フランソワーズの雌豚が! と言ってます! マキはルーシー素敵って言ってます!』


「ちょっと! 嘘つかないでね! このちんちくちん!」


「……眠い」


「あわわわ!?」


 山田は食べながら半分寝ていた……



 なんだろ……騒がしいけど、意外と落ち着くわ……

 私たちはそのまま騒ぎながらご飯を楽しんで食べた。







 今日はアルバイトの日。

 山田から少し遅れてアルバイトに向かった。

 ……あれかな……今度一緒に行ってもいいのかな?


 一度聞いてみよ!





 山田はデコレーションケーキを作っていた。


 今日はオーナーがデザートのサービスをしている。


 私は皿洗いをしていた。

 山田に話しかけてみた。


「それバースデーケーキ? 今日予約あったっけ?」


「さっき、飛び入りで頼まれたケーキだ。……子供がどうしてもここのお店じゃなきゃ嫌だ、と言ってな……あと30分後にまた来ることになった」


 オーブンのタイマーが鳴り響いた。

 山田はオーブンを開けてスポンジケーキの状態をチェックした。


「……よし。あとは冷やして仕上げるだけだ」


 美味しそうなスポンジケーキが焼きあがった。

 卵と小麦粉の良い匂いが厨房に漂う。


「へぇーー、スポンジケーキって焼き上がりは良い匂いするね!」


「ああ、スポンジケーキは基礎の基礎の生地だ。……単純な配合だが、正直これが一番難しい。卵の立て具合、全体の温度、粉を入れるときの混ぜ方、常に同じものを作り出すのが大変だ」


 山田は喋りながら苺をスライスした。

 生クリームを卓上ミキサーで立て始めた。


「生クリームも動物性だけではなく、植物性も加える。そうすることによって、生クリームに軽やかさときめ細かい泡になる」


 山田は急速冷凍で冷やしたスポンジを取り出した。

 丸いスポンジを3枚にスライスした。


 丸い回転台の上にスポンジをのせる。


「うちのスポンジは柔らかいけどしっかりしている物を目指している。……スポンジにシロップを塗って……生クリームを塗って……苺を並べる……」


 山田の手が魔法みたいにどんどんショートケーキを作っていった。


「サンドできた物を……こうして……」


 山田が操るパレットナイフによって、ショートケーキが綺麗にコーティングされていった。


 ケーキトレーの上にショートケーキが乗る。


 山田はショートケーキの上に綺麗な生クリームの絞りを入れた。

 ……凄い! 超綺麗! 


 苺を飾って、ハッピーバースデープレートを付けて完成した。


「これで完成だ。苺、生クリーム、スポンジのシンプルな組み合わせだが、三位一体となって完璧な味となる……日本のお菓子の王様だな」


 少しドヤ顔の山田だった。


「わぁー……これが商品なんだよね……山田凄いな……」


「ああ、これは遊びじゃない。お客様に渡す大切な商品だ」


 ……やっぱ少し大人だよね。

 私もまだまだだね! 頑張って社会を勉強しなきゃ!


 オーナーが私たちに声をかけた。


「さっきのお客様来たよ! よろしくね!」


 私は山田が作ったケーキをお客さんの所へ持っていった。


 綺麗なお母さんと小さな可愛らしい女の子が待っていた。


「ねえねえケーキできたかな?」

「はいはい、ちょっと待ってなさい。今お姉さんが持ってきてるでしょ?」


 私は女の子にケーキを見せた。


「はい! お願いされたケーキだよ!」


 女の子の目がキラキラ輝きだした。


「わぁーー! すごく綺麗! これお姉さんが作ったの?」


 私は隣にいる山田に指をさした。


「お兄ちゃん凄いね! わーいわーい!!」


 山田の周りを走る女の子。

 山田は困惑している……でも、めったに見せない笑顔を浮かべている。






「ありがとうございました!」


 私たちは表までお客さんを見送った。

 女の子は見えなくなるまで手を振ってくれていた。


 私は山田を見た。

 優しそうな顔をしている。


「……子供のころの記憶は意外と忘れない。……大切な思い出を作る手助けになれると……嬉しい」


「大丈夫よ! あんなに喜んでいたじゃん! あんたが作ったケーキよ! おいしくないわけないじゃん!」


「そうか……」


 山田はまだ前を見ている。


「俺も人を喜ばせる事が出来たのか……」


「え、今更何言ってんの!? あんたのケーキで喜んでる人は沢山いるよ! ……私もそうだし……」


「……そうか。……仕事に戻るぞ。ところで、お前は明日もバイトか?」


「うん、そうよ! ……なんで?」


 私は首を傾げた。


「……バイトに行く前に……一緒に行ってもらいたい所がある」


「うん、いいよ……って、ええぇ!!!」


 私はびっくりしたけど山田だから、まいっか! と思ってしまった。 


 そんな自分に困惑してしまった……






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